毎食前に血糖値を測定し、インスリンを打つ。

1回教えてもらえば、なんてことはない操作だ。

看護師からは、指や腹に針を刺す思い切りのよさと、

覚えが早いことを褒められた。

血糖値測定のための穿刺については、

たまに上手く血が出なくて困ったけれども。

 

食事が運ばれてくる前に看護師が一式を持ってきて、

わたしの一連の動作を見届けてから

また一式を持って去って行く。

 

あるとき、一式を持ってきてから

ちょっと待っていてと看護師が席を外したことがあった。

道具類一式のほかに、いつも看護師が持っているクリップボードがあったので、

興味本位で見てみた。

それは、チェックシートだった。

患者が手技をちゃんと理解しているか、

ちゃんと自分で行えているか、事細かなチェックがあった。

わたしは初日からほとんどの項目にチェックがついていた。

ただ、△がついた項目が唯一あった。

それは、使用している薬剤の名前を覚えているかどうか、だった。

 

なぬっ、インスリン製剤の名前を覚えておく必要があったのか!

それまでは本体の色の違いで

こっちが超速効型、こっちが持効型と区別していた。

使い終わればすぐ持ち去られてしまうし、

ゆっくり眺めたことなんかなかった。

今のうちに覚えよう。

これでもう、完璧。

 

「特に何もないようなら、明日退院だから」

 

前触れもなく急に、さりげなく看護師が告げた。

え? そうなの?

もう、やるべき検査はなくて、

血糖コントロールもこのままの方針で固まったってこと?

あまりにもさりげなく告げられたので、

そのときは「ほぇ?」と思ったまま確認することもできず、

看護師は去って行ってしまった。

 

次に別の看護師が来たときに、

あらためて本当に明日退院なのかと確認した。

「あー、そうみたいねー、おめでとうございますー」

ああ、やっぱり本当なんだ。

じゃあ、眼科の再検査を受けなきゃ。

看護師に頼んで、翌日の眼科の予約をしてもらった。

 

翌日。

 

検査部の人が、貸し出し用の血糖値測定キットを持ってきた。

薬剤部の人が、インスリンその他の薬を持ってきた。

看護師が、新しい尿バッグとレッグバックを渡してくれた。

入院前に行った開業医(泌尿器科と内科)宛ての手紙を渡された。

 

眼科に行って、再度視力検査をした。

そのとき、屋内では問題ないが、外の明るい場所だと

白く色が飛んでしまうということを伝えてみた。

しかし、「ふーん?」で流されてしまった。

もういいや。

 

残念ながら視力が元に戻ることはなく、

やはりレンズを新調することになり、処方箋を書いてもらった。

そのとき、レンズ購入後、

一定期間内だと無料で交換してもらえることを初めて知った。

わたしの場合、まだ視力が変化する可能性がある。

半年後、もう一度検査をして視力が変わっていれば、

必要であればレンズを交換してもらいなさい、とのこと。

ただし、店によって無料で交換できる期間が3ヶ月から半年と異なるから、

購入前に確認しておくように、と。

 

小学生のころから眼鏡をかけ始めてずいぶん経つが、

無料でレンズ交換できる期間があるなんて全然知らなかったー!

世の中、知らないことだらけだ。

退院後、訪れた眼鏡チェーン店で交換期間を確認し、

半年までOKと言われたのでそこで眼鏡を新調したのだった。

 

こんな感じで、急にバタバタと退院することになった。

医師から何か話があるかと思ったが病室に現れることもなく、

ゆえに色が飛んで見えるという症状を訴えることもできないまま、

病院を去った。

こうして、10日間の入院生活が終わった。

 

退院後の診察は、17日後に予定された。

 

この後はカテゴリ「2型糖尿病」の「退院後、初の診察日まで」に続く。(ここ