日本バンタム級タイトルマッチ サーシャ・バクティン VS 立木正祥 | ボクシング&ロック野郎 higege91の夜明けはまだか?

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人生の曲がり角に遭遇したボクシング&ロック・マニアhigege91。暇を見つけてはホール通い。ああ、俺は戦っているか!? ああ、俺は俺の求める『俺』に近づいているのか!?

サーシャVS立木ポスター


2005 10 17 第323回 ガッツファイティング 後楽園ホール


…最近、花形ジムの選手が負けるところを良く観る。花形会長を、気の毒に感じてしまう。黒地に赤白のボーリングシャツのような?あのセコンド陣の姿を見かける度、なんだか胸が熱くなる…。今夜も…、そんな気持ちになる。申し訳ないが、日本バンタム級8位 立木選手が挑戦するのはあの無傷で日本タイトルV7のサーシャ・バクティンへの挑戦なのだ。…厳しい。…どうひいき目に見ても苦しい。流石に『どんでん返し』は期待できない。最近頻発している『番狂わせ』も起こる可能性は相当低い。同級世界ランクWBA13位、WBC5位の隙の見つからない実力者への挑戦なのだ…。菊井君がタイ人?との8回戦での判定勝利以来、花形の選手が勝ったの生で見てない気がするんだなぁ…。


 ココで両者のデータを改めて確認してみる。


王者 サーシャ・バクティン 24歳 170㎝ 右ボクサー 戦績アマ124勝80KO4敗 プロ15勝5KO無敗

挑戦者 立木正祥 30歳 163㎝ 左ボクサーファイター 戦績アマ-なし     プロ10勝2KO5敗2分


 …正直、厳しい…の一言に尽きる。苦労人の30歳、雑誌では「技巧派」の表現で形容される挑戦者だが、さらにその上を行く圧倒的な経験と卓越した技術を持つ王者である。HIGEGE91的には、花形会長の喜ぶ姿を観たいが、いかんせん、相手が巨大すぎる。現・WBC王者の長谷川穂積でさえ雑誌のインタビューで「…サーシャですか?あれはやばいですわ、勝てませんわ…」などと言わしめる日本王者…(冗談めいてるとは思うけど)。ぐ・・・。しかし、アマ戦績半端じゃないな。どちらもKOは少ない。…しかし、今回はKO決着しそうな予感。立木が踏ん張れるかどうかが「見所」になってしまう…。申し訳ないが、どうにもこうにもなぁ…。


 …よくよく試合予定を見ると、テレビ局の放送予定が書かれていなかったので、無理矢理仕事を終わらせて(…今日は仕事で静岡にいたわけだが…)、後楽園ホールへ…。あら、当日券でも楽々はいれちゃう。サーシャって評価しない人がいない圧倒的な強さを誇ってるけど、観客動員は少ないなぁ…。…って、もちろん立木も地味な存在だけど…。


 両選手入場。お、セコンドには先日、日本スーパーバンタム級王座から陥落してしまった木村章司選手の姿も…(がんばれよ、まだまだ期待しているんだからな)。さらにあのハンチングの老人は…、薬師寺、戸高を世界王者へと導いた伝説のトレーナー、 マック・クリハラだ!!…地味な30歳、立木正祥。どんな気持ちなのだろうか?…強すぎる相手に挑む挑戦者って、どんな心でモチベーションを高め、今日と言う日を迎えたのだろうか…?…30歳。最初で最後の挑戦…だと考えるだろうな、普通…。そのチャンスがこの最強日本王者への挑戦なのだ…。ちょっとやりきれない…って思っちゃってもおかしくないほどの実力差はファンも当然感じているし、本人だってきっとそうだ…。しかし、立木はリングにたった。精悍な表情、落ち着いているように見える。王者入場。こちらは余裕。さらにロシア人ってこともあるが、「オーラ」が漂う…。世界挑戦もささやかれる大物なのだ。今回でV8を達成すれば、返上しそうだ。この階級の連続防衛日本記録が打ち立てられることになる。返上して世界挑戦。サーシャ本人ももう日本王座防衛は嫌だ…ってこぼしているのを雑誌でも目にする。もっともかもしれない。


R1 サーシャの電光石火の左ジャブが矢継ぎ早に繰り出される。立木は距離を置いている。あら、なんだなんだ。身長差がこれほどあるのか?…ってことは当然リーチも。…お、なんだか立木の動きがいい。あの光のような速さのサーシャのジャブに対応している。その殆どを見切っているように見える。なんだか期待できそう。見切っている…というか、届かない距離をキープしているわけだが、立木は鋭く踏み込むとジャブ、ワンツーを当てて再び距離を置きなおす。…あ、思いのほか立木は距離をうまく使えている印象…。しかし、空振りでも見栄えのいいサーシャの手数とその鋭いジャブは凄まじいなぁ、最後までよけきるのは不可能だろ…。…と、立木は体制を崩しながらも懐へ飛び込むとボディーブロー!! …ワッとなる観客。これは単なる一方的な試合にはならない予感…。 難しい…から、10-10のイーブン


R2 立木がやけにいい。サーシャのジャブワンツーが空を切る。見えてるのか、距離が測れているのか…、とにかくサーシャの有効打を許さない、出入りのボクシングを展開。…そして、ボディーを打つ。…防御に重きを置いているために体勢を崩されているから力強くはない…が、サーシャの手数よりも攻勢点は高かったのでは…?立木10-9


