テクニシャン対決、「中広×本田」を想う… | ボクシング&ロック野郎 higege91の夜明けはまだか?

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人生の曲がり角に遭遇したボクシング&ロック・マニアhigege91。暇を見つけてはホール通い。ああ、俺は戦っているか!? ああ、俺は俺の求める『俺』に近づいているのか!?

小松さん追悼…本田が“魂”の勝利 デイリースポーツ


三十路ボクサー好きの僕のにとって、この本田秀伸の不屈と継続はなんとも胸に響くものがある…


昨日大阪の地で行われたという、故小松則之さん追悼興行で勝利を捧げた本田選手は1975年生まれの33歳にして、元日本ライトフライ級チャンピオンで、フライ級であのポンサクレックに挑み、さらに、スーパーフライ級でムニョスに挑戦したこともあるテクニシャン…


37戦31勝14KO6敗…


世界王座獲得こそならなかったが、しかし、その世界レベルの防御技術を発揮、当時連続24KO記録を作っていたムニョスのそれを途絶えさせたことも印象深い…


さて、昨日の対戦相手はタイのベテランボクサーにして、こちらも34歳であったノラシン・ギャットプラサンチャイ…


年齢こそ随分重なっているような気がするが、しかし、現役バリバリの東洋太平洋スーパーフライ級7位の選手で、日本のボクシングファンには前の冨山浩之助選手との連戦は特にまだその面影が新しい…


試合詳細…は残念ながらわからないのですが、新聞記事には以下のような表現があるのが興味深い…


>「小松が作ってきた、魂で戦うボクシングを意識した」と、圧倒的な手数でノラシンを攻め込んだ。


…ここで、マニア衆はある「違和感」を感じるはずではないかと思うのだ。


本田選手はその卓越した距離感と、緻密な有効打でポイントを奪ってゆくタイプであり、度々語られるのは、「手数」と「パンチ力」さえもっとあればなぁ…という印象の残る選手である。


しかし、「圧倒的な手数」というこの新聞記事の表現に、僕は少し、ぞくっときたのだ…


まだまだ「進化」の途中であると豪語する強気な三十路ボクサーにして、今なお、その圧倒的技術には多くの方が評価する彼の次戦はついに辿り着いたタイトルマッチだという…


8月29日、敵地の広島へ出向いて挑むは日本スーパーフライ級チャンピオンの中広大悟選手だ…


これに勝てば、33歳にして再び「世界」の二文字が見えてくる…


が、しかし、この広島のチャンピオンもまた、日本軽量級屈指の超テクニシャンにして、打ち合いを辞さない強気な選手であります…


このタイトルマッチ、本当にいい組み合わせだ…


中広選手といえば、地方発の選手として潔く敵地の中央へ乗り込んで実績を重ねながら、あのWBC世界フライ級チャンピオンの内藤選手と互角のスプリットデシジョンを演じ、そして、あのポンサクレックの持つ世界のベルトに挑んだ過去もあり、ここに、両者の奇妙な因縁を見つけることもできる…


本当に興味深いタイトルマッチになりそうだ…


しかし、本田選手には分が悪い…


脂の乗った今もっとも旬といえるチャンピオンに挑むわけだからどう考えても不利予想が立つだろう…


その勝利への鍵は、上の記事にもあった「圧倒的手数」と「積極性」にあるだろう…


これが本田選手に備わった時、彼は破格の強さを得るはずなのだ…


が、逆に言えば、それだけ倒されるリスクも増幅するわけで、しかし、一度は引退式を行うも、それでも、恥も外聞もなく家族にも苦労を強いることを承知で帰ってきたリングで、ついに掴んだラストチャンスである…


その「気概」は恐らく過去最高の熱量に達するのではないか…?


チャンピオンは絶対に油断してはならない…


ちょっと世間的には地味なタイトルマッチかもしれないが、僕にとってはまさに「垂涎」の好カードとなりそう…


っていうことで、過去の両者の過去観戦記を掘り起こして、8月の「垂涎」に想いを馳せたい…


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2008 12 17 DANGAN 後楽園ホール


日本スーパーフライ級王座決定戦


WBC6位 中広大悟 18W8KO2L

×

日本1位 杉田純一郎 14W7KO1L


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無冠ながらその実力はボクシングマニアには浸透している中広選手と、史上初めて双子で同時に全日本新人王に輝いて杉田選手による、王座決定戦…


先ず、今夜のホールは7割から8割入りでちょーっと寂しかったのですが、平日だから仕方がない…


しかし、ヨネクラジムの杉田選手を応援しに集まった方々は熱かったですね… それに対して、はるばる広島からやってきた中広選手、応援合戦ではどうしても不利であった…


今夜の王座決定戦の採点は、もしかしたら、ちょーっとこの熱過ぎるほどの杉田選手への声援が若干作用したようにも思いましたが…


1R 両者オーソドックス構え そして、両者、距離感を重要視する立ち上がりも、その積極性がまず輝いたのは中広… 手数も多く、積極的に攻勢をしかける… 一方の杉田はやや距離を残した迎撃作戦… 両者決定打を欠くも、ここはやや有効打で勝ったのは中広か… その鋭い右フックが杉田の顎先をかすめたか… しかし、杉田のジャブが軽く当たっただけでも物凄い声援が起こるので、これは中広にはプレッシャーになっているかもなぁ…

