佐藤春夫 「更生記」 | 群馬県・桐生 仁盛堂漢方薬局の一日(中医学基礎)

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毎日新しい発見あり、毎日が勉強です。
お客様の相談を中心に記録していきたいとかんがえています。

皮膚疾患(アトピー性皮膚炎)・不妊症相談・精神疾患など
のご相談を得意としています。

 

 美しい妖艶な女性が主人公です。

 二人の男性を狂人にし、精神病院に

送り、その罪責の念によって精神疾患

(小説中ではヒステリー)となっています。

 

 医学生大場はある深夜、帰宅途中、

自殺を試みようとしているその女性を

線路際に発見してしまう。

 大場は姉と二人で暮らしている。

その女性を自宅に同行し詳しく話を聞

こうとするが、死のうとする理由、

また家庭のことも一切話さない、

警察に行くことも拒絶する。

 

 その晩大場姉弟は心配で一睡も

できず翌日大学の精神科助教授の

猪俣に相談をもちかけこの猪俣が

興味を示し精神分析をもって更生

させていくという物語です。

 

 この猪俣に関して非常な変わり者で

有名、「目の鋭い怖いような明晰な

頭脳の持ち主」といっています。

作中の登場人物に対しても、自分の

発言や行動に対しても分析をする

ような人物。すべてのことが偶然では

済まされない人間。

 

 登場人物の複雑な関係で最初読んだ時はよく

呑み込めなくて二度読んでしまいました。

登場人物も精神が尋常ではない「狂気」を秘めて

いるような人物が多い。

 

 大場の「精神分析とはいったいどんなことを

するんでしょう。」という質問に対し、

「つまり糸巻の上で変に結ばれてしまった糸を

解きほぐすようなわけなのだよ。」

 

 猪俣が考える解決方法を箇条書にして 

みました。

①:患者は深い秘密を持っていて自分の打ち

   明けることを意識的に隠している。

②:口を開けば包み隠している問題に触れなけ

    ればならないのでどうしても無口になる。

③:隠しきっている境涯をどうかして彼女自身

   の口から語らせなければならない。

④:患者のことを同情できるような、自分の過去

   の不幸を患者に話して聞かせることが出来る。

   人間が必要。

   (大場の姉が大変重要な役割を担う)

 

  精神分析による、女性のヒステリーの原因探し

 は難渋を極めるが、最後には女性は過去の

 自分のいきさつを語るが解決には至らない。

 

 精神病院に入院することになる二人の男性との

関係は、興味を持たれた方は読んでください。

 

 非常に精神疲労を感じる小説でした。