「ジャン・クリストフ」の名訳者、豊島 与志雄 | 色と祈りと歌うこと - Hidetake Yamakawa (山川英毅)

色と祈りと歌うこと - Hidetake Yamakawa (山川英毅)

自分自身の中に豊かにある深いものに触れて、元気や安らぎを得るのに「色と遊ぶこと」や「自分で歌う」ことが欠かせないない気がしています。
色・音の作品や「発声法」などについての気づきもシェアしていきます。

9/11 (土) 16時(いつもより一時間遅いです)より、豊島 与志雄訳、ロマン・ロラン作の作曲家を主人公とした巨編「ジャン・クリストフ」の中の文章をご紹介します。懐かしのアニメ名曲、「キューティー・ハニー」や「魔女っ子メグ」、ドラマ「飛び出せ青春」の主題歌「太陽がくれた季節」(青い三角定規)なども歌います。ご期待ください!

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作曲家を主人公としたロマン・ロランの長編大作「ジャン・クリストフ」を私は15歳くらいのころに岩波文庫で読んだ。

 

難解な漢語の熟語もときおり含む、格調の高いその翻訳の日本語にも心奪われ、それは同じころにやはり若者の力技で何とか読み通したドストエフスキーやトリストイの一連の難解 (?!) なロシア文学翻訳日本語とは異なる体験だった。

 

それはもちろん翻訳でありながらもロマン・ロランの作品自体からくる光であることは間違いないのだろうと思っていたが、比較的最近になって、豊島 与志雄という訳者が、芥川、菊池寛、太宰治と同期の小説家であったことを知った。岩波文庫で豊島 与志雄は「レ・ミゼラブル」も訳している。

 

分かりやすく平易な日本語による新訳、原文に対して落ち度のない翻訳の妥当に対して、それでも「よい翻訳とは何か?」というテーマは深く、翻訳業の一端にも長年携わってきた私には、粗雑な「かくあるべし論」は安易に語れない。

それでも豊島 与志雄という人の才と魂の息遣いとしての文体が、これらの名作の翻訳文として残り、光を放ち続けていることは稀有な恵みと呼べる出来事なのだろう。

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ピアノの厳しい練習で叱責と受け、もうピアノは弾かないと引きこもり外を眺めた男児、クリストフが窓の外に見え、聞こえるライン河に共鳴して内からあふれる「音楽」を初めて体験する場面。

 

 

「緑色の満々たる河水は、ただ一つの思想のように一体をなして、波もたてず、ほとんど皺も寄せず、脂ぎって光ってる水形模様を見せながら、流れつづける。クリストフはもうそれを眼には見ない。

彼はその音をなおよく聞くために、眼をすっかり閉じている。たえざる水音は彼の心を満たし、彼に眩暈を与える。その覆いかぶさってくる悠久な夢に彼は吸い寄せされる。河水の騒々しい基調の上に、急調の律動 (リズム) が激しい愉悦を持って飛び出してくる。

そしてそれらの節奏 (リズム) のまにまに、棚に葡萄蔓がよじ上るように、種々の音楽が高まってくる。銀音の鍵盤から出る白銀の琶音 (アルペジオ)、悩ましいヴァイオリンの響き、円やかな音調のビロードのようなフルートの声。。。。

景色は消えてしまった。河は消え失せてしまった。柔らかなうすら明るい大気が漂っている。クリストフの心は感動のあまり震えている。 」

 

 

文体というのは表面的なスタイル論を越えて、その人の魂の呼吸としての律動など、内面や別次元への貫入・導引の高次な原理に関与しているように思える。

 

 

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私が大学の哲学科で「時間論」と「歌唱論」について、興味本位で勉強したアウグスティヌスには De Musica (音楽について) という著作があるが、この著作が 「時間を秩序づける原理」としての Musica として例示する内容の大半は詩の韻律に関するものだった。

ギリシャ、ヨーロッパ古代・中世、ルネサンス期を通じて、Musica は宇宙や目に見えない秩序と原理に関する現代にはない広範な内容に及んでいて、「声や楽器による音楽」はその一部に過ぎないらしい。

 

 

 

「言葉」や「文体」を考える上、De Musica 的な観点で、韻律やいわゆる心地よい言葉のリズムなどを、ちゃんと内側から見て落とし込める視点はないだろうか、などと思っています。。。

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「レッツ・ビギン!」のドラマ「飛び出せ青春」の主題歌「太陽がくれた季節」は、いずみたくさんの作曲。この曲、私には小学生当時の色んな空気や甘酸っぱさが封印されている。いずみたくさんは、伊東の「ハトやテーマ」の名ジングル、「ゲゲゲの鬼太郎」「ぼくらはみんな生きている」そして「見上げてごらん夜の星を」などの作者。

 

「キューティー・ハニー」や「魔女っ子メグ」の歌詞には当時の男児たちをどぎまぎさせる歌詞が満載!今歌ってても「どぎまぎ」(?!) ですが楽しんで歌いたいと思います!