[もう一度観たい映画] 「ラヴ・ストリームス」が浮かぶ | ボクシング&ロック野郎 higege91の夜明けはまだか?

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今日の「もう一度観たい映画」は…




ラヴ・ストリームス


ジョン・カサヴェテス 監督・出演

ジーナ・ローランズ 主演




1984年公開のアメリカ映画

ベルリン国際映画祭金熊賞






アメリカ・インディペンデント映画の父…と評される俳優にして映画監督のジョン・カサヴェテスは、僕にとって最高最大のヒーローである


つまり、僕が1番好きな映画監督はジョン・カサヴェテス、その人であります


断言っ‼︎


僕は二十歳くらいの時にこの「ラヴ・ストリームス」をジョン・カサヴェテス回顧映画祭で観て、完全に打ちのめされまして、映画館で10回以上鑑賞しました…



(^^;;


まさに、「人生感」を覆された、というか、「価値観」を覆された、といいますか…


カサヴェテス監督作品でもっとも有名な作品は「グロリア」であります


奥さまである名女優ジーナ・ローランズ主演のハードボイルドテイストのサスペンスで、日本の時代劇「子連れ狼」から着想得たと読んだことある



ギャングの情婦が家族を皆殺しにされた少年とニューヨークの街を逃げ惑う話


…が、そんなメジャー映画会社制作の「グロリア」以外、どの作品も手垢まみれの、というか、書いたり消したり…を繰り返して、まさに、永遠に完成しないデッサンのような感触の作品ばかり…である


「アメリカの影」「フェイセズ」「こわれゆく女」「チャイニーズ・ブッキーを殺した男」「オープニング・ナイト」…と、どの作品も傑作と言えば傑作なんだけど、人によって好き嫌いかなりありそうな、ギトギトのドロドロの脂っこさ抜群の粒ぞろいなのであります


上記以外の作品もあるけど、まぁ、ギトギトドロドロ…だな


で、どの作品にも通ずるテーマあって、これが頑固一徹で一貫しとるんだ


ズバリ…


「愛」


これ、一択…


基本、「ラヴ」の哲学…


で、その集大成がこの「ラヴ・ストリームス」なのであるかと…


そんで、「ラヴ・ストリームス」の、wikiにあるあらすじ…


> 小説家のロバート(カサヴェテス)は女たらしであり、複数の女性ファンと共に自宅にて同居生活を送っていた。妻とは離婚しており、一人息子のアルビー(ジャコブ・ショウ)とも顔を合わせていない。そんなある日、ロバートの実姉であるサラ(ローランズ)が、夫と離婚してロバートの元へやって来る。


…これじゃ、よくわからない(^^)


まぁ、「愛」を求め過ぎるが故に、孤独と狂気に陥ってしまう姉弟の人間ドラマというもの





予告編にも登場する、ジーナ・ローランズの台詞…


『愛は流れです どこまでも続き 止まることはない』


あのね、誤解を恐れずに言えば、僕はジョン・カサヴェテス作品を観て、初めて「偏執狂」的なる映画作りにゾッとしたのだ


もちろん、キューブリックやベルイマンや黒澤も凄いけど、どの巨匠もちょいと高尚だなぁ、と感じてしまう部分ある


…が、カサヴェテスは手の届く、今、目の前にある「愛」を扱い続けている


不器用なる試行錯誤が、あられも無く晒されている


…で、言ってしまえば、どの作品も結論には届かない


「愛」とはなんぞや⁈  


と、ぶち上げるも、登場人物は右往左往し、キャメラも演出も定まりきらないまま、スクリーンの中はいつでも「混沌」としているのだ


作り手も、演者も、どこへ向かっているのかわからないまま、映画は突き進む…のだ


「愛」とは何ぞや⁈


ゴールも着地点もわからないままに、怒涛の猛進をする映画、が、僕のジョン・カサヴェテス像でもある


永遠に完成しない映画…が、カサヴェテス作品の真髄かと


ドキュメンタリータッチであることや、即興演技を大胆に取り入れる演出方法の分析も散見できますが、手法はともかく、「もがく」ことと、「その過程」がいわば映画の核心であり、そこに結論はなくて、我々は消化不良的なる「悶々」を押しつけられるだけ…なのである


人目を憚ることをせず、その悶えと疑問を恥ずかしげもなく、赤裸々に、晒すだけ晒して、「こんなことになってしまった」という映画、が、ジョン・カサヴェテスの映画なのだと…


