2015年にスタートした関菜々巳と松井珠己のライバル関係 | 福永英樹ブログ

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 2022年の世界選手権で第5位へ躍進し、今年のパリ五輪予選でも世界ランク首位のトルコや同3位のブラジルを苦戦させるなど、眞鍋JAPANは少しずつですが確実に世界のトップに近づいてきたなと私は感じています。ただ攻撃の主軸であるサイド陣を見ると、東京五輪に出場した黒後(埼玉上尾)が退きその代わりに井上(姫路)が加わったくらいで、決して大きな戦力アップがあったわけではありません。大きく変わったのは眞鍋監督が目指す速くて多彩な攻撃を具現化できるセッターが登場したことであり、それは2015年からスタートした関菜々巳(当時高1)と松井珠己(当時高3)の「切磋琢磨してきたライバル関係」がここに来て華開いたからに他なりません。奇しくも二人は同じ千葉県出身です。


【2015年】

 千葉県立柏井高校へ入学して間もない関が早くもU17を対象にしたユース世界選手権に出場できたのは、本人の実力もさることながら、同校3年生のアタッカー工藤 中元の存在がものを言ったようです。2人はV1デンソーや日本代表で活躍した有力サイドだったからです。この大会(第9位)には関と同期で後にVリーグや日本代表でも切磋琢磨する林 中川 上坂も参戦しましたが、高1ということもあり中川以外は皆リザーブでした。スタメンセッターも現在久光で二枚替えとしてプレーしている高2の万代でしたが、大会後半には関が代わってスタメンになっていますので、当時から才能の片鱗を示していたようです。

 一方当時富山第一高校3年だった松井は春高にこそ出場したものの、U20が対象だった世界ジュニア選手権のメンバー(東レにいた白井がセッター)から漏れており、国際大会デビューはなりませんでした。

 

【2016年】

 U19を対象にしたアジアジュニア選手権(第2位)で、関は初めて松井とチームメイトになります。しかし日本女子体育大学へ進学して頭角を現した松井が主将兼スタメンセッターに抜擢され、関は終始リザーブセッターでの参戦を余儀なくされます。ただU23を対象にしたアジアカップ(第4位)では白井がスタメンセッターとなり、松井はリザーブに甘んじました。


【2017年】

 工藤 中元が卒業して大幅な戦力ダウンとなった柏井高校で主将になった関は、ミドル攻撃に活路を見いだし見事に春高出場を果たしますが、この年はジュニアの国際試合には出場しませんでした。一方大学2年なった松井は、U20を対象にした世界ジュニア選手権(第3位)で主将兼スタメンセッターとして大活躍しました。


【2018年】

 関が東レに入社して社会人デビューした年で、Vリーグ開幕からいきなりスタメンセッターとして出場し、チームを準優勝へ導き新人賞とベスト6も獲得しました。正に飛躍の年でした

。一方松井は大学生を中心としたメンバーで臨んだアジア東地区選手権で、スタメンセッターとしてチームを優勝に導いています。この大会でリザーブセッターだったのは、昨季Vリーグのベスト6の澤田でした。


【2019年】

 Vリーグでの関の活躍ぶりを見た当時の中田久美日本代表監督は、関をシニア日本代表へ初召集し、早速モントルーバレーマスターズでスタメン起用(ベストセッター受賞)しました。しかしワールドカップでトスを上げたのは佐藤美弥と宮下遥で、関は松井と共にアジア選手権のメンバーに選ばれます。ただ対戦国の韓国(キムヨンギョン参戦) タイはシニアのベストメンバーを揃えてきましたので、U23で構成した日本代表は劣勢を予想されていました。しかし初戦からスタメンセッターに起用された関が石川 山田を上手に使い、準決勝の韓国戦で第2セットを奪います。ところが長期戦のせいか第3セット途中から関が息切れし、後を引き継いだ松井が第4セットまでトスを上げます。そしてセットカウント3対1で逆転勝ちし、決勝のタイ戦も松井で勝利しました。


【2021年】

 中田監督がJTの籾井を重用してスタメンセッターに抜擢したことにより、関はVNLでリザーブセッターとして登録されるだけに留まり、目標だった東京五輪出場はかないませんでした。また松井は登録すらされませんでした。


【2022年】

 眞鍋JAPANとなり関と松井がどんどん国際試合に出場しますが、世界選手権(第5位)で関がスタメンセッターとして大活躍したものの、松井は残念ながら籾井との競争に負けて出場を逃しました。ただ籾井はトススピードが遅く、ほとんど活躍できませんでした。


【2023年】

 パリ五輪予選を控え引き続き関がスタメンセッターとしてトスを上げますが、松井はまたもやベテラン柴田とリザーブセッター争いをすることになります。VNLでは柴田がアメリカ戦で活躍したり、トルコ戦では松井が活躍するなどなかなか勝負がつきません。しかしパリ五輪予選直前の合宿や練習試合で松井が安定した精度の高いトスを上げたようで、彼女は五輪よりも厳しい戦いが予想される五輪予選のメンバーに見事に選ばれました。


 関も松井もミドルの速攻 移動攻撃とバックローへのトスが得意という共通点があり、それは明らかに東京五輪で足りなかった部分でした。性格的には関が生真面目で技術に対する執念が凄まじいのに対し、松井は数々の落選にもめげることなく自らを信じ続けてきた前向きさと、コツコツ積み重ねる努力家ぶりが際立つ印象です。彼女は今単身で言葉の通じないブラジルでプレーしています。

 素晴らしい相性であり、2015年からの二人の切磋琢磨ぶりを振り返っても選ばれた運命のようなものも感じます。また来年のパリ五輪に向けても眞鍋さんは、セッターに関しては合宿から関と松井だけでスタートすると私は予想しています。