「あら、またお会いしましたわね。
今日は随分と小さい荷物をたくさん持っていらっしゃるわね。
でも大層なものを抱えているような、仰々しさは相変わらずね。」
また出た。
どうりで、最近全力で走っても疲れないわけだ。
「その刹那的な感情が脳を剥く音を一つ一つ、大事にしまい込むために、
それだけの荷物をもっていらっしゃるんでしょ。」
「いいのかしら。
自ら音をつくることもできないのに、
そんなものばかり拾い集めて。」
そんなことはない。
貪欲に素材を集めて、自らの音をどんどん壊すことによって高めようと頑張っている。
「あなたの音があまりにも激しく、
一時的で愚かだから旋律にならないんじゃなくて？」
愚かなのは仕方がない。
でも一時的じゃないさ。
「その激しさ、邪魔なだけじゃない？」
認めてくれる人もいるさ。
「価値、価値ってうるさいけど、
結局、あなたの活動は自慰のようなもの。」
何で、オナニーなんだ？
「自らのために発し、
自らのために動くだけ。
誰に響くのかしら、その程度の音。」
反発、というよりも、絞り出すように言葉を放とうとしたが、
彼女はもう人ごみに紛れていた。