糖尿病・内分泌内科に行ってきた 糖尿病内科篇 その2 の続きである。

 

 

 

診察のあと、栄養指導を受けた。

前回、それまで担当していた若い栄養士ではなく、ベテランに見える別の栄養士が担当した。

若い栄養士はこちらの話すことを傾聴してくれて、その上で、遠慮がちにガイドラインに沿った提案をしてきた。

栄養指導では糖質制限に反対されることは分かっていたので、そのこと自体に腹を立てたりすることはなかった。栄養士も悩みながら提案していることが伝わってきたので、この人が担当なら糖質制限を解除したらどうなるか試してもいいな、という気持ちになった。

 

リブレを常用している2型糖尿病患者は少ないだろうし、まして、全食事の記録とリブレのデータを1日ごとにまとめて資料として提出するような患者はほとんどいないだろう。しかも、外食なしでほぼ自炊、白米ではなくもち麦や玄米、精製小麦粉ではなく全粒粉やオートミールを摂り、調味料には砂糖は使わず、間食や加糖ドリンクは摂らない。植物性食品を十分摂っているし、魚を意識して摂っている。サラダ油は使わず、(安物だけど)オリーブオイルとアマニ油を使っている。正直、栄養指導の内容以上のことをやっている。そんな患者のデータは貴重だろう。

この若い栄養士に、ガチ2型糖尿病患者のリアルを分かってもらいたい。栄養指導に従って糖質量を増やした食事をした結果、どのような血糖変動をするのか見てもらいたい。それを、今後の栄養指導に活かしてほしい。

そんなボランティア精神が半分と、残り半分は自分自身の好奇心から、糖質制限を解除することにしたのだった。

 

ところが、3回目の栄養指導は、全く話の通じない栄養士が担当となった。

栄養指導に従った結果HbA1cが7.4%まで上がってしまい、医師から糖質制限を認める発言を引き出すことができたにもかかわらず、栄養士から「今以上に炭水化物摂取量を減らさないように」と言われてしまった。

こちらがなにを言っても聞く耳もたず、という感じ。

堅物の担当医がラスボスだと思っていたのに、真のラスボスはベテラン栄養士だったのだ。

そして、「次回の栄養指導も自分が担当することになると思います」と言われたのだった。

 

このベテラン栄養士を説得するには、どうすればいいだろう?

わたしの食事内容にはまだ不備があり、改善の余地があると言う。

血糖コントロールが悪いのは、あくまでもわたしのせい、というわけだ。

そりゃ、わたしの食事にも改善点はいろいろある。ベテラン栄養士が指摘したように、朝食に野菜類が全くないのは、本来なら改善すべきだとは思う。ただ、「朝はパンとコーヒー」という内容に比べれば、牛乳に溶かしたプロテインとミックスナッツや自作オートミールクッキーの方が栄養価が高いだろう。

 

栄養士が考えた食事が100点満点なら、入院中の食事がそれに当たる。

病院食での血糖データがあれば参考になるはずだ。

ただ、突発性難聴で入院したときは、ステロイドが血糖値に大きな影響を与えてしまったので使えない。

そこで、2020年の甲状腺手術で入院したとき(ここ)の食事の記録と血糖値を資料としてまとめた。あのころはリブレではなかったので、SMBGによるスポット測定だったのが残念だけど、仕方がない。

 

ラスボスとの対決に身構えていたら、現れたのは若い栄養士だった。

 

あらら…

なんか、拍子抜け。

 

栄養士に確認したところ、やはり、基本的には担当制なのだとか。ただ、どうしてもスケジュールが合わないときは別の栄養士が担当することもある、とのこと。

「前の栄養士さんは『次も自分が担当する予定だ』と言ったので、そうなのかと思ってました」と言うと、若い栄養士は不思議そうな顔をしていた。

なんだ、ベテラン栄養士が勝手にそう思ってただけなのか…

 

