2011 8 10 後楽園ホール
WBC世界ミニマム級タイトルマッチ
チャンピオン 井岡一翔 7W5KO無敗
×
同級1位 ファン・エルナンデス 18W13KO1L
日本選手最速となる、プロ7戦目での世界王座獲得と言う記録を打ち立てた前戦、タイのテクニシャン、オーレイドンをワンパンチで沈めたのはカウンターとなった左ボディーブローであった…
元々、極端なる減量苦を取り沙汰されていたオーレイドンでありましたが、しかし、当時無敗の世界チャンピオンをボディー一発で悶絶KOさせたわけで、そのタイミングとセンスは日本ボクシング史上においても、非常に輝かしい場面の誕生となったわけであります…
しかし、奪取よりも難しいとされる「初防衛」でありますが、井岡陣営はかねてより公言している通り、「本物路線」を志向、敢えて、茨の道を進む…、つまり、安易なる防衛ロードを望まず、ランキング1位の指名挑戦者との一戦に臨むわけであります…
この際、某兄弟の路線と比較するのは井岡陣営の「心意気」に失礼と言うものでありましょう…
では、チャンピオンと挑戦者の、双方の意気込みの声を並べてみる…
---すべてのラウンドで積極的にKOを狙いたい (チャンピオン)
---3回までにKOで勝ちたい。打ち合いの試合ができれば (挑戦者)
…それぞれ、「KO宣言」の強気の姿勢をむき出しという印象でありますねぇ
さて、気になるのはチャンピオンの背負っているであろう、精神的なる重圧とプレッシャーでありますが、これが負の作用を生じさせなければチャンピオン優位、と僕は見ておりますが、こればかりはゴングが鳴らなければわかりませんであります…
しかし、一方のボクシングバブルに沸くメキシコからの刺客、世界ランク1位の指名挑戦者は世界初挑戦であり、それも敵地挑戦となるわけで、ここに言葉に出来ない精神的負荷作用が全く生じない…ということはあるまい、が、しかし、エルナンデスは挑戦者決定戦を制し、さらに北米ボクシング連盟ミニマム級タイトルなるベルトを通産6度防衛を果たしているので、そのキャリアはあなどれないであろうし、逆に最短最速路線を貫いた井岡陣営の抱える負の要素である、「プロキャリアの差」が如実に目に見えるようなことになればチャンピオン危うしの場面も顔を現すかもしれない…
ボクシングマニアによる戦前予想はチャンピオン優位な印象を受けるも、しかし、なんとなくその「根拠」は薄く、曖昧な印象も受ける…
チャンピオン井岡選手の、獰猛なる積極性と鋭利なるセンスが炸裂すれば中盤までにKOも充分ありえるが、しかし、ワンパンチで戦局が真逆に反転するがプロボクシングであり、世界タイトルマッチの摩訶不思議、その底知れない奥深さがそこに横たわっているわけであります…
まさに、今年7月初めにアメリカはアトランティックシティで起きたのは、それまでポイントで完全優位に試合を進めていたWBA世界スーパーバンタム級チャンピオンの下田昭文選手が、7Rにまさかの急失速、いきなりのワンパンチKO轟沈陥落…なんて胸の痛い記憶が蘇ってきますが、あれも初防衛戦でありました…
初防衛戦とは、やはり、尋常ならざる「何か」が潜んでいると想像せずにはいられない…
ゴングが鳴る前から応援者である僕がビビッていてはいかんわけですが、しかし、ある種の「不穏の香」、危険なる「悪い予感」に身震いなんぞの告白をするのは不謹慎であると思うわけでありますが、さて、しかし、このヒリヒリとした「恐怖感」と、痛快なるチャンピオンのKO防衛への甘い「期待感」の共存こそが、まさに、世界タイトルマッチの「混沌たる興奮の源」でありますので、そこを否定される方もおりますまい…
そして、そんな困惑とときめきを胸に抱えた状態であることを前提で、僕の戦前の「ズバリ予想」でありますが…
---チャンピオン井岡選手の中盤TKO勝ち!!!
と、させていただきます…
ってことで、以下はタイトルマッチの生中継を観ながら、生採点させていただきます…
==========================================
1R 両者右構え 身長リーチで上回るのはチャンピオン井岡 井岡、左ジャブがよく出るも、エルナンデスは体重を乗せて打ち込んでくる エルナンデス、ふいに繰り出す左右アッパーが怖い… クリーンヒットを喰って先にぐらついたのはチャンピオン井岡… エルナンデス、非常に思い切りがよい… チャンピオン、立ち上がりでパンチを喰い、固くならなければいいが… エルナンデス10-9
2R 距離が詰まったところで井岡の右フックはカウンターでヒットも、エルナンデス、非常に勇敢で思い切りがいい… エルナンデス、足を使って波状攻撃に出る… 井岡の右ストレートにロープを背負ってのけぞったのはエルナンデス… 井岡、ゴングを聞いてガッツポーズ 井岡10-9
3R フットワークを駆使するエルナンデスにじわじわとにじり寄るチャンピオン井岡… エルナンデス、テンポよくリズムを刻み、井岡の右にカウンターをあわせる クリーンヒット数でエルナンデス 10-9
4R 開始早々、井岡の右ストレートがドンピシャで当たる!!!
