35歳の世界王者、散る…越本隆志にみた『侍』像… | ボクシング&ロック野郎 higege91の夜明けはまだか?

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越本がTKO負けで初防衛に失敗、引退を表明



越本VSロペス…

 ボクシング・世界ボクシング評議会(WBC)フェザー級タイトルマッチ12回戦(30日・マリンメッセ福岡)――王者の越本隆志(35)(Fukuoka)は挑戦者で同級14位のルディ・ロペス(22)(メキシコ)に7回TKOで敗れ、初防衛に失敗。日本ボクシング史上最年長王者だった越本は試合後、現役引退を表明した。ロペスは世界初挑戦で王座奪取。日本のジム所属の世界王者は、WBCバンタム級・長谷川穂積、同スーパーフライ級・徳山昌守、世界ボクシング協会(WBA)同級・名城信男、WBCミニマム級・イーグル京和、WBA同級・新井田豊の5人になった。(観衆4500人) (読売新聞)


 以上記事抜粋


正直な話… 僕は楽観していた。


越本が敗れるはずない… 


とは言え、35歳の世界王者…越本隆志が世界フェザー級最強とは言い切れない…が、少なくとも、このロペスと言う14位の若いメキシカンには敗れるはずはない…と考えていた。


 試合内容はわからない…が、どのようなTKOであったのか?


 このブログに速報をくださった方のコメントから察するに、中盤、ロペスの攻撃の前に被弾し、一方的な局面となってのストップであったと推察するが、この「胸につかえた重い悲しみ」をなんと表現したらよいものか?


 現在34歳のhigege91にとって、世界王者・越本隆志の存在は『心の支え』であった…


 ここ数日、仕事が多忙を極め、睡眠時間もなく炎天下で撮影作業をしていたのだが、はっきり言って「体力の減退」を目の当たりにする毎日である。


 …また、「あらゆる物事に対して心が萎えて行く…」という恐ろしい『感覚』に苛まれる日々が重なって行くこの現実世界を疎ましく思うこと…もあるのであるが、そんな時は越本隆志を思い出して踏ん張ることにしていた。


 根性…という言葉の持つある種土着的な響きからは遠い場所で、越本隆志は毎日の精進をきめ細かく重ね続けることで、また、常に「考える」ことを忘れずに黙々と淡々と自分を磨き続けることで、非常に知的でスマートな存在感を体現していた…。


 …継続は力なり


 その有様が非常に哲学的で僕は大好きだった。


 滅多打ちの果てのTKOであったのだろう…


 ダウンしたのかな…?


 新聞にはダウンとは書かれてないようだから、連打ラッシュを浴びてレフリーストップ…であったのかな?


 引退を表明… とあるが、これはファンとして素直に受け入れたい、そして、感謝したい。


 



 う…


 口から内臓が飛び出すほど、悔しい…


 ちくしょう…





 …が、この結果は「必然」なのだ。


 今日のルディー・ロペスが今日の越本隆志よりも強かったのだ…


 この初防衛を果たして、次は全国区でテレビ中継してもらってもっともっと越本隆志の「精神力」の素晴らしさを世間に認めさせたかった…。


 8月2日には亀田興穀とファン・ランダエタのライトフライ級王座決定戦が控えているが、亀田が話題になって注目を浴びれば浴びるほど、正直、越本隆志のような「正統派」があまり日の目を見なれなかった部分が頭をかすめ、思わず歯軋りしてしまうのだ…。


 …もちろん、ボクシングファンはみんな知っている。


 越本隆志の『心の強さ』と『磨き上げられた技巧』の美しさを…


 しかし、上記記事に観衆4500…とあるが、以前何かで読み知った記憶があるが、1万人規模の大会場での開催であったはず…


 キャパの半分以下の入りであったのだとしたら、なおのこと『歯軋り』してしまう…(正確にはわかりませんが…)


 これほどまでに「研ぎ澄まされたボクサー」を世間が認知できなかったのだ思うとと、僕は絶望してしまう。


 ボクシングの未来… と言うよりも、日本人になんだか絶望しちゃう…


 それほどまでに僕は痛手を負ったような気分だ。


 ちくしょう!!!!


 



 『侍』…


 


 と言う肩書きを日本人は好む…


 侍…とはある種の潔さの表現…と言うか、腹の据わった男子…を指すようなイメージが僕にはあるが、その一方で、その腰に下げた「刀」のイメージも重なって、ある種の「鋭さ」も頭に浮かぶ。


 越本隆志には、そんな『潔い鋭さ』があった…。


 例えば、巨匠・黒澤明の名作映画、言わずと知れた『七人の侍』で言うところの、宮口精二が演じた寡黙な久蔵と言う『侍』…と重なるのが、僕の中の越本隆志…である。 


 七人の侍  …侍映画の金字塔 『七人の侍』(黒澤明監督作品)


 この名作映画を知らない方はあまりおられないとは思うが、若い方、また、あまり映画に興味のない方もおいでになるかもしれないので、ここでぜひともご紹介させていただく。


 この映画の中で登場する「宮口精二」さん扮する『久蔵』という侍役…


 最高に渋い…


 男なら思わず誰でも「ああなりたい」・・・と感じるであろう部分を秘めた寡黙な侍像がそこにはある…


 


 ああ、集中力を研ぎ澄ますことで「己の道」を貫いた侍よ…


 その凄まじき精神力の果てに世界王座を奪取した兵よ…


 35歳の世界王者は、半年間で前世界王者…になったが、この功績が僕たちの胸に残した感動は決して色褪せることはない…。


 諦めないこと…



 信じ続けること…



 そして、貫くこと…


 を、越本隆志は僕に教えてくれた。


 僕はあなたが負けてしまってちょっと不貞腐れてますが、できることならば敗れたあなたの傍に駆け寄ってこう叫んでやりたい。


 よくやった、疲れたろう、あなたがどんな気持ちであろうと、あなたは最高に立派だった、あなたの生き方そのものが最高に「侍」だった、感動をありがとう!!!



 今や失われつつある、かつてのいわゆる『古風な日本男児』…的な美徳を備えたボクサー・越本隆志よ


 あなたのその『精神力』と『潔さ』を、僕は死ぬまで忘れない…


 本当にどうもありがとうございました。


 御愛読感謝


 つづく