中広 10-9



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2R その距離感を探りあいながらのハイレベルな攻防は見応えありますねぇ… 中広の鋭い左のダブルから続けて繰り出される右ストレート、これは早いですね… 一方の杉田は重い右ボディーブローで場内を沸かせるも、これ、単発なんですよね… 手数とアグレッシブで中広… 中広10-9


3R 手数は中広… が、両者決定打を欠いたか… ここは互角の10-10


4R 中広の積極性を今夜は激しく感じましたねぇ… インターバルも椅子に座っていられないくらいですぐに立ち上がっちゃうし、立ち上がったと思ったらグローブをバンバン自分で叩いて鼓舞してましたね… 中広は右ボディーストレートを打ち込み、さらに鋭い左を縦に横に鋭く振るう… そのコンビネーションの華やかさは杉田を圧倒していた… 中広10-9


5R しかし、杉田は実にキビキビと休むことなく上体を揺らし、そして、足も止まらない… 攻撃こそ単発に終わっていて得意の右ストレートはなりを潜めているが、まだまだ動きは鋭い… 一方の中広は相変わらず積極性を貫き、そのキレのあるコンビネーションを打ち込む… ここで偶然のバッティング発生!!! 杉田が左瞼をカット… 中広 10-9


6R これまでやや距離を残していた杉田がラッシング戦法を選択したか…? 中広にロープを背負わせるアグレッシブを発揮…が、これを中広は巧みなクリンチで寸断… 杉田は単発の先に進めない… さらに、体を入れ替えて打ち込んだ中広の右、さらに上下に叩き込んだ左が好印象か… 中広10-9


7R 杉田はクリンチでその攻撃の芽を摘み取られる展開… 中広の右ストレートにのけぞる…!! さらに、中広の打ち下ろし気味の右クロスがクリーンヒット!! 杉田、苦しいか…? 中広10-9


…このインターバルで杉田の応援団が声援を飛ばす!!!


「スギター!!! お前は独りじゃないぞ、みんなついてるぞー!!!」


いい声援でしたね、これは…


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8R もみ合いから杉田のパンチが中広の顔面へ当たり始めた…!!! さらに、クリンチにごと中広をコーナーまで押し込み、距離を潰してのショート攻撃の時間帯が増え始めた…!!! 中広、これを巧みに左フックを引っ掛けて回りこむも、杉田がその中広を逃がさずに押し込んでゆく…!!! 杉田がしつこくしつこく中広を侵食し始めた… 杉田10-9


9R 中広は鋭い左を上下に打ち込むも、杉田の距離潰しの前に自分の戦いができない様子… ゼロ距離でも果敢にカウンターを狙う中広であったが、杉田は全くひるまないし、押し負けない… しつこいショートパンチで中広を疲弊させてゆく… 杉田の根性が、貫かれた印象… 杉田のアグレッシブを採る… 杉田10-9


10R ラストラウンド!!! 杉田の勢いと厚いラッシングの前に、中広の鋭いパンチも印象が薄れた… さらに杉田の左を正面から喰うも、頭を押し付けてこれを真っ向から受け止めるも、この展開は杉田に分があったようだ…

体を入れ替えても杉田は頭をつけてしつこくしつこく食い下がった… 杉田の執念がアグレッシブをもぎ取ったか…? 杉田10-9


試合終了…


HIGEGE91の採点 97-94 で中広大悟選手の勝ち!!!


公式の採点 96-95で中広!!! 97-96で杉田!!! 割れた…!?


97-94…の、2-1のスプリットデシジョンで、勝者、日本スーパーフライ級「新」チャンピオン… 中広大悟~!!!


採点、かなり迫ってましたが、これ、僕には「地の利」がかなり働いたように見えましたが、しかし、それは別にして、最終盤の杉田選手のアグレッシブはなかなか見応えありましたね…


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無冠の実力者から、ついに、念願のチャンピオンになった中広選手…


地方ジムは日本タイトルに絡むことさえ難しい…っていわれる世界ですので、これは嬉しい戴冠ですね…


最近は試合間隔も短くて、また、曲者の前日本フライ級の吉田選手と戦ったりと、勢いを落とさないようにここまで来ましたからね…


しかし、今後は地元広島で防衛戦をやるんだとしたら、なかなか見れなくなっちゃいますが、まずは、おめでとうございました!!!