が、エルナンデス、冷静… 滑らかなるメキシカン特有のリズム感にやや苦しんでいる印象か? エルナンデスのコンビネーションも的確な印象… ヒット数でエルナンデスか? エルナンデス10-9
オープンスコア 38-38 39-37×2 それぞれ井岡を支持 おっ、これは狭いホールの歓声が作用しているか?
5R 井岡、その高いガードでエルナンデスのコンビネーションをブロック、しかし、クリーンヒット数で劣るか? とは言うものの、右クロスと右ボディーストレートは見栄え良し… 際どくも井岡か? 井岡10-9
6R 井岡、カウンター狙いも、エルナンデスの左が的確 井岡、ジワジワ追うも有効打皆無か…? エルナンデス10-9
7R にじり寄る井岡の左が有効 エルナンデス、鼻血が目立ってきた 井岡、足を使うエルナンデスをロープにつめるとボディーブローを絡めた左右コンビネーションが有効 井岡10-9
8R ゴング後、すぐに立ち上がらなかったエルナンデスに対して観客はブーイング 井岡がリズムに乗ってきたっ 井岡の荒々しい攻めにエルナンデス明らかに嫌々な表情… エルナンデス、苦しそうだ… 客席のユリオルキス・ガンボアが大声を出している!! 井岡10-9
オープンスコア 78-74×2 79-74 3者ともにチャンピオン井岡を支持
9R ゴング後直ぐに開始に応じられないエルナンデス 井岡の左ボディーにエルナンデスの腰が曲がったっ!! エルナンデス、滑らかなるコンビネーションで井岡を打ち抜くも、井岡、そのパンチに微動だにせず、一発一発に力を込めた強打を捻じ込むっ 井岡10-9
10R 井岡の右ボディーストレート!!! しかし、エルナンデスも諦めない… その左右アッパーカットは今なお脅威的なる鋭さを秘めている印象… 井岡、自ら下がってエルナンデスの攻撃を誘い出そうと手を止めた… ん? しかし、これはエルナンデスの積極性が目立つ格好に… ポイントは流れるか? エルナンデス10-9
11R 井岡、待ちの姿勢からのボディ打ちをきっかけにエルナンデスを追いまわす…!!! 効いた、効いてる!! エルナンデス、自陣の青コーナーでスリップダウン 井岡、さらに追いまわしてワンツーにボディーと獰猛に襲い掛かるっ!!! 井岡、倒せっ!!! 井岡10-9
12R ラストラウンド!!! ポイントは完全優位 こうなったら井岡には倒して欲しいが、逆に倒すしか残された道はない挑戦者エルナンデスは距離を残してい発狙いか? 井岡、そうか、下がるならば前へ出てやろうじゃないか…とでも言うように、高く掲げたガードの間からエルナンデスを覗き見しながら右強打、さらに左右ボディー打ち!!! エルナンデス、逃げる、逃げる… っと、ここで、ゴングっ!!!! 勝利を確信した井岡陣営抱き合って歓喜っ!!! 井岡10-9
HIGEGE91の採点 115ー113 で、井岡選手の判定勝ちっ!!!
公式の採点 116-112 117-111 118-111…
勝者、WBC世界ミニマム級チャンピオン、井岡一翔、初防衛成功!!
いやぁ、テクニックのある指名挑戦者相手に攻めきった初防衛戦でありますが、井岡選手、なんという強い心臓でありましょうか?
正直、1R、その立ち上がりに滑らかなるエルナンデスの動きを見てちょっとひやひやいたしましたが、決して焦ることなく、また、その高いガードを掲げ続け、不用意なる被弾を避け、そして、ボディー打ちを起点に鋭く打ち抜かれたコンビネーションの鋭さと強烈なる破壊力は最後まで全く目減りすることもありませんでした…
まさに、完勝っ…
いやぁ、これぞ、真剣勝負、これぞ居合的なるパンチ交換、世界戦に相応しいハイレベルな内容でありました…
もう一戦防衛戦行なったらミニマム級タイトルを返上して2階級目のライトフライを狙う…といわれておりますが、まぁ、先のことは一旦置いておいて、「お見事っ!!!」の一言を贈りたいですねぇ…
僕の悪い予感を見事なまでに痛快に払拭していただき、本当にありがとうございます!!!
そして、実に清涼感ある清々しさを届けていただき、さらに、ありがとうございます!!!
実に気持ちのよいタイトルマッチでありました!!!
御愛読感謝
つづく