愛犬に朝5時ごろに散歩に連れて行けと起こされたおかげで、午前中は二度寝をして10時半ごろまで寝ていた。
それでも、なんだかぼんやりしていたので呆然として気が付いたら正午を過ぎていた。
なんとか書斎に入って、いつものように空気を入れ替えるために、シャッターを開けようと思ったら、片側のシャッターは上がったのだが、もう片側のシャッターのロックが回らずに開けることができない。
なにがなんだかよくわからないことになっている。
眩暈がした。
一時間ほどグリーススプレーをかけたりして悪戦苦闘したが、開く気配がない。
あきらめて、片方だけ明け放ってすることにした。
「寿命だな」
と、誰に言うわけでもなくひとり呟いた。
今日も春というより、初夏を感じさせる。
それで、今日かけている一枚はこれだ。
はっぴいえんどの1971年にリリースされたセカンド・アルバム『風街ろまん』だ。
片側しか開かないシャッターのことは、何となく気なりつつも今日のこののどかな雰囲気にあっている。
日本語ロックの金字塔的な一枚だ。
4トラックで録音された前作『はっぴいえんど』と違って、本作は当時の日本では最先端だった8トラックのマルチ・テープレコーダーで録音されている。そんな音楽的向上が細野晴臣、大滝詠一、松本隆、鈴木茂それぞれの個性を最大限浮き上がらせた名盤だ。
楽曲も捨て曲なしで、一曲一曲個性が違っていてよりバラエティーを展開している。
松本隆の書く詩も、より情緒的になっておりその風情を聴き手に思い描かせるような世界観になっている。
特筆すべき一曲を選ぶのは難しいがソフィア・コッポラ監督の作品『ロスト・イン・トランスレーション』の挿入歌として使われ、また色々なアーティストが未だにカバーして耳なじみのある『風をあつめて』を外すことはできないだろう。
とても爽やかなサウンドに松本の歌詞が見事に合っていて、まるで質のいいショートフィルムを見ているような感覚にさせてくれる。
同様な効果を持っていて個人的に好きなのが『夏なんです』。
わたしの好きな漫画家、つげ義春の作品にありそうな歌詞とどこか陰鬱なニュアンスを持ったサウンドが聴き手を唸らせる。
野暮ったい時代から抜けつつある当時の日本社会を斜に見るようなそんな作品である。
ここ最近、日本のシティーポップブームは、この一枚があったからだと言えよう。