前回までのあらすじ
神田直子(37)は中国出張からの帰国便で大事故に遭ってしまうが、
ひと月もの昏睡状態から奇跡の生還を果たすことが出来た。
目覚めた直子は事故の影響からなのか高度な読心術を手に入れる。
さらに、意に反する第二の能力で駅まで送迎してくれた山田さゆりを病院送りにしてしまった。
小さな二人の宇宙人が、あの事故で転落した直子の頭に入り込んだが、それは地球から数光年先にあるアラヤダ星の国王の娘であるテレサと下男のバモスであった。
雷神バァルナの恐るべき力に遊ばれていたバモスとテレサとアラヨ博士だったが、雷神がいなくなった後
アラヤダ国への反乱が起き、王城へ核爆弾が落とされてしまった。
反乱軍の追ってから逃げる為に地球へ向かった二人だったが、バモスは雷神の角(つの)の洗礼を受け入れ未知なる力を授かったのだ。
バモスの能力により山田さゆりの救出を果たし、友人との再会もした。
そして長いこと休んでいた会社へ久しぶりに出社したが様子がおかしい……
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そこに支社長の金大福が戻ってきた。
「お帰りー、直子さん!」
「ただいまー、金社長!」
金が何かを話そうとしているのを遮(さえぎ)って、直子は質問をした。
「この、ホワイトボードに書かれている人が今いる社員という事なのですか? つまり他の人達は、皆辞めたと……」そう聞くと同時に覚(さと)り能力も開いた。
しばらくの沈黙があって唾を飲み込んだ金社長は寂しそうな顔で見つめたきた。
「神田 直子/ようこそ!私の奇跡」
第27話 (さらなる災難)
扇子(せんす)をパタパタさせながらエアコンの冷房を強くして、近づいてきた金社長の表情は暗かったが直子の目の前に来ると顔色は突然変わった。
「あれれ?」(ナオコ、やっぱりいい女ね…… しかも、久しぶりに会って益々綺麗になってる……)
「うふふ……」心の中で褒められるのは本当の気持ちなんだなと、すごく嬉しかった直子は微笑みを浮かべ悪戯(いたずら)少女のように見つめてあげた。
その直子に心を見透かせられたと思った金社長は、50代半ばの男のくせに顔が赤くなってしまい恥ずかしくなったようで目をそらした。
「あー、暑いよー。エアコン、ちっとも効かないね! これ壊れたね」と既に最低にしてるのにリモコンをいじっている。
(なんだ! このおやじは? キモいなあ)とバモス。
(良い人なのよ)と心で返す。
「ナ、ナオコさんの言うとおりよ……ボードに無い人は辞めたあるね」
「ずいぶんと、辞めたのね。なんでなの?」直子は社長に対して友達口調、すなわちタメ口である。
「なんでか? 言いたくないあるよ」
「えっ?」
「…………」
「な、何なんですか?」
「会社つぶれたよ……、いや日本支社これから無くなるよ」
「どえ――――――――っ! 無くなるの?」
実際は有限公司台湾黄金電脳の本体は倒産していない。影響を受けているのは日本支社だけである。
それは中国製部品の不良により発火した日本メーカー向けの家電製品のクレームが発端だった。
初回対応の悪さから問題の無い客先へも飛び火して騒ぎ出した為、事は大きく広がってしまった。
多くの客先が同等部品を黄金電脳(外注先は問題の中国別会社)から他社への調達へと急速に切り替えを始めてしまったのだ。
普通ならそんなことにはならないのだが、全て初回対応がまずかった。
そうなってしまった今、その影響から支店の注文はさらに減っていくだろう。
今の日本支社はその後始末で、てんてこ舞い状態ということだった。
いずれ給与が払えなくなるだろうが台湾本社はその面倒を見てくれない。
しかしながらも台湾本社は中国に賠償請求の応援はしてくれている。ただ中国は相変わらずの、のらりくらりで、この先何ヶ月も拉致があかないだろうと思われる。
そして最後は尻をまくるとも考えられるのだ。
だから結局、支店はジリ貧になっていくだけだから、仕事が出来る人は他社へ次々と転職していった。
「困ったことよ、皆逃げ足が早いよ。残った人も必死に就職活動してるよ」
「ナオコさんも、辞めるか?」(この女と一発やりたかった)
「えっ?」(なんだって! 男って皆そうなの……)
「いずれ、ここ閉めるんでしょ?」
「本社は日本市場は残したいよ、誤解と分かれば時間はかかるけど客先は戻るよ。数人なら本社に給与交渉するあるよ」
「今まで通りに払えるの?」
「ナオコさんは例外だよ! と言いたいけどそれは無理よ。3割はカットになるね! それなら、ナオコさんと私と、あと事務の田中さんくらいは大丈夫よ!」
「あとの人は?」
「直ぐに辞めるある」(久しぶりに見たよ、おっぱい……)
「……」(目つきがいやらしいわね! 溜まってるのか?)
3割もカットか……、直子は夫の正志と二人で払っている住宅ペア・ローンが心配になった。
それから、しばらく客先毎(ごと)の細かい状況を、社長から聞いて定刻前には帰宅したのだ。
帰りの電車の中でボーッとしていても、テレサとバモスは話してくる。
(ナオコさん、元気ないね。どうしたあるよ)
(お願いだから、社長の話し方を真似しないでね)
(会社に残れても、あの社長は直子を狙ってるよ)
(そうね、やっぱり辞めるか……)
買い物を済ませ夕方6時に帰宅した直子だが、正志が家にいたのに驚いた。
「あれっ、もう帰ってたの?」
「直ちゃんも早いじゃんか」
「そうなのよ、今日は初日だから早く帰れたんだ」
と言いながらも、支店が無くなりそうなこと、仕事が続けられても給料が大幅カットになりそうなことを話さないといけないなと考えた。
28話へ続く
主な「登場人物」
神田直子:物語の主人公 37歳
神田正志:直子の夫
バモス:アラヤダ星人
テレサ:アラヤダ星人、アラヤダ国の王女
金大福:直子の勤務先の支社長
おまけのはなし
「沼田まほかる」さんに、嵌(はま)り中…
主婦で元経営者でお坊さんの女流作家。
前回紹介させていただいた、「痺(しび)れる」
短編集(全9話)は完全に読破しました。
全てのお話はこと細かく読んだ……。
解説までじっくり読んだのは人生初めてかも知れない。
面白いのだが、後味の悪いイヤミス(嫌なミステリー)なんです。
ちと、こういう小説は書けないなあー。
そして、続けて読み始めたのが、「ユリゴコロ」長編です。
映画にもなってますね。
大好きな女優さんの吉高由里子が主演です。
タイトルと由里子は偶然ですよね?
ユリコのココロ これが恐ろしいんですよ……
嫌な話です。
だけど……
人はこういうのが好きなんですね。
人の心の闇です。
人は刺激を求めるのです。
人の不幸は蜜の味と言いますよね。
実際に身の回りに絶対に起きて欲しくない、とんでもない話です。
読み終わったらGEOでDVD借りよ~っと
作者からのお礼と
小説を書いてて思うこと
コメントありがとうございます。元気と執筆パワーを頂けます!
今週は時間がたくさんあったのに小説を書くのに苦労しました。
話が前に進まないのですよ。
上記、まほかるさんの小説を読んで、これには、かなわないな、と打ちのめされたのかも……。
それと、そろそろ終わりに向けての展開を考えているからで、
でも何を書いたら良いのやら、どうやって幕引きするかなあ―と悩んでいる。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。