村井事件前日譚:ボツリヌス菌と塩素ガス・ダンスオペレッタ『死と転生』 | 村井秀夫刺殺事件の真相を追って

村井秀夫刺殺事件の真相を追って

村井秀夫は何故殺されたのか?徐裕行とは何者なのか?
オウム真理教や在日闇社会の謎を追跡します。
当時のマスコミ・警察・司法の問題点も検証していきます。
(2018年7月6日、麻原彰晃こと松本智津夫死刑囚らの死刑執行。特別企画実施中。)



●「この世はもはや救えない、これからは武力でいく」

波野村の強制捜査で上祐と早川、青山たちが警察に追われる中、村井が逃走した理由は、重大な任務を麻原から命じられていたためである。村井は、波野村に塩素ガス製造の工場を建設する計画に関わっていた。

麻原「私がびっくりしたのはねぇ、第二次世界大戦の死傷者だよ。どれくらい死んでると思うか」

村井「兵隊が2000万です」

麻原「一般はどれくらいだっけ」

村井「一般入れたらこの10倍になるんじゃないかと、そんなもんじゃないでしょうか」

麻原「一般の人は相当死んでるからね」

村井「相当死んでますねぇ…」

麻原「あれは一時的なカルマの精算だよな、そう思わないか、人間の…」

村井「んー」

麻原「そういうことが今の私の研究課題なんだよ」

麻原は長年教団の武装化構想を暖めていた。90年の衆議院選挙で落選した麻原は弟子たちに「今回の衆議院議員選挙は、私のマハーヤーナにおけるテストケースであった。その結果、今の世の中、マハーヤーナでは救済できないことが分かったので、これからはヴァジラヤーナでいく」と宣言。

武装化路線を進めるため麻原は細菌兵器の大量生産を企てた。中川智正からボツリヌス菌の毒は人への殺傷効果が高いと聞き、ボツリヌス菌の培養が進められた。教団内の隠語は「ボッチャン」。「夏目漱石」とも呼ばれた。風船を利用し、アメリカまで飛ばして散布する構想もあったという。

村井は、山梨県の上九一色村の教団施設内でボツリヌス菌の大量培養プラント設置に取り組んだ。



4月には沖縄県石垣島に信者を集め、「神言秘密金剛菩薩大予言セミナー」を開催した。
当時地球に接近していたとされるオースチン彗星が大災害を引き起こす、という趣旨の説法をする予ものだった。実はこのセミナーの目的は、日本本土にボツリヌス菌を散布させ、その前に信者を非難させる目的で計画されたものであった。しかし、ボツリヌス菌の生成や散布装置が完成しておらず、避難も意味がなくなったため、急遽セミナーを打ち切った。



オウムにとって幸運なことに、この攻撃は気付かれずに終わった。一方、石垣島の集会で多額の布施が麻原の懐に入り、選挙で逼迫していた財政を立て直す結果となった。セミナーには約1,000人の参加者が集まり、出家信者が300名から800名に急増したといわれる。



6月に村井は新実らと製造したボツリヌス菌の効果を実験する目的で川に汚物を放流した。ところが山形県警に発見され、連行されるトラブルが起きた。教団内は大騒ぎになった。しかし押収されたボツリヌス菌には毒性が無く、雑菌程度のものしか検出されなかった。村井たちはすぐに釈放された。警察が教団を摘発することは無かった。

この検挙を機にボツリヌス菌の製造は中止された。



村井は警察に検挙される失態を反省し、集中的な瞑想修行をはじめた。闘争心の煩悩・カルマを落とす修行だった。3日後、村井はマハームドラーといわれる高い修行ステージを成就した、と麻原に認められた。

1990年8月4日。マハームドラー成就式典。村井は正悟師へ昇進した。ステージの違いを理由に森脇佳子と協議離婚した。森は村井の離婚をポジティブに受け止め、「最高の人間関係を実現した」と感じていたという。



強制捜査のほとぼりが冷めると、麻原はホスゲンや塩素ガスの製造計画を指示した。
村井はこの研究の責任者を勤めた。作業の拠点は富士山総本部の第一サティアン。夏には生成施設を建設し、塩素ガス製造のための機器を仕入れた。村井は装置の作成を担当し、同年9月に第一サティアンにて本格的な製造装置の作成が始まった。実験は一階の倉庫やその前の敷地で行う予定だった。

しかし、波野村の強制捜査がある情報が入ると、村井は施設を撤去し、化学・生物兵器 開発作業の痕跡をすべて消し去った。


1991年。麻原はこの年を「救済元年」と定め、社会の警戒を逸らす目的でメディアを利用した宣伝を展開した。


(ドラム叩きに熱心な麻原彰晃、そばで見守る村井秀夫)

まず、3月から4月にかけて、教団の舞踏団によるダンスオペレッタ『死と転生』公演を、大阪、福岡、横浜、名古屋、東京の一般会場で実施した。これは、人間が死んで生まれ変わるまでの霊的世界の様子を音楽や舞踏によって表現した公演で、信者のみならず多くの一般人を観客として招いた。
 また、8月から9月にかけては、同様にして、宇宙の創生プロセスを表現したダンスオペレッタ『創世記』を、東京、大阪、神奈川、京都、福岡、愛知の一般会場で開催した。



歌のリハーサルのときも麻原のそばに村井の姿があった。上機嫌になると麻原は

麻原「マンジュシュリー、どの曲がいい?」

とリクエストを聞いてきた時もあった。

村井もこの創作活動に関わり、「貪りの苦しみ」「味覚の歌」を披露した。
余談だが、村井の甲高い歌声を評価する者も少なくないという。漫画家の故ねこじる氏は村井秀夫の歌を愛聴していた。

ねこじる「故村井氏の本”巨聖逝く”についているカセットに”味覚の歌”という曲が入っている。諸星大二郎の”無面目”に通じる世界が歌われていてとても気持ちがいい。百回ぐらい聞いていたらだんなに頭をひっぱたらかれた」

(57:49より味覚の歌)


●オウム真理教布教アニメ
同年オウム真理教はアニメ・漫画ファン層への布教を目的として、「MAT(マンガ・アニメ・チーム)」というスタジオを設立した。

アニメには麻原彰晃の他に、村井秀夫・青山吉伸・上祐史浩・新実智光・石井久子・飯田エリ子・松本知子・遠藤誠一・中川智正等も登場する。

この作品における麻原彰晃は、単なる教団の代表としてだけでは無く、信者及び教団を幸福へと導く救世主かつ超能力者的側面が強い。

オウムアニメ 超越世界1~10


オウム真理教 布教アニメ 「宿命通」前編


オウム真理教 布教アニメ 「宿命通」後編