「クラッシャー上司にだけは、絶対になりたくない」
そう思っているのに、気づけば部下が次々と辞めていく。
あるいは、部下の顔色が明らかに曇っている。
そんな相談を、私はこれまで何度も受けてきました。
そんな相談をしてくれる方ですから全員全く「悪い人」ではありません。
むしろ真面目で、責任感が強く、部下の成長を本気で願っている人がほとんどです。
それなのに、なぜか「クラッシャー上司」と呼ばれる状態に陥ってしまう・・・
今日は、そんな方に向けて、「こうすれば大丈夫!」
という具体的な3つの処方箋をお伝えしてみたいと思います。
実際、クラッシャー上司と聞くと、
パワハラ気質で人の気持ちがわからない人物を想像しがちなのですが、
そういうわけでもなく、以下のような特性を持った方が多い印象です。
(もちろんそうでない方もいらっしゃるのですが・・・)
・高い基準を自分にも部下にも課している
・求める水準が高いからこそ、できない部下に苛立ちを隠せない
・部下の気持ちもわからなくはないけれど、言わないと仕事にならないと思っている
これらはすべて、ある意味責任感があるからこそであり、
明確な悪意のようなものはないでしょう。
だからこそ本人は「自分が悪い上司だ」という自覚を持ちにくく、
周囲から指摘されて初めて愕然とすることが多いのだと思います。
ただ、ここで一つ、はっきりお伝えしておきたいことがあります。
「こうあってほしい」というスタンダード、理想の姿を持っていること自体は、まったく悪いことではありません。
むしろ、それがあるからこそ部下を育てようという熱意が生まれます。
変える必要があるのはスタンダードそのものではなく、
そのスタンダードから生まれるエネルギーの「伝え方」です。
早速、その効果的な「伝え方」をみていきましょう。
処方箋1:スタンダードをスモールステップにする
高い基準を持つことは良いことだとお伝えしましたが
問題は、その基準を無意識に一足飛びに部下へ求めてしまうことです。
「本来できてほしい姿」と「今の部下ができる姿」の間に大きな段差があるまま指導すると、部下はその段差の高さに押しつぶされます。
ゴールとしてのスタンダードは下げなくて構いません。
そのかわり、そこに至る道のりを細かい階段に刻み直してください。
「まずはここまでできればOK」という小さな到達点を、
部下の今の位置から一段ずつ設計する。
理想は変えず、歩幅だけを変えるイメージです。
処方箋2:注意する回数を1/3~1/10に絞ってみる
気になった瞬間ごとに、思いついた指摘をすべて口にしていないでしょうか。
「気づいたことは伝えるべき」なのはその通りなのですが、
指摘の総量が多すぎると、部下にとっては「常に監視され、否定され続けている」という体験になります。
スタンダードが高く色々なところが気になる方は、具体的な目安として、
「注意したい」と感じた回数の1/3程度に絞って口に出す、というルールを持ってみてください。(自分が細かいタイプと感じる場合は最初は1/10程度に絞ってもいいかもしれません)
残りの2/3は、心の中で観察するにとどめます。
これは甘やかしではありません。
本当に伝えるべき1/3を選び抜くことで、指摘そのものの重みと効果が増すのです。
処方箋3:自分の中の隠れた「被害者性」から生まれる「攻撃性」に気づく
これは例えば、今自分がものすごく大変な状況におかれていたりすると
「自分がこんなに大変なのだから、このくらいやってもいいだろう」というような
被害者性から生まれる攻撃性のことを指しています。
若い頃に大変なパワハラ環境の中で生き残ってきた方だったりすると
無意識にそうした感覚が生まれてしまうことがあるのだそうです。
この被害者性から生まれる攻撃性が入ってしまうと
得てして効果的な指導にはなりにくいですから、
「自分にはそんな被害者意識はない」と感じたとしても、念のためゼロだと決めつけずに、
「もしかしたらあるかもしれない」という前提で自分を疑ってみてください。
この一呼吸が、指導の言葉を変えるかもしれません。
いかがでしたでしょうか。
改めて最後にお伝えしたいのは、
実は「クラッシャー上司になりたくない」と悩んでいる時点で、
すでに大丈夫だということです(笑)
悩み、振り返り、変わろうとする姿勢そのものが、
すでに部下との関係を守る力になっています。
ぜひ高いスタンダードを持ち続けること自体は、これからも大切にしてください。
そしてそこから生まれるエネルギーの出し方・使い方・届方を工夫して、
人材育成のプロフェッショナルになっていってきましょう。
人事コンサルタント
金森秀晃








