たまには音楽の話 | ロールオーヴァー三文文士

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日々、ストレス社会で悶えている破滅型ロックンローラー、天井崇仁のキュートな日常

『スルメ盤』という言葉がある。
その名の通り、聴けば聴くほど染み入るように良さが分かってくるCD等を指す。
私にとってのそれは、だいたいの場合1回目に良さが分からないけど、何故かまた1曲目から聞き直すCDであることが多い。

パンク大好きな高校一年生の頃、パンクの元祖ということでたびたび紹介される名盤があった。


ヴェルヴェットアンダーグラウンドのファースト、『ヴェルヴェットアンダーグラウンドアンドニコ』である。
パンクどころか、ロックの名盤として数えられることの多いこのアルバム。ジャケットとプロデュースはアンディ・ウォーホルだ。
 CDを入れ、『さぁ、感動の準備は出来たぞ』と再生ボタンを押す。

さ~んでもに~ん

バラードである。

パンクじゃなかったのか。気だるいボーカルと、ローファイな靄のかかったような音質。
その後に続く楽曲も、荒っぽい演奏、調子っぱずれに聴こえるボーカル、ニコのボーカルも気だるい。適当に弾いてるとしか思えない箇所も多々ある。

しまった。金を溝に落とした。

悔しさから、何度も連日聴いて、名盤だと思い込もうとした。しかし毎度のように理解しがたい音楽。
しかしそれでも、ひと月くらいたった頃、ようやく良さが分かってきて全曲口ずさむくらいにはハマってた。

その後、20代前半にセカンドの『ホワイトライト・ホワイトヒート』、最近ようやくサードの『ヴェルヴェットアンダーグラウンド』を聴いた。いずれも元から聴きやすい内容なのか、自分の感覚が変わってしまったのか、スッと入って繰り返し聴けるいいアルバムであった。

邦楽でもある。



銀杏BOYZのサード、『光のなかに立っていてね』である。
とりあえずジャケットが完璧だと思ってる。
いま気づいたけど、おこがましくもなんとなく我々のセカンドにも似てる気がする。

銀杏BOYZといえば、高校時代にとても流行っており、カラオケではみんな歌っていた。ひねくれている私は、『やっぱ洋楽だよ』とかなんとかいってメロコアバンドを聴き漁っていた。
このサードは、その流行った頃から9年後、2014年発売。
ネットでも音楽雑誌でもたびたび紹介され、おとぎ話の有馬さんの弾き語りに行ったときにMCでべた褒めしてたのが気になり、購入に至ったのである。
したがって私は、これが初めての銀杏BOYZだ。
さぁ聴かせてくださいよ、名盤。
1曲目は南沙織のカバーだ。
再生ボタンを押す。

だぁーれもいないうみぃぃ

うっせぇ!!!
ノイズまみれの上、たぶん他の音楽より音量もデカい。
そのあとも轟音と叫び声が続く。
カラオケで聴いてた私の認識の銀杏BOYZとはまったく別物である。青春パンクを想像してたら肩透かしを受けるだろう。

これは良いのか?

なんだか即座に良いって思えるアルバムではないくらい、他に比較対象のないアルバムだ。
それでも出勤時間や、連日続く休日出勤中に爆音で聴いてると、ノイズが気持ちよくなり、その奥で歌われるメロディーの美しさ。
これぞスルメ盤だと思う。
たぶん100回近く聴いたアルバム。

『光』というバラードがあるのだが、いつかの冬、当時好きだった女の子と、路駐したその娘の車内でイヤホンを片方ずつ着けて聴いたことを思い出した。
(そのあとホテルに連れていかれた)


最近もまたスルメ盤に出会った。


おとぎ話の最新作『REALIZE』。
これもまた、他に比較対象はなく、即座に『良いね』と言えるアルバムではなかった。
ローファイな音質、ひたすらに同じようなリズムパターンと歌詞、ギターソロもほぼなくリフばかりが続き、音の隙間はスッカスカ。

ここ3週間くらい毎日のように聴いていた。
隙間が心地いい音楽。他のおとぎ話のアルバムともかなり違う。

ただ、初めての人に薦めるならこれではない。

まさしくスルメ盤だ。