三十路ボクサー・阿部元一 3度目の日本王座挑戦失敗!! 2分足らずの王座決定戦について | ボクシング&ロック野郎 higege91の夜明けはまだか?

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人生の曲がり角に遭遇したボクシング&ロック・マニアhigege91。暇を見つけてはホール通い。ああ、俺は戦っているか!? ああ、俺は俺の求める『俺』に近づいているのか!?

ボクシングの東洋太平洋フェザー級王座決定戦12回戦は21日、東京・後楽園ホールで行われ、同級1位の榎洋之(角海老宝石)が同級7位のデンタクシン・スーンギラーノーイナイ(タイ)に2回1分22秒でKO勝ちし、新チャンピオンとなった。榎は2回に左ボディーブローでダウンを奪い、さらにボディー攻めで2度倒した。
 同日行われた日本フェザー級王座決定戦10回戦は同級2位の渡辺一久(角海老宝石)が同級1位の阿部元一(ヨネクラ)から3度のダウンを奪って1回1分59秒でKO勝ちし、新王者となった。


以上記事抜粋



阿部元一散る1


 日本フェザー級1位 阿部元一…74年4月21日生まれ 愛媛県出身 18戦14勝10KO2敗2分け


 このあまりにも表情豊な、また、サービス精神旺盛な、おっちょこちょいな、愛嬌のある人間味溢れる阿部がHIGEGE91は好きだ。


 かつてKO勝利を喜びすぎて勝ち名乗りを受け、リングの上で「ドロップキック」をして着地失敗、腕を「骨折」したボクサーがいた。


 それが阿部元一だ。


 そんな理由で、足踏み、回り道を余儀なくされた。


 しかし、再起後日本王座に2度挑戦。王者は前前王者の大之伸くま…。


 それぞれ「僅差判定」で敗者となる。そのジャッジが際どすぎて、安部が勝っていた…とする批判も多い内容だった、の声も聞かれたそうだ。


 僕はその「際どい」タイトルマッチは観ていないので詳細は分からないが、当時のジャッジが処分されたと言うから、相当な「僅差」…というか、微妙な内容であったのだろう。


 そんな「過去」を引きずった阿部はもう31歳だ。その愛くるしい表情とは裏腹に、そのファイトスタイルは、「ド」の付く「ファイター」、すなわち、『ドファイター』だ。


 一方、同級2位の渡邉一久は24歳の筋肉ムキムキのヤンキー系の凛々しいホープ。その「変則」的とも形容されるボクシングスタイルで無敗の沖縄ボクサー・竜 宮城(HIGEGE91の大好きな胸毛ボクサー)を判定に下し、一気にこの大舞台へ乗り込んできたのだ。


 結果は上記記事の通り、1R 1分59秒、渡邉が3度のダウンを奪ってのKO勝利であった。


 その「背負った」もの…に惹かれてHIGEGE91は安部を応援しに雪の中を応援に出かけたのだ。結果は「惨い」ものであった。


 1R、阿部は例によって背を丸め、完全防御姿勢から一気に詰めて行く。そして、手数を出して連打から大きなオーバーハンドのフックを振るう。


 この阿部の「突貫」攻撃をどう渡邉が捌くか、また、クリンチを交えながら凌ぎ、阿部にダメージを与える攻撃に結びつけるか…。


 一説には「噛みあわない」?とも懸念されたが、予想外な結末があっという間に訪れた…。


 ホールで観戦していたが、僕の眼に映ったのは、固く閉ざされた阿部のガードの隙間に入り込んだ渡邉のアッパーカットが引き金となったような…。阿部は顎先から突き上げられ、ズシンと背中からダウンしてしまう。


 ああ!?


