◆サッカー選手 怪我してから何日間で筋力が失われるのか? | 和久井秀俊オフィシャルブログ「海外サッカー選手のホンネ」Powered by Ameba

◆サッカー選手 怪我してから何日間で筋力が失われるのか?

和久井です。

ここまで傷害発生について考え、超回復について、そして前回最適なトレーニング時間について見てきました。

今回は、傷害発生後のトレーニングの重要性を見ていきたいと思います。

今回もサッカーに関連した傷害や病因などの研究を目的とした、FIFAが設立した医学評価研究センターの調査結果を参考にします。(要約)

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サッカーの場合、試合のための最善のトレーニング方法は、試合を行うことである。

シーズン中に長距離走を行うことは、選手をサッカー選手としてではなく長距離走選手としてトレーニングすることになる。

ウェイトリフティングを行っている時に疲労する(望みどおりの重さを持ち上げられない)理由は、マラソンを走っている時に疲労する理由とは異なる。サッカーにおける疲労は、短距離の全力疾走をくり返すことによりおこる脱水と、筋肉のグリコーゲンが枯渇することにより起こる。

通常のトレーニングができない場合、怪我をしている選手や未調整の選手に対してはクロストレーニングを行う。別のトレーニング法でパフォーマンスが向上する場合もある。例えば、怪我のせいでランニングはできない場合でも、サイクリングにより有酸素運動能力を鍛えることができる。脚の怪我のせいでランニングはできなくても、トレーニングで心血管系の運動能力を維持することができる。

クロストレーニングは一流選手にとっても怪我のリスクを上昇させずにトレーニング量を増加させる方法になりうるという報告もある。しかし、クロストレーニングはトレーニングを積んだ選手や一流選手向けの運動ではないという意見もある

クロストレーニングに関する研究の大部分は同じ結論に達している。それは、クロストレーニングにはある程度のトレーニング効果が認められるものの、効果の程度は特異的トレーニングを行った場合に達成できる程度より低いということである。

病気や怪我のためトレーニングをしないでいると、それまでに得られた適応はわずか10日で失われてしまう。

有酸素運動能力の低下は、その他のパフォーマンス能力(筋力、パワー、柔軟性など)の場合よりもずっと大きい。絶対安静がフィットネスレベルに及ぼす影響を検討した研究では、被験者5名を連続20日間臥床させたところ、最大酸素摂取量(VO2 max)が25%低下した(安静1日につき約1%低下)。この低下の主な原因は心機能の低下であった。

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約2年がかりで達成した運動能力が、わずか6ヵ月の脱トレーニングで失われたことがわかる。 筋持久力の低下は、トレーニングを完全に中断すると直ちに起こる。これは主に、筋肉のエネルギー産生能力が有酸素系・無酸素系ともに低下することと関係があるようである。筋肉をまったく動かせない場合は2週間以内に筋持久力が低下するが、筋肉を自由に動かせる場合は、最小量のトレーニング刺激によって筋持久力の著しい低下を予防できる。

脱トレーニング過程で失われた運動能力は、同じ期間のリトレーニングを行っても回復しない。トレーニングを12日間休んだ場合、リトレーニングを24日間行っても、有酸素性代謝に必要な諸酵素は75%しか回復しない。15日間の脱トレーニング後、15日間のリトレーニングを行うことが有酸素運動に必要な諸酵素に及ぼす影響を検討した研究では、VO2 maxと持久走のタイムから、15日間のリトレーニングではいずれの変数も以前のレベルには回復しないことが明らかになった。また、持久走のタイムは遅くなった。

回復速度は低下速度より遅いことから、リトレーニングの問題はフィットネスレベルによって違いがあるものではない。

トレーニングの日数を3分の1または3分の2減らし(つまり6日/週から4日または2日/週に減らす)、トレーニング強度と継続時間は維持(同じ強度で同じ時間だけ運動)した場合、持久力は維持することができる。

トレーニング強度を3分の1または3分の2低下させ、トレーニングの頻度と継続時間は維持(同じ頻度で同じ時間だけ運動)した場合、持久力は著しく低下する。

1回あたりの時間を3分の1または3分の2短縮し(つまり40分/回から26分または13分/回に短縮する)、トレーニングの頻度と強度は維持(同じ強度と頻度で運動)した場合も、持久力は維持することができる。

これらの結果から、トレーニング強度を維持すれば、頻度と継続時間を減らしても全体的な持久力にあまり影響はないことがわかる。しかし、トレーニング強度を低下させると、持久力は最も急速に低下する。したがって、常にシーズン中と同様のトレーニング強度で練習し続けることが重要である。

動かさないでいると筋肉は萎縮し、それにともない筋力とパワーが低下する。しかし、有酸
素運動能力と異なり、脱トレーニングによる神経筋運動能力の低下はそれほど急速に起こらな
い。トレーニングを減らした最初の数ヵ月間は、筋力とパワーの低下は比較的少ない。研究デー
タでは、3週間のトレーニングプログラムを行って休止した後の3週間には、筋力がまったく
低下しないことが認められた。

12週間のトレーニングプログラムで得られた筋力は、1年間トレーニングを休止しても、休止前の筋力の45%しか低下しなかった。

脱トレーニング過程は、無酸素運動能力(筋力、パワー、筋持久力)よりも有酸素運動能力に大きな影響を及ぼすようである。有酸素運動能力が低下する主な原因は、有酸素系のエネルギー産生能力が低下することである。筋力、パワー、筋持久力は、強度の高いトレーニングを1週間に1回行うことにより、いずれもある程度維持することができる。しかし、有酸素運動能力を維持するには、運動強度が高い(VO2 maxの85~100%)場合でも1週間に2日のトレーニングが必要である。

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上記を見ると、サッカーという特異的運動にはサッカーというトレーニングが最適であるということです。また前回、トレーニングの適切な時間について考え、休息やクロストレーニングの重要性についても書きましたが、クロストレーニングについては特にトレーニングを積んだ選手にはフィットネスの向上を目的には期待できないということです。

しかし病気や怪我をすると、得られていた適応はたった10日で失われ、さらに約2年がかりで達成した運動能力もわずか6ヵ月トレーニングから離れることでで失われるようです。

筋持久力の低下はトレーニングを完全に中断すると直ちに起こり、筋肉をまったく動かせない場合は2週間以内に筋持久力が低下します。

そしてトレーニングから離れた過程で失われた運動能力は、同じ期間のリトレーニングを行っても回復しません。この回復速度は、どのレベルの選手でも変わらないという調査結果のようですね。

3要素である回数、強度、継続時間のうち強度はフィットネスレベルに大きな影響を及ぼすことは前回お話しましたが、脱トレーニングにおいても強度を低下させた場合だけは持久力は著しく低下するようです。

つまり、トレーニング強度を低下させることにより神経筋運動能力や筋力はすぐに低下することはなく、直ちに低下するのは持久力であるということです。

このことから怪我をした選手は、傷害発生後10日間以上完全な休息を取らないこと。可能であれば強度の高いトレーニングを1週間に1回は継続し、筋力、パワー、筋持久力が維持するか、自由な運動が不可能な場合でも最小量の水泳やバイクなどクロストレーニングによって著しいフィットネス低下を予防することが大事だとということがわかります。


怪我をした選手もそうですが、選手がシーズン終了後に長い完全休養を取らずに、すぐにランニングを開始するのもこのためですね。

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