やっぱり、担当制の方がいいよね。

栄養士が替わると指導の内容も変わるようじゃ、患者は右往左往してしまう。

まあ、ほとんどの栄養指導は食事記録や血糖データがあるわけじゃなく、患者自身も自分が何を食べたかなんて覚えちゃいないんだろう。なので、一般論として「食べすぎるな、間食するな、カロリー(アブラ)を控えろ、食物繊維を摂れ」あたりを言っておけばいいのだろう。HbA1cが上がっていたら「食べすぎたんじゃないか」と言っておけばいい。患者もひとつやふたつは思い当たる節があるから、素直な患者だとアレが悪かったのかも?それともアレかな?と反省し、「次は頑張ります!」と宣言して指導は終了、って感じだろう。

前回の栄養指導で栄養士が糖質制限を認めるような発言をし、今回の栄養士がそれを撤回する…なんてことは、かなりのレアケースなのかもしれない。

そもそも、病院勤務の栄養士が、糖質制限を公に認めること自体がレアケースなのだから。(患者が勝手におこなっている糖質制限を、担当医が黙認しているケースはあるだろうけど。今までのわたしもそうだった)

 

もう会えないのかと思っていた若い栄養士がまた担当だったので、前回言えなかったことをやっと言えた。

 

わたし「○○先生に糖質制限を勧めてくださったようで、ありがとうございました!」

 

すると、栄養士は少し不安そうな表情になり、

栄養士「大丈夫でしたか? 先生は怒ってませんでしたか?」

わたし「いや、そんな感じは全くしなかったですよ。あっさりと、『highbloodglucoseさんには糖質制限が合っているようなので、そうしましょうか』って感じでした」

栄養士「そうですか、よかった!」

 

担当医は気難しそうなので、栄養士がガイドラインに反するような提案をすると激怒しそうな雰囲気がある(あくまでもわたしのイメージ)。なので、栄養士も不安だったんじゃないだろうか。それなのに、糖質制限を勧めてくれたことに感謝だ!

 

ただ、せっかく担当医が糖質制限を認めてくれたのに、前の栄養指導で「炭水化物比40%を維持すること、朝食の主食を抜かないこと、血糖値を抑えるためには朝食に野菜など食物繊維を追加することを指導された」と若い栄養士に伝えた。

最初のうちは努力したが、食べるのが辛くて継続できず、結果的には朝食は低糖質なものになってしまったこと、1日の炭水化物比が40%に満たなかったことも伝えた。

しかし、その結果、HbA1cは7.4%から7.1%に下がったことも。

 

若い栄養士は、遮ったり否定したりすることなく話を聞いてくれた。

炭水化物比については、40%摂れとは言わなかった。ただ、現在どれくらいの摂取量かは知りたがった。

ちゃんと計算したことはないが、以前はおそらく25〜30%くらいだったのではないか、今はまだ少し摂取量が多いので30〜40%くらいだと思う、と答えた。

栄養士はそれを否定はせず、ただ、主食を全く摂らないような極端な糖質制限はしないようにしてくださいね、とだけ言った。

 

大丈夫、もち麦を1/5合食べたり、クッキーの形でオートミールを10gくらい食べたりするし、ブランパンだって穀物から作られた立派な主食だ。キウイやブルーベリーのような果物や、トマト、ごぼうや蓮根などの根菜類、かぼちゃや里芋だって少しは食べてるから、糖質摂取量はそれなりにある。

 

ラスボスと対決するために用意した甲状腺手術のときの記録を、参考として提出した。

若い栄養士は興味深そうに眺めていた。

1200kcal、米飯120gの病院食でかなりの高血糖になり、急遽ヒューマリンRを使うことになったことに驚いていた。

ベテラン栄養士が相手だったら、「栄養士さんがきちんと考えてくれた食事を摂って、この結果でした。しかも、食後血糖値が上がらないようにと、カロリーを減らされてたんですよ。

病院の朝食は食物繊維量を考慮して用意されていますよね? 食物繊維があると血糖上昇は抑制されるはずということでしたが、実際はかなり上がりましたよ?」と言うつもりだった。

でも、若い栄養士にそれを言っても仕方がないので止めておいた。

まあ、ベテラン栄養士なら「普段糖質制限をしていて急に糖質摂取量が増えると、血糖値は上がりやすくなります。この食事を続けているうちに落ち着くはずです」と言うんだろうな。若い栄養士もそう指摘するかな?と思いながら待っていたのだけど、そういう反論はなく、「病院食で血糖値がかなり上がった」という事実をそのまま受け止めてくれたようだった。

 

長くなるので次回に続く。