 阿部は立ち上がる。しかし、身体が温まる前のダウンは「固い身体」をさらに「固く」してしまった。それはもちろん「ダメージ」と呼ばれるモノも多分にあろうが、落ち着いているようにも見えたが、この時、すでに勝敗は決していたように思う。


 距離を保つと思われていた渡邉だったが、ここぞとばかりに阿部の十八番の接近戦での真っ向勝負を挑む。阿部も懸命に打ち返すが、回転力、パワーで劣勢となり、押しに押されて崩れ落ちる…。


 …しかし、阿部は立ち上がった。


 が、ここで「ダウン」の裁定が下ったにも拘わらず、渡邉に「減点1」が課せられる。理由はよくわからなかった。この時、阿部はコーナーでガードを固めて微動だにせず、背を丸めていた。


 今思えば、「ダメージ」は深く、深刻であり、身体を少しでも動かすことさえ「困難」な状態であったのでは…?と、思える瞬間であった。


 再開後、接近戦の乱戦から三度阿部が膝をつく。


 1R1分59秒!! スリーノックダウン!!


 新チャンピオン、渡邉一久ー!!


 阿部元一散る2

 

 …僅か2分足らずの王座決定戦であった。


 が、ここで「吼えた」のが米倉会長であった。


 阿部元一散る 抗議する米倉会長


 コミッション席に、さらにレフリーに渡邉の「反則」を訴える。


 確かに3度目のダウンは接近乱打戦となり、渡邉が力に物を言わせて「なぎ倒した」…ようにも見えたが、それが打撃によるダウン奪取ではない…という趣旨の抗議だったのか?あるいは2度目のダウンの後に、減点が課せられたことと、2度目のダウンが反則攻撃によるものとするならば、それは「数えられない」といった趣旨なのか?それは客席からは判断しかねるものであったが、その猛抗議ぶりは凄まじいものであった。


 しかし、記事にあるとおり、「3度ダウンを奪って」のKO勝利…が公式の裁定であろう。


 ああ、三十路で、3度目の挑戦をたった『2分足らず』で粉砕された阿部元一…。


 映画『スター・ウォーズ』のテーマで入場してきた人間スペクタクル・阿部元一…。


 ああ、しかし、あのアッパーは「モロ」に入ったよな。


 頭、真っ白…になっちゃったんだろうなぁ…。


 無茶苦茶、練習したんだろうな。多分、年齢的な限界も含めて、今まで以上に自分とも戦ってきたんだろうなぁ…。


 悔しかった。


 しかし、安部の得意とする「接近戦」という土俵で『勝利』した渡邉が間違いのない勝者…である。


 その力強く強引な連打で根っからのファイター・阿部を粉砕したのは見事であった。


 身体の温まる前、エンジンの掛かる前に敗れた阿部には「悔い」が残る内容なんだろうなぁ…。


 『2分足らず』の王座決定戦…。


 青春の全てを捧げ、自分の拳だけを信じて闘ってきた阿部の胸中を想像して、HIGEGE91は自分を省みずに入られなかった。


 どうなんだ、どうしようってんだ、「俺」って生き物は…!?


 阿部元一の談話が気になる。


 これから、テレビ放送で内容をもう1度確認したいと思う。


 特に、2度目のダウンを喫し、ガードを固めた体制で微動だにしなかった阿部の顔が観たい。


 奇跡を信じる男の顔をこの目で観たい。ダメージで朦朧としているのかもしれない…が、そこには戦う男の「肉体」と「精神」を越えた、『執念』と呼ばれる何かが顔をあらわしているのだと思うからだ。


 その「顔」を確かめてからでないと眠れない。


 阿部がどんな顔で、闘っていたのか、確かめずには眠れない…。


 榎、OPBF決定戦を制す


…で、榎洋之が2Rで難しい名前のタイ王者を破ってOPBF王座戴冠。


 しかし、タイトルの掛かったタイ王者だというから「接戦」を期待していたのだが、あっさりボディー打ちで沈んでしまった…。世界ランクはかなり上がるんじゃなかろうか?


 東京には珍しい大雪の夜…


 三十路ボクサー・人間スペクタクル阿部の「心の中」が身に沁みて寒い夜だった。


 御愛読感謝


 つづく