【中学3年生向け】北辰テスト及び私立高校個別相談 Part3(個別相談) | しがない教師の雑感

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入試というものに、悉く失敗してきた者が、自分と同じ思いをする若人を少しでも減らせたらという思いから教師が綴る奮闘記的な何か。時々、内なる何かの発露のような感じで哲学や宗教学の話題も…

 私立高校入試の個別相談会がすでに始まっているが、10月11月はより本格化してくるので、受験生とそのご家族は毎週末のようにあちらこちら出かけることになると思う。
 個人的に埼玉県で行われている私立の「確約」という制度はどうかと思うが、何の発言力もない一個人が不満を述べた所で何が変わるわけでもないので、発言できるようになるまで、我慢しておこうと思う。

 受験生やご家族は、「確約」や学校によっては「加点」がもらえるかを非常に気にするが、個別相談会ではもういくつか気にして欲しいことがある。まとめれば「高校での勉強について」ということになるが、これだとあまりに漠然としているので、具体的に3つにまとめてみる。

1.授業のスピード、2.授業カリキュラム、3.文系・理系選択の時期

1.に関して、私立は学校ごとに得意とする分野が違っていたりする。大体は数学の教育に力を入れているか、英語の教育に力を入れているかどちらかであるが。特に、数学の教育に力を入れているかどうかは気にした方が良いように思われる。英語の授業が恐ろしく速いというのはあまり聞いたこと無いが(課題がめちゃくちゃ多いというのはよくある)、数学の授業が恐ろしく速いというのはよく耳にする。中学校では数学1・2・3と三冊の教科書を使うが、高校では数1・A・2・B・3・Cと最低六冊の教科書を使うことになる。さらにそれぞれにワークがついてくるので単純計算で合計12冊以上になる。学校によってはカリキュラムを早めて、高校3年間の勉強を2年の3学期までに終わらせるというところもある。すると理系選択者は2年足らずでこの量をこなすことになる。必然的に授業スピードは上がり、生徒は予習・復習に追われることになる。ついて来れない者は置いてかれ、数学ができないために「私立文系」を選ぶことになる。中学の時には数学が得意だったという生徒でもついていけずに文系選択に流れることがある(中学の時は数学が苦手だったが、高校に入って数学が好きになったという生徒もいるが、非常に稀だと思う)。相談会の時には、確約云々以外にこの辺りを確認して、高校生活をイメージした上で、慎重に学校選びをしてほしい。

2.に関して、先ほどの話しと重複する所もあるが、大学進学を見据えてカリキュラムが組まれているかどうか、確認しておく必要がある。大学進学の気がないのに大学進学カリキュラムをこなすのは辛いと思う。専門学校や就職は、大学の一般入試と異なり、内申点も評価の対象になる場合が多い。専門や就職を考えている人は、ある意味で、「内申が取りやすいカリキュラムか」を気にしたほうが良いと思う。
 大学進学希望者は、国立に対応できるカリキュラムか、私立特化型かを確認したほうが良い。私立特化型の学校を選択し、国公立大に行きたくなった時、高校で授業を受けていない科目を独学で勉強することになる。逆に私立に行きたいのに、国立受験者と同じ授業を受け続けるのは、今くらいの時期には大きなストレスとなる。定期考査の勉強と受験勉強が乖離してしまうので、よほど勉強が好きという人でない限り堪えられないと思う。定期考査は手を抜けば良いと考えるのは甘くて、高校は義務教育ではないので、点数が足りなければ落第もありうる。今はさせない傾向にあると思うが、それでも赤点を取れば補習が待っているため、やはり受験勉強に集中できない。そんなことにならないためにも、自分の見据える進路と高校のカリキュラムが合っているかを気にしてほしい。これは私立に限らず、公立でも確認したほうが良い。

3.に関して、「2年生から文系・理系に分かれます」というところが多いと思う。それを見て、そのまま鵜呑みにするのは良くない。「2年生から」というのは授業・カリキュラムが分かれる時期であって、文系・理系の選択はもっと早くに行う。学校によって様々だが、入学したての進路希望調査で希望を聞く所もある。「2年生から」というところのほとんどは2学期に文系・理系の希望届けを出すことになるが、高校入学から半年程度で決めなければならなくなる。先述の1.2.を考えつつ、自分の進路も考えつつ、この時期から文系・理系どちらにするかを考えていないと、決められないものだと思う。
 よくあるのは、「数学が苦手だから文系」という選択だが、これはお勧めしない。大学入試で考えた時、「文系・理系」の2通りではなく「国立文系・理系」「私立文系・理系」の4通りがあると考えてほしい。「数学が苦手だから文系」という人は4通りのうち「私立文系」の1つしか選べないことになる。私立文系選択自体が悪いわけではないが、このような消極的な進路選択での私立文系選択は後で後悔を生む可能性が高い。消極的選択に陥らないためにも、授業スピード、カリキュラムを確認しつつ、文理選択の時期が適切かを判断しながら高校選びをしたほうが良いだろう。

 進路指導をすると、自分でどこに行きたいかわからないという生徒が大半を占めるが、よくわからないのではなく、進路について真剣に考えておらず、心のどこかで「なんとかなる」という甘い考えを持っている場合が多い。今まで国が用意したレールの上を歩くだけの人生だったので無理も無いだろうが、今自分たちが、人生で初めて多くな選択を迫られていることを自覚したほうが良い。何も考えずに、運良く行く人もあるが、大抵は後で後悔する。そうならないために、一生懸命自分の将来を考えながら入試を乗り切ってもらいたい。高校入試ごとき、長い人生において大した選択ではないという人もいるだろう。確かに微々たる選択かもしれない。「AかBにするか」でほんの少しの差しかないかもしれない。しかし、その「わずかなズレ」は後々「大きなズレ」になる可能性を秘めていることを忘れないように。