◆プロサッカー選手になるために適した身体とは?  | 和久井秀俊オフィシャルブログ「海外サッカー選手のホンネ」Powered by Ameba

◆プロサッカー選手になるために適した身体とは? 

和久井です。

これまで傷害の発生、その起因を様々な角度から見てきました。

今回は、その予防策の一つでもある選手のトレーニングについて考えていきたいと思います。

今回もサッカーに関連した傷害や病因などの研究を目的とした、FIFAが設立した医学評価研究センターの調査結果を参考にします。(要約)

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100メートル走の選手は1万メートル走の選手とは生理学的体質が非常に異なる。
両者の主な相違点は、体型や心血管系、筋線維の種類である。

短距離選手には主に速筋線維(Ⅱa型、Ⅱb型)がある。これらの型の線維の特徴は、収縮速度が速く、出力が大きく、非常に運動強度が高く、エネルギーを無酸素的に産生することである。このため、速筋線維は短距離走などの短時間の強度の強い活動を支えることができる。

1万メートル走選手の筋線維の特徴は上記の反対である。1万メートル走選手の筋肉は、主に遅筋線維(Ⅰ型)でできている。この筋線維は、収縮速度が遅く、出力が小さく、運動強度が低い場合に動員され、エネルギーを有酸素的に産生する。これらの特徴をもつことから、遅筋(Ⅰ型)線維は疲労抵抗性である。このため、Ⅰ型筋線維は強度が中等度で長時間の運動を、疲労せずに支えることができる。

ほとんどの筋肉はさまざまな種類の筋線維が混ざって構成されており、筋線維の種類の分布は個人によって異なる。各種の筋線維はある程度まで鍛えることができるが、相対的な筋線維の種類の組成は遺伝的に決定される特性である。したがって、運動能力やスポーツ能力も、ある程度まで遺伝的に予め決定される

トレーニング前の最初のフィットネスレベルも、反応の性質を決定しうる。このことは特に、怪我をした選手と未調整の選手に言えることである。長期間トレーニングを休止していた選手のフィットネスレベルは、現在スポーツを行っている選手より低下している。このため、未調整の状態で、または負傷後にトレーニングプログラムを開始した場合のフィットネス(持久力か、筋力か、パワーかなどを問わず)の向上は、調整済みの選手(こちらの方がフィットネスレベルが高いにもかかわらず)がその通常のプログラムを行う場合よりかなり速い。

同じトレーニングプログラムでは、フィットネスレベルの初期レベルが高いほど、相対的な向上の幅は小さくなる。すなわち、1人は調整済み、1人は未調整である2人が同じトレーニングプログラムを実行した場合、未調整の者の方が相対的に大幅な向上が認められる。向上する余地があるほど向上するからである。

まったく同じ運動を行っても反応は個人によって異なるように、トレーニングに対する個人の反応を決定する最も有力な因子は遺伝である。持久力トレーニングに対する反応がすぐれている人もいれば、より瞬発的な、パワーや筋力にすぐれた反応をする人もいる。

トレーニングに対する遺伝的反応は数多くの調査研究により調べられており、最大有酸素能力については、最大酸素摂取量の25~50%が遺伝によると結論

被験者群がまったく同じ持久力トレーニングプログラムを最長12ヵ月行った場合に認められた改善率は0~43%であった。「オリンピック選手になる最良の方法は、両親を選ぶ目を持つことである」と言われている。

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僕も驚きましたが、短距離選手のようなアスリートが持つ速筋(収縮速度が速く、出力が大きく、非常に運動強度が高く、エネルギーを無酸素的に産生)と長距離選手のようなアスリートが持つ遅筋(収縮速度が遅く、出力が小さく、運動強度が低い、エネルギーを有酸素的に産生)の筋線維の種類組成は、遺伝的に決定されるようですね。

サッカーはこの速筋と遅筋の両方を必要としますが、こうした運動能力やスポーツ能力も、ある程度まで遺伝的に決定されるようです。

「持久力トレーニングに対する反応がすぐれている人もいれば、より瞬発的な、パワーや筋力にすぐれた反応をする人もいる。」という調査結果を見てもわかるとおり、トレーニングの個別性は団体競技でも必要不可欠だとういうことがわかると思います。

しかしここでもトレーニングに対する個人の反応を決定する最も有力な因子は遺伝だという調査結果があるようです。

最大有酸素能力というのは、つまりは持久力。僕たち選手もクラブのプレシーズン(開幕前の準備期間)にトレッドミル(ランニングマシーン)にマスクを被って走りながら呼吸から直接酸素摂取量と二酸化炭素排出量を測定すると同時に、胸や腕に電極を着けて心電図を取ります。

20~40歳の一般の成人男性の最大酸素摂取量(VO2max)が35~45ml/kg/min、女性が30~40ml/kg/min程度。ちなみに僕の今年の開幕前の記録が75ml/kg/min。長距離トップランナーは約70~94ml/kg/minあるようです。

この持久力の25%~50%は遺伝で決定していて、12ヶ月の持久力トレーニングを行った時には全く効果がない選手もいれば、大きく改善しても43%であるということですね。

筋線維の種類やトレーニングによる個人の反応、さらにはスポーツ能力まで遺伝が大きく関係するようです。

こうした遺伝的要素が大きいという調査結果を見ると、トレーニングの重要性が疑問視されてしまうかもしれません。しかしサッカーという競技は上記の速筋と遅筋の両方、また他にも多種多様な体力要素が必要であり、それらを複合する能力、加えて技術、戦術、精神、頭脳などすべてが重要だという事からも、やはりトレーニングは欠かせないものであるといえます。

こうした調査から自分の特性を知った上で、団体競技であるサッカーでも個人のトレーニングを確立することが求められることがわかります。

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