『奇跡』を起こす遅咲きの日本ランカー 、柏木崇 病気の息子の為に、東洋王者になるぞ!! | ボクシング&ロック野郎 higege91の夜明けはまだか?

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人生の曲がり角に遭遇したボクシング&ロック・マニアhigege91。暇を見つけてはホール通い。ああ、俺は戦っているか!? ああ、俺は俺の求める『俺』に近づいているのか!?

男 柏木崇 必ず東洋太平洋奪取だ

…今年5月、あの坂本博之の2年以上もの歳月をかけた闘病とリハビリの果てに迎えた再起戦を、その剛打で撃沈させた日本スーパーライト級3位、柏木崇・31歳…。9月に決まっていた東洋太平洋王座挑戦が腰痛の為延期になっているが、11月には地元静岡で実現するはずだ。

 

 …坂本博之を破って一躍その名をとどろかせた。最初、僕はとんでもない奴だ、と思った。坂本の再起を粉砕した男…、ひどい奴がいたもんだ、正直、許せん!!…って思った。しかし、ダイナミックグローブか何かを観にいって、確か、メイン終了後の人もまばらになったホールで月間MVPの表彰式が行われたとき、僕は柏木崇を見たのだ。そして、マイクを握り締めての熱い受賞の喜びを聞いた。お客は試合が終わった為、もうパラパラとしかいない状況だった。しかし、柏木は熱く語った。


「…ここで闘います(胸を指差し)。ここだけは誰にも負けたない、絶対に奇跡を起こします!!」


奇跡とは、東洋太平洋奪取の意。そして、柏木は知っている。これが実に厳しい挑戦であること(…あの安定王者・佐竹政一を破って王座についたハードパンチャーが相手なのだ)を…。でも、ココでは、胸の中の熱い「魂」だけは絶対に負けられないのだ。負けることは許されないのだ…。


 …柏木には「白血病の息子」がいるという。ワーボクの記事によれば、息子さんはその病魔と戦い、奇跡的に全快したそうである。そして、柏木は見たのだ。目の当たりにしたのだ。「奇跡」ってものは、期待するものではなく、「実現」するものであると…。

 柏木はその息子の治療費の為に一日20時間前後も働き続けたという…。並大抵なことではない。しかし、その戦績は正直、パッとするものではない。

 13勝10KO8敗2分…。KO率は高いが、負けも多い。彼が奮起したのは息子の闘病する姿がきっかけで、それまでは練習嫌いで遊び人であたったそうだ。勝ったり負けたり、実力があっても練習しなければ勝てるはずもない…。が、柏木は生まれ変わった。 

 

 川崎タツキ(現・日本スーパー・ウェルター級1位)に判定で破れるも手ごたえを得、日本ランカー・音田隆夫をKO、そして、坂本博之をKO…で、気がつけば最近5試合はオールKOだ。パンチ力には定評がある。課題はディフェンスと言われるが、王者・金もまた柏木と同じ「ファイタータイプ」であるという。KO決着必死のこのカード、是非応援に行きたい…が、開催地は静岡は清水だ。

 

 現東洋太平洋スーパーライト級王者は韓国の「金正範」。彼にとってはこの柏木戦が初防衛戦にあたる。さらに、ラスベガスでノンタイトルをやって判定負けをしている。隙がないわけではない。初防衛の難しさは
戦前の予想を大きく覆すことも頻繁。さらに地元清水で戦える。これ以上ない好条件は揃っている。あとは、体調を整え、故障した「腰」をしっかり直すことだ。時間は与えられた。もう練習は再開しているらしい。


チャンピオンに技術はないけど、スタミナ、パンチ力、スピード、いずれも僕よりも勝っていると思う。無謀な挑戦だといわれるのは分かってます。でも、あの選手とは打ち合いが出来ると思うんです。そこで勝てるかもしれない…。打ち合いは気持ちが大きく左右しますから…」(柏木談)


 ・・・気持ちなら、絶対に引かない、負けない…。これは、三十路を過ぎてから上り調子の、奇跡を目の当たりにした柏木ならではの言葉。いや、目の当たりっていうのは不適切だ。病魔に苦しむ息子と共に戦い、奇跡は本当に起こせるのだ、ということを体験した男の言葉…と言ったほうがいいかもしれない。


 柏木崇、74年生まれの31歳。この秋、奇跡を起こす…。


つづく