生観戦!! 牛若丸×上石、サーシャ×本田!!  | ボクシング&ロック野郎 higege91の夜明けはまだか?

ボクシング&ロック野郎 higege91の夜明けはまだか?

人生の曲がり角に遭遇したボクシング&ロック・マニアhigege91。暇を見つけてはホール通い。ああ、俺は戦っているか!? ああ、俺は俺の求める『俺』に近づいているのか!?

2008 4 21 ガッツファイティング 後楽園ホール 




仕事の隙間に無理をして滑り込んでしまった…


それと言うのも、僕の好きなボクサー、本田秀伸選手があの恐怖のロシアン・ジャバー、サーシャ・バクティンに挑むからだ…


三十路の元日本ライトフライ級チャンピオン、ディフェンスマスター、頭脳派ボクサー…あのポンサクレックやムニョスとも戦った日本屈指の技巧派ボクサーである本田選手だが、前WBA世界スーパーフライ級王者の名城選手の無名時代に番狂わせで敗れ、一旦は引退するもその後再起、再始動… 引退式までやっての再始動である。


断ち切ることのできないリングへの未練… 想い… 夢のカケラ…


どうしてもそれを生で観たかったのだ…


さらに、相手があの無敗のサーシャである…


日本屈指のディフェンス技術と謳われた本田選手の技巧がどこまで通用するのか…?


非常に興味深くていてもたってもいられなかったのだ…


WBA4位 サーシャ・バクティン 18W7KO

×

OPBF・SF級5位 日本SF級1位 本田秀伸 29W14KO5L





1R サウスポー本田、サーシャのジャブを紙一重の距離で見切り、その打ち終わりに左ボディーストレートを突き刺す… が浅いか? 世界ランカーで無敗のサーシャの武器は電光石火の高速のワンツーである。本田、これを微妙な距離感で見極めながら自ら積極的に打って出る… お!? 対応してる… 凄い!!! が、中盤以降、そのサーシャのジャブに切れが増して行き、幾つか頭を跳ね上げられた… しかし、異常な速さと鋭さ… このジャブワンツーであるが、以前よりも硬質な印象ありましたねぇ… サーシャ 10-9


2R 本田、自分から攻めるも、サーシャの懐の深さの前にパンチが届かない印象… せいぜい左ボディーストレートを思い切るまでで、その白い顔にパンチが当たる場面は作れない… しかし、それでも微動だにしないでぎりぎりの距離でサーシャのジャブの射程外から瞬きもせずに見極める本田の集中力とやる気は本物… しかし、全てを見極めることはできない… 本田の顔が弾ける… 弾ける… くっ… サーシャ 10-9


3R 接近戦からサーシャの左ボディー(?)がカウンター気味に本田の腹をえぐった… 本田、コーナーに自ら背を預ける… 効いた…!! サーシャが追い討ちをかける!! 本田、背を丸めて全く動けない!! サーシャ、滅多打ち!!! この間、恐らく30秒~40秒(?)、本田は必死でダウンを拒み続けた… 恐らくはそのボディーが相当なダメージを及ぼし、地獄の責め苦となっていたのだろう… 良くぞ堪えた… あの本田が一歩も動けずに、ただ腰を折って耐えに耐えることしかできなかったのだ… 衝撃… というか、辛かったなぁ… ダウンシーンはなかったが、この計り知れないダメージはダウンに相当するものであった… サーシャ10-8




5 6R サーシャのワンツーが本田の見切りの及ばない光速で突き刺さる… 本田、腹を決めたのか、さらにガードを下げてそれを見極めながらその打ち終わりのカウンター狙いを実践するも、対応が効かない… 早過ぎるし、やはりフィジカル的にもバンタムのサーシャに押されざるを得ない… 弾ける本田の顔面…!! さらにジャブに留まらず、コンビネーションの右も当たり始める… あの絶頂期のムニョスの豪腕を空転させ続けた世界レベルのディフェンスであるが、光の槍のごときサーシャのワンツーには脆くも破壊された… 本田圧倒的な窮地の連続… サーシャ10-9


7R 一発逆転カウンター狙いに的を絞り、ガードを落とした本田であるが、サーシャのワンツーの前に後退… サーシャの光の槍が本田を貫く… ロープを背負った本田… 


シャキィィィィ…ン!!!


サーシャの左が本田の顎先を打ち抜いた…


ディフェンスマスター・本田の膝がマットに落ちた…


と、ここで青コーナーからタオルが投入された…


7R 1:13 KOでサーシャ・バクティンの勝ち!!!


う…


ふてぶてしくて、クールで、一度は退きながらも、それでも恥も外聞もなくリングに帰ってきた日本屈指の技巧派ボクサー・本田秀伸…


その忘れ物を一緒に探したくて僕は無理やりにホールへ飛び込んだ…


痛い…


僕の胸もメチャクチャ痛かった…


世界王者級…と賞されるサーシャに積極性をもって挑んだけれど、完全に跳ね返された…


僕はこの戦い、心の中で本田選手にとっての「3度目の世界戦」…と言う位置付けをして観戦に臨みました…


それほどの強敵・強豪…であり、不利な戦いであった…


本田がKO負け… この胸の痛みはなんだ…!?


