低血糖で救急搬送? その2 の続きである。

 

 

 

 

過去の検査データを、日付順にきちんとまとめていた大叔父。

A糖尿病クリニックでの検査をパラパラと見ると、HbA1cは7%台後半かそれ以上、空腹時血糖値は低くて95 mg/dLくらいだった。

当時、大叔父からの話で「インスリンを使ったら、エーワンシーが10から7.5にまですぐ下がったわ。インスリンいうのは、えらいもんやな」「わし、インスリン使(つこ)うたら何でも食べられる思うて食べよったら、エーワンシーが9になってしもうて、医者に怒られたわ」と聞いていた。

なので、医師は低血糖を起こさない程度に、HbA1c 7%台後半を目標にインスリンの単位数を決めているのだろうな、と思っていた。

 

その後、2022年春、大叔父は運転免許を返納したため、近くのB内科クリニックに通い出した。コロナ禍ということもあり、大叔父とはゆっくり話をする機会がなかったころのことだ。なので、わたしはA糖尿病クリニックのときのイメージのままだった。

 

B内科クリニックでの検査結果をパラパラ見ていて、2022年9月のデータにギョッとした。

 

HbA1c 6.9%

グルコース 46 mg/dL

 

なんだこれは!?

危険なほどの低血糖じゃないか!!

 

「おっちゃん、この検査結果見てみ! これ、めちゃくちゃ低血糖になっとるで! この日も自転車で行ったん? ふらついたり、何か体調が悪かったりはなかったか、覚えてない?」

「うん? 別に具合悪いときなんか、あらへんかったで? なんや、この数値はアカンのか?」

「これ、普通やったら低血糖の症状が出て、まともに動かれへんで。このとき、医者は何か言わんかった? インスリンを減らそうとか、そんな話は出んかった?」

「いや? なんも言わんかったと思うたけど」

 

ええ!? ありえへん!

1年以上前のことだし、大叔父が覚えていないだけだろうか? 医師はきちんと低血糖のことを指摘していたのだろうか?

けれども、もし医師が大叔父に、低血糖であること、この数値は危険なことを強く伝えていたならば、さすがに記憶に残っているだろう。「この数値はアカンのか?」などと、トボけたことは言わないんじゃないか?

 

普通なら、慌ててその場で「早くブドウ糖を摂れ!」と言われる数値のはずだが、この血液検査は外部委託だから、その場では結果が出ない。インスリン治療をしている患者の場合、簡易血糖測定器でもいいから診察時に血糖値を確認する(それを見て適切なインスリン単位数を決定する)必要があると思うのだが、B内科クリニックではそれをしていなかったのだろうか?

もし、その場でブドウ糖摂取を勧められていたなら、さすがに大叔父の記憶に残っているだろう。

 

では、その場での低血糖対応には間に合わなかったとして、B内科クリニックの医師は次の診察でこの検査結果を見て、インスリンの単位量を変更するなどの対応をしたのだろうか?

 

この検査結果が出たあたりのお薬手帳を見てみると、インスリンの単位数は変更されておらず、ずっと8単位で処方されているようだった。

 

ということは、この低血糖はスルーされたのか…?

(ちなみに、A糖尿病クリニックに通っていたころのお薬手帳は見ていないので、そのころのインスリン単位数がどれくらいだったのかは不明)

 

それにしても、この血糖値で自覚症状が全くなかったとは…

高齢者は低血糖の自覚症状が現れにくいと言うけれど、まさにその通りなんだな。

自覚症状が出ないまま、いきなり昏睡状態になるのも頷ける。

 

大叔父は、自分の検査結果を眺めながらこう言った。

「この数字がエーワンシーやろ? 6.9%になっとる。正常値のとこには4.6〜6.2%とあるから、わしの6.9%はまだ高いんやろ?」

 

あっ

もしかして、B内科クリニックの医師も同じことを考えていたのか?

血糖値の数字を見ることなく、HbA1cだけで判断していた?

HbA1cはまだ6.9%と高いから、低血糖をスルーした?

まさか!?

 

この酷い低血糖が出た翌月の検査では、HbA1c 7.1%、血糖値67 mg/dLだった。

まだ血糖値は低いが、重篤な低血糖症状が出るほどでもなかった。

 

検査データを見ていくと、その後はHbA1cはどんどん高くなり、空腹時血糖値もかなり高くなっていた。

お薬手帳を見てみると、トレシーバは8単位から11単位にまで増やされていた。

しかし、検査結果を見る限りでは、低血糖を起こすほどのHbA1cや空腹時血糖値には見えなかった。

 

救急搬送され、退院してきたあとは、B内科クリニックではなくC糖尿病クリニックに通うことになった。入院した総合病院に勤務していた糖尿病専門医が開業したクリニックで、そこに通うよう指示があったらしい。

せっかく自分で通える距離のB内科クリニックに移ったのに、A糖尿病クリニックよりもさらに遠いC糖尿病クリニックになってしまった。なので、今は同居している長男の嫁さんに連れていってもらうことになったようだ。大叔父にしてみたら「けったくそ悪い」のだろうが、こればかりは仕方がない。

 

C糖尿病クリニックで、トレシーバからノボラピッド30ミックス注に変更となった。朝食前に4単位という指示が出ているようだ。

また、内服薬は、たしかトラゼンタがトラディアンスになっていたと思う。

そして、最新の昨年末の血液検査では、HbA1c 7.7%、空腹時血糖値はかなり高かった(180 mg/dL台だったかな)。

 

A糖尿病クリニックでも、B内科クリニックでも、大叔父は血糖自己測定をしていなかった。なので、普段の血糖値がどうなっているのかが不明だった。

C糖尿病クリニックになって、やっと血糖自己測定のキットを貸し出された。

ただ、インスリンは自分で打っている大叔父だけれど、さすがに血糖測定の手技を新たに覚えるのは困難と考えられたのか(あるいは、何かあったときに家族が測定できた方がいいと考えられたのか)、大叔父本人ではなく長男が測定している。長男は70歳手前だが、今でもフルに働きに出ていて、勤務先が少し遠いので毎朝6時過ぎに家を出る。なので、平日は出勤前に慌ただしく測定し、数値は大叔父が管理しているようだ。

ただ、測定はしているものの、大叔父も長男も、どの程度の血糖値ならよくコントロールできていて、なおかつ低血糖ではないのかなど、知識はほとんどないようだ。記録を見ると、高い日は200オーバー、低い日でも150以上なので、これだと少なくとも就寝中の低血糖は起きないだろうと思う。


続く。