R3 しかし、冷静な王者のエンジンが掛かるのはこれからであった。立木の細かい出入りへの対応を徐々に修正していったサーシャ。徐々に立木の顔面へジャブがあたり始め、立木に少しだけ許していたクリーンヒットをこのRは封殺…。しかし、これでサーシャのパンチが1撃必殺の破壊力を秘めていたら末恐ろしいなぁ…。優勢点は奪われるも、立木もまだ参ったわけではない…。動きは相変わらずいい。サーシャ10-9


R4 バキィ!! 立木の左フックがサーシャに汗が飛び散るほどのクリーンヒット!!。 おいおい、嘘だろ…。立木の努力と精進が産んだこの1撃はかなりポイント高い!! サーシャの細かいジャブは浴びるもその後のワンツーまでは食わない立木であった。見栄えのいいビッグヒットに立木に攻勢点つけちゃう。立木10-9

…しかし、見事に入ったなぁ。もうちっと破壊力があったらなぁ…ってパンチだった。


R5 6 7 8 9 …しかし、この後はサーシャの目にも止まらぬ攻撃にポイントはついてゆく。極度の集中と距離の測りあいで多少疲労した為か、立木が細かく貰いだす。あと20㎝下がっていたところが、下がりきれない…って印象か?…サーシャの細かい左で頭が弾かれる頻度が圧倒的に高くなって行く。さらに、4Rのような大きな当たりが生まれない。単発でボディーに打ち込むも、体勢が良くないから見栄えも悪いし、効く当たりではない…。しかし、立木は諦めないし、果敢に攻め込む。忍耐と努力の男が、コツコツと挑む。サーシャもやりにくかったんじゃないのかなぁ…。それともこんなものなのかなぁ…。立ち上がりこそリズムを崩せたものの、流石に中盤以降はスピードの全く落ちないサーシャのRが続いてゆく。…コンビネーションもは、早い!!…まだ早い、R1と変わらぬ速さ!!コンビネーションをまともに喰らう場面も…。ポイントはごっそり持っていかれるも、効いてはいないようだ。しかし、隙がない。恐るべし、サーシャ・バクティン。サーシャ10-9(全部)


R10 ラストラウンド!! KOしか勝ち目はない。しかし、パンチのあまりない立木。観ているこっちは辛いが、諦めない立木の最後の忍耐と努力が「華」を咲かせた。バキィ!! 立木の左ストレートがサーシャのジャブをかいくぐって炸裂!! 見事なクリーンヒットだった。もちろん立木は被弾している…が、大胆に前進を敢行!! 打って押してゆく!! サーシャは馬力こそないがフットワークを駆使して対応。ポイントアウトできる自信も頭にあったろうな。でも、立木の執念が詰まったあの『左』は素晴らしかった。ただでは終われない…。そんな気概の篭った1撃だった。そんな立木を裁ききるも、最終10Rは立木が獲ったかな…。立木10-9


 HIGEGE91の採点 97-94で 王者・サーシャ・バクティンの勝ち!!

 公式の採点  97-95 98-94 98-94 …の3-0で王者・サーシャ・バクティンの勝ち!!


 残念だったが、立木の精進と忍耐と努力が産んだ、R4 と R10 の『左』が炸裂した瞬間に咲いた『華』のような一瞬は素敵だった。そのパンチを生で観られて、HIGEGE91は幸せだった。


 サーシャ・バクティン…。強い。…が、長谷川穂積の方が強い…と思った。確かに距離を奪われたらポイントをごっそり根こそぎとられてしまうだろうが、倒されることは先ずなさそうだ。長谷川が流石に12R最後まで裁ききられるわけはない。長谷川の攻撃力、その速攻連打の威力はサーシャを軽く凌駕している。 きっかけを逃さない「充実」を長谷川は身に付けた。技術センスはサーシャが上でも「勘」と「パワーを集約してまとめられる」長谷川に分があるとみた…。


 …などと、想像をするわけだが、サーシャに勝てそうな日本人は長谷川くらいしか思い浮かばないので、そんな勝手なことを書いてしまった…。

 …木村章司がバンタムに落として戦ったら?結構面白そうだな。でも、完封されちゃうかな?西岡利晃がバンタムに帰ってきたら…?ぐらつかせる場面は作りそうだな、でも捕まえられるかな?鳥海純が挑んだら…?ぐ…。むちゃくちゃ被弾しそうだな、あの左ジャブを…。でも、対長谷川戦で見せたカウンターが炸裂したら、流石にサーシャも倒れるか…?って言っても、10Rの内、そのチャンスは1度か2度あるかないか…って感じかな?


 ・・・って、その鳥海純の再起戦が今月10・24に迫ってきた。ああ、僕が車をぶつけたあの夜のまさかの敗戦、OPBF初防衛失敗からの再起だ。勝って欲しいなぁ。勝てるよな。そんなはずないよな。完全に退路はもうないもんな…。頼む、復活してくれ、あのクマトーンに仕返ししてくれ!!(…クマトーンは11月19日に元世界王者・マルコム・ツニャカオ・比とOPBF初防衛が決定、後楽園ホールで行われる…ってことは?)。


 仕事が身に入らないよ。だって明日は西澤さんのOPBF東洋太平洋スーパーミドル級タイトルマッチだし、セミファイナルは日本フェザー級1位・阿部元一出場だし…。


 …あ、そうそう、花形会長が控え室に戻るとき、ファンのおじサンなのか、後援会の人なのかわからないけど、笑顔でこう返事していた。


…もっとメチャクチャ打たれて倒されると思ってたんだけど、立木は良くやったよ…


 それは、勝利した後のような笑顔だった。 …複雑だけど、そんな瞬間に出くわしてちょっと嬉しかった。

 元世界王者・花形会長がんばれ!!


 つづく