だから、見終わった後は、苦しくて仕方ない


全然、爽やかじゃない、満足感もない


じゃあ、なんで「人生感」や「価値観」が変わるほど好きなのか…⁇ と言えば、それは…


痛いほどわかる…という激しい気持ちになれたから


これほどまでに、「分かち合えた」と涙が出るほど感じられた映画監督は後にも先にもジョン・カサヴェテスしかいないかと…





ただ、誰しもが僕のように感じられる、とは思いませんので、お勧めしづらい…かなぁ


ハッキリ言って、カサヴェテス作品はアクが強いし、全然解りやすくないし、ぶっちゃけ、丁寧ではありません


悪意はなくとも、非常に無愛想な映画群…であると言わざるを得ないかと


が、これほどまでに、真剣に、真正面から、どの作品もどの作品も同じ熱量で、「愛」について哲学探究した映画作家は他にはいない、かと…


難解とも不親切とも言われる


が、個人の頭の中の独自の哲学など、他人から見たらそんなものかと…


「正直なところ、僕にもよくわからないけど、こんなふうに考えてみたんだ」


…と、語りかけられる、そんな映画がカサヴェテス作品だと思う


つまり、大衆に迎合せず、作りたい映画作りを貫く…


そこがインディペンデント映画の父、と呼ばれる所以なのかなぁ


俳優としても多数出演、戦争映画「特攻大作戦」でアカデミー助演男優賞ノミネート、恐怖映画の傑作「ローズマリーの赤ちゃん」のミア・ファローの旦那役はカサヴェテスだし、ハリウッド大作「パニック・イン・スタジアム」、「刑事コロンボ」の犯人役で2度出演してたっけ…


で、その出演料を注ぎ込んだんだろうなぁ〜


自宅を抵当に入れながら映画作りをした…というジョン・カサヴェテスはまさに、「孤高の映画表現者」にして「映画狂」の頂に佇む伝説の男…だと思う



あ、「ラヴ・ストリームス」の一場面見つけた…


これ、映画の内容とはあまり深く関係しない場面だけど、カサヴェテスのやさしさや、そのやわらかな視線を感じられるかなぁ



夫婦で取り組んだ「狂気 」の映画作り…はまさに、戦争と評しても物足りないほどの、壮絶なる戦いだったんじゃないかなぁ…と、今でも夜な夜な考えてしまう


きてます


かなり、きてます


僕の中で、ジョン・カサヴェテスとは「命懸けの映画作家」なのであります


で、下に貼るのは映画「ラブ・ストリームス」のある大切な場面で流れるロック・バラードなんです



ついに見つけました


ありがとうございますっ


カサヴェテス作品の音楽を担当している方、ボ・ハーウッドとクレジットされている方がおいでになり、その方による作曲、歌、演奏だと思われる曲で、映画の中では一部しか聴けないんだけど、YouTube内でついに見つけました


初めて頭から聴けた


30年も、ずーっと聴いてみたかった幻の一曲…


なんか、70年代のデヴィッド・ボウイっぽいスペイシーな感じの曲だったなぁ〜と、ずーっと心に残っていた


ん〜


サントラなんて見たことなかったし、死ぬまで聴けないのかなぁ〜と思っていたら、ついに、ついに…


感涙…


あ、その前に貼った「ラヴ・ストリームス」の一場面、ダンスシーンで流れてるスローなジャズバラードもまた、ボ・ハーウッドさんの作曲みたい


確か、「チャイニーズ・ブッキーを殺した男」でも流れたような気がするんだよなぁ〜


記憶が曖昧なんだけど…


さて、ご子息であるニック、カサヴェテス監督もまた、その偏執的なる「愛」についての映画たくさん撮られてます


「シーズ・ソー・ラブリー」とか「君に読む物語」なんて、まさに、父であるジョン・カサヴェテスの血統を継ぐ傑作かと…


僕にとっての「究極」の映画が、この「ラヴ・ストリームス」であります


う〜ん


もし、ジョン・カサヴェテス作品に興味をもっていただけるならば、まず…




「こわれゆく女」 1974年公開 


ピーター・フォーク、ジーナ・ローランズ主演

ジョン・カサヴェテス監督




「こわれゆく女」を観ていただき、ジョン・カサヴェテスがいかに異常なまでに「愛」に固執しているのかを体感していただき、その後に、この結論の出ない「愛」の探究、その終着点たる「ラヴ・ストリームス」をご覧いただくのが理想かと…


また、これぞ女優魂っ‼︎ という迫真の演技を堪能できます


さらに、盟友ピーター・フォークの味のある存在感もまたぐっときます


あ〜


もう何年観てないかなぁ〜


確かめなくちゃ


ジョン・カサヴェテスが探し続けた「愛」について、もう一度確かなくちゃいかんよのう


御愛読感謝