しかし、その序盤立ち上がりの積極性に僕は「本田の本気」を観たし、その劣勢の最中に肉を切らせて骨を断つ的な「勝負魂」を確かに見た… 


完全敗北も、目一杯戦った… 


本田選手よ、その胸の中に一体何が残ったのだろう…?


あるいは、何が見つかったのであろう…?


いや、それはまだこれからも探さなくちゃいけないものなのだろうか…?





さて、昨日、日本王者の湯場忠志選手が衝撃の王座陥落をした…


で、その湯場選手に壮絶なるKO負けを味あわされた牛若丸あきべぇ選手の再起戦である…


作られた連続KO記録…なんて言う罵りを跳ね返すためにも挑んだ湯場戦であったが、浜田剛史さんの持つ15連続KOに並んだものの、KO負けの洗礼を受けた牛若丸選手…


倒し屋…


…のノボリが赤コーナーではためいたが、倒されたのは牛若丸であった…


日本ウェルター級4位 牛若丸あきべぇ 16W154KO1L

×

日本同級7位      上石 剛 8W6KO6L3D



1R ゴングと同時に勢いよく飛び出した両者、背中を丸めてガードを固めた上石に対して、やや離れた距離から牛若丸がワンツーを打ち込む立ち上がり… 





が、やがて両者頭を押し付けあっての接近強襲合戦へと変わってゆく… さらに、その熱はヒートして行き、両者サウスポーの根気勝負の異常な世界へと加速してゆく…


これは一体何なのだろう…


もはや開始直後から技術は遠くに置き去りにしてしまった牛若丸はまさに「狂犬の如き強打強振」、防御技術を捨てた牛若丸、捨て身の攻撃が上石の顔面を貫くも、顎を引き、ガードを上げた状態でなんとか堪える… そして、その最も危険な距離、最も危険なタイミングに攻撃一辺倒に全てを投げ打った捨て身の牛若丸…の顔面を上石の左フックがカウンターで直撃、牛若丸の膝が早くも折れ掛ける… 両者もつれるようにロープ際でブレイク… レフェリーが両者を分ける… 牛若丸、もう意識が飛び掛けている…




上石のパンチも豪拳である… 湯場を倒した新王者の沼田をマットに這わせた硬い拳である…


牛若丸、はっきり言って、終わっていた…


この無策、この無謀を僕は潔しとは認めない…


意識を失いかけた牛若丸の顔面に、上石の強烈な拳がめり込んだのは再開直後であった…




非常に危険な幕切れであった…


1R 2:41 レフェリーストップ!! 

 TKOで上石選手の勝ち!!!


会場は大いに沸いた…が、僕は激しい頭痛を催した…


こんな戦いを続けていたら、牛若丸選手は事故に呑み込まれる…と感じた。


防御技術を無視した、まさに、狂犬的なアタックに、僕は激しい嫌悪感を正直抱いたのである。


息苦しい…


この「のるかそるか」「いちかばちか」「やるかやられるか」…の路線を牛若丸選手に歩ませるのは止めて欲しい…と僕は感じました。


わかっている…


ボクサーがどのようなスタイルを選択をするかは例え陣営が本人にアドバイスできたとしても、結果的に選択・実行するのはボクサー自身であり、その責任も本人の責任なのであるかもしれない…


しかし、危険すぎはしまいか…?


喧嘩ファイト…なんて言葉があるが、これがそれであり、また、玉砕戦法…という言葉があるが、これもそれである…


かつての全日本新人王MVPの渡部選手と倒すことだけに心を奪われた牛若丸選手は果たして同一人物なのか…?


ボクサーにとって大切なものとは何か?


倒すことも重要であるが、無事リングを降りること…がさらに重要なのは言うまでもないことなのではないだろうか?


そのための鍛錬と技術の習得なのではなかろうか?


まるで崖に向かってノーブレーキで車を走らせるチキンランの如き無鉄砲に僕は頭痛を催してしまったわけですが、皆さんはどのようにお感じになったのであろう…?


僕にはそのような奇妙な感触が残った。また、それはバキロフ戦でも実は感じていた…


プロスポーツと喧嘩ファイトの境界線…


いや、これは好みの問題もあると思いますし、牛若丸選手のような「勇気?(無謀?)」を実行できる選手はそうはいない事も理解していますが、あまりにも危険な印象が僕には残りましたし、もっと違う牛若丸選手を見たい…とも感じたのであります…


ランカークラス、そして、ウェルター級…である牛若丸選手には、新しい戦い方を模索して欲しいし、「自分を守りながら敵を倒す」…と言うボクシングの理想をもう一度探して欲しい…と思いました。


御愛読感謝


つづく