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2008 4 21 ガッツファイティング 後楽園ホール 




仕事の隙間に無理をして滑り込んでしまった…


それと言うのも、僕の好きなボクサー、本田秀伸選手があの恐怖のロシアン・ジャバー、サーシャ・バクティンに挑むからだ…


三十路の元日本ライトフライ級チャンピオン、ディフェンスマスター、頭脳派ボクサー…あのポンサクレックやムニョスとも戦った日本屈指の技巧派ボクサーである本田選手だが、前WBA世界スーパーフライ級王者の名城選手の無名時代に番狂わせで敗れ、一旦は引退するもその後再起、再始動… 引退式までやっての再始動である。


断ち切ることのできないリングへの未練… 想い… 夢のカケラ…


どうしてもそれを生で観たかったのだ…


さらに、相手があの無敗のサーシャである…


日本屈指のディフェンス技術と謳われた本田選手の技巧がどこまで通用するのか…?


非常に興味深くていてもたってもいられなかったのだ…


WBA4位 サーシャ・バクティン 18W7KO

×

OPBF・SF級5位 日本SF級1位 本田秀伸 29W14KO5L




1R サウスポー本田、サーシャのジャブを紙一重の距離で見切り、その打ち終わりに左ボディーストレートを突き刺す… が浅いか? 世界ランカーで無敗のサーシャの武器は電光石火の高速のワンツーである。本田、これを微妙な距離感で見極めながら自ら積極的に打って出る… お!? 対応してる… 凄い!!! が、中盤以降、そのサーシャのジャブに切れが増して行き、幾つか頭を跳ね上げられた… しかし、異常な速さと鋭さ… このジャブワンツーであるが、以前よりも硬質な印象ありましたねぇ… サーシャ 10-9


2R 本田、自分から攻めるも、サーシャの懐の深さの前にパンチが届かない印象… せいぜい左ボディーストレートを思い切るまでで、その白い顔にパンチが当たる場面は作れない… しかし、それでも微動だにしないでぎりぎりの距離でサーシャのジャブの射程外から瞬きもせずに見極める本田の集中力とやる気は本物… しかし、全てを見極めることはできない… 本田の顔が弾ける… 弾ける… くっ… サーシャ 10-9


3R 接近戦からサーシャの左ボディー(?)がカウンター気味に本田の腹をえぐった… 本田、コーナーに自ら背を預ける… 効いた…!! サーシャが追い討ちをかける!! 本田、背を丸めて全く動けない!! サーシャ、滅多打ち!!! この間、恐らく30秒~40秒(?)、本田は必死でダウンを拒み続けた… 恐らくはそのボディーが相当なダメージを及ぼし、地獄の責め苦となっていたのだろう… 良くぞ堪えた… あの本田が一歩も動けずに、ただ腰を折って耐えに耐えることしかできなかったのだ… 衝撃… というか、辛かったなぁ… ダウンシーンはなかったが、この計り知れないダメージはダウンに相当するものであった… サーシャ10-8



5 6R サーシャのワンツーが本田の見切りの及ばない光速で突き刺さる… 本田、腹を決めたのか、さらにガードを下げてそれを見極めながらその打ち終わりのカウンター狙いを実践するも、対応が効かない… 早過ぎるし、やはりフィジカル的にもバンタムのサーシャに押されざるを得ない… 弾ける本田の顔面…!! さらにジャブに留まらず、コンビネーションの右も当たり始める… あの絶頂期のムニョスの豪腕を空転させ続けた世界レベルのディフェンスであるが、光の槍のごときサーシャのワンツーには脆くも破壊された… 本田圧倒的な窮地の連続… サーシャ10-9


7R 一発逆転カウンター狙いに的を絞り、ガードを落とした本田であるが、サーシャのワンツーの前に後退… サーシャの光の槍が本田を貫く… ロープを背負った本田… 


シャキィィィィ…ン!!!


サーシャの左が本田の顎先を打ち抜いた…


ディフェンスマスター・本田の膝がマットに落ちた…


と、ここで青コーナーからタオルが投入された…


7R 1:13 KOでサーシャ・バクティンの勝ち!!!


う…


ふてぶてしくて、クールで、一度は退きながらも、それでも恥も外聞もなくリングに帰ってきた日本屈指の技巧派ボクサー・本田秀伸…


その忘れ物を一緒に探したくて僕は無理やりにホールへ飛び込んだ…


痛い…


僕の胸もメチャクチャ痛かった…


世界王者級…と賞されるサーシャに積極性をもって挑んだけれど、完全に跳ね返された…


僕はこの戦い、心の中で本田選手にとっての「3度目の世界戦」…と言う位置付けをして観戦に臨みました…


それほどの強敵・強豪…であり、不利な戦いであった…


本田がKO負け… この胸の痛みはなんだ…!?


しかし、その序盤立ち上がりの積極性に僕は「本田の本気」を観たし、その劣勢の最中に肉を切らせて骨を断つ的な「勝負魂」を確かに見た… 


完全敗北も、目一杯戦った… 


本田選手よ、その胸の中に一体何が残ったのだろう…?


あるいは、何が見つかったのであろう…?


いや、それはまだこれからも探さなくちゃいけないものなのだろうか…?


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いやぁ、本当にいい組み合わせだ…


御愛読感謝


つづく