小説「大地」パール・バック著 | さようならを言う前に

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『大地』(だいち、The Good Earth)は、
パール・S・バックの長編小説(1931年)です。

続編の『息子たち』(1932年)、
『分裂せる家』(1935年)とあわせて三部作
 "The House of Earth" を形成しています。


 
一般にこの三部作が『大地』として出版されて
 
います(そのときは『大地』が第1部となる)。
この作品でバックはノーベル文学賞を受賞しました。


小説の中に王龍の娘が2人出てきますが、
そのうちの1人は知的障害者となっているのですが、
実はパール・S・バックの娘も知的障害者で
あり、彼女に特殊教育を受けさせるための金銭
を手に入れることが動機のひとつとなって
この小説を書いたと言われているのです。

パール・バックは1892年アメリカのウェスト・
ヴァージニア州にあるヒルスボロという町で
生まれました。

父は宣教師で任地が中国であったことから、
パールは生後三か月の時に両親とともに中国へ
渡ったのです。

以後、9歳の時に短期間一家で帰国した時と
17歳になってカレッジに入学するために帰国する
までアメリカに行くことなく、もっぱら
中国で育ちました。

中国はパール・バックにとって自分自身の
一部となっていたのだろうと思われます。
だからこの中国を舞台にしたこの長篇小説が
書けたのです。


ストーリー性の豊かな作品で、長編であり
ながら
読み始めるとどんどんページが進んでしまう
ような本で、私はこの本は20歳くらいで初めて
読み深く感動しました。

その後20年後くらいに再読し、やっぱり感動しました。
そして今回3回目です。
かなりの長編ですからひと月近くかかりました。

物語のあらすじを簡単に書くと、第一部「大地」では
貧しい百姓であった主人公の王龍が、
当時町で栄えていた金持ちの黄家の奴隷で
あった阿蘭を妻として迎え、二人で力を合わせて
困難(飢饉や水害盗賊いろいろあった)を乗り
越えていき、やがてたくさんの土地を持つ有
力な地主になっていくというもの。

そして第二部「息子たち」、第三部「崩壊した家」
では資本家となった王龍の息子たち、
そして孫たちが大地を離れて頽廃的な生活を
送る様が描かれています。

物語のはじまりは清朝末期で、終わりはだいたい
1930年頃と思われます。
孫たちは当時流行のアメリカ留学をして、自分の
国とのあまりの違いに愕然とするのです。
 
町は綺麗だし人々はスマートで、特に女性の
地位と自由な振る舞いに驚かされるのでした。

この間の中国は国民政府の成立、国共合作、
五四運動、辛亥革命……など、政治的・社会的
動乱期で、思想風俗の変化も急激に起こった
時代でした。

作中では「纏足」や男女の「結婚観」の変化が
顕著に描かれています。
太陰暦から太陽暦に変わろうとしていたり、
前に畑だったところが絹織物の工場になって
いたり……と近代社会に変わっていく様子
が描かれています。

この小説はフィクションではありますが、王家の
三代にわたった歴史はそのまま中国の歴史
と言ってもいいと思います。





ついでに、映画「大地」(1937)も観ました。
映画は1代目の黄龍の妻が苦労の末に
死んで行くところまでで終わっています。

 
1937年の作品ですから、作画に私も生まれて
いないのですが、見ごたえのある素晴らしい
映画です。
 
 
 
 
 
 
 
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