温泉ホテルボストン | ☆ 占い師・画家…人間のようなもの ☆

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画家・伝説の魔術師☆ 相馬 英樹 の愉快な毎日♪

北見でのお仕事帰り、足寄を通って帯広に入ります。


足寄の山道や農道では7回もエゾシカを撥ねそうになりました。


その他にもキタキツネが2回、タヌキが1回飛び出してきましたが、撥ねることなく無事に帯広に到着しました。


今夜の宿は温泉ホテルボストンです。


もっと安価で泊まれる小綺麗なホテルもあったのですが、何だか私好みの心霊スポットっぽくて良いな…と思い、楽天トラベルで予約してみました。


夜8時にロビーに到着。


フロントにはパンチパーマをかけた笹野高○さんのような雰囲気の老人(※父親っぽいとかそう言う訳ではなく、パンチパーマなので、以後は略してパパと記す)が何やら電話対応をしている様です。


『え?来れない?』


『いえいえ何時になってもお待ちしてますよ。』


『場所わからないの?』



…どうやら宿泊予約している人が道に迷って電話をかけてきた様です。


『大橋渡ったらガソリンスタンドあるでしょ?』



肩で受話器を耳に押し付けて相手と話しながら、私に気を使ってルームキーと予約票を渡してくれます。


しかし料金も支払っておらず、勝手に部屋に行って良いのかどうか解らず、なにより面白そうなので、客とパパとの会話を観察してみることにします。


『ガソリンスタンドの向かいに警察署あるでしょ?』


『え〜?ないって?、いやいやいやいや、そんなことないわ。』


『じゃあ違うところに居るんだわ。今どこにいるの?なに?迷ったのかい?いやいや』


『日石?日石たくさんあるしなぁ〜あぁ、いやぁ、困ったもんだな。』


『音更の方からこうやってまっすぐ来たら38号線から南に、南わからない?あ〜いやいや…』


『何?芽室?芽室から向かってきたのかい。いやいやいやいや…』


そこで私のお節介が発動します。


私『グーグルマップ使えるかとか、近くに何か目立つ建物がないかとか…』


パパ(以後、パと記す)『グーグルマップって何?って?訊いてるから無理みたいだよ。』



そんなやりとりが暫し続きます。


クセの強い宿、所謂ディープスポット的な宿の大好きな私ですが…


まさかのチェックインからこのヤバさ、いいですね〜😆


宿に着いてから40分、やっとチェックイン出来ました。



やっと私が要件を話す時間がやってまいりました。


私『温泉大浴場は何時まで入れますか?』


パ『ああ、領収書いるのね?相馬さんでいい?』



私『領収書はお願いしますが、温泉大浴場は…』


パ『ああ、この予約票の名前でね?』


??


私『あ、はい宜しくお願いします。ところで、温泉…』


パ『コンビニはね、横の河川敷を下って一本目の国道を左に行くとローソン見えて来るから。』


???…!!


私『あ、ありがとうございます。では行ってきます。』😊


部屋に荷物を置いて、っと。


あまりの出来事にニコニコしながら真っ暗な河川敷を明かりのある方へ歩いて行きます。


あぁ、ちゃんとありましたね〜、ローソン。


う〜んと、何買うんだっけ?



取り敢えず赤いきつねと焼きそばUFOでも買って…っと。


自分の足下も見えない漆黒の宿への帰り路。


日中から真夏日でしたが、夜風がぬるくて何だか気持ちいいです💕


温泉大浴場が11時迄で、明日は清掃があるので朝風呂に入りたければ5時から7時までには入り終わって欲しいんだよなぁ…


了解しました。



まずは部屋に戻ってカップ麺を…を?


…ポットがない…


お茶はあるんだよな?


どこかにあるに違いありません。


くまなく探しますが見当たりません。



フロントに降ります。


フロントでパが寝ています。


『あの〜』


一向に起きそうにありません。


こうなったら最後の手段です。


肩トントン。



パ『あぁ、あのね、さっきから思ってたんだけどお兄さん、お姉さんみたいだね。名前見てね、変だなぁ〜って思った。』


私『あ、あぁ、それはいいんですが、ところで湯沸かしポットあります?』


当然、予想通り謎の間が空きます。


…通じてるかなぁ…😓


突然、パチンと指を鳴らして立ち上がり


さっきまでのパパとは別人みたいに、スタスタとホテルの玄関横の物置に入って行きます。


…こんなところに湯沸かしポットがあるのだろうか?…


心配です。


が、次の瞬間、ニヤニヤしながらやってきたパパの手にあるのは、可愛らしい桃色スケルトンのティファールと、コンセントのコードの付いた台座がしっかりとありました。


あぁ〜良かった。


ホッとして部屋に戻ろうとすると、パパ『あぁ、ちょっといい水入れてあげるから』と


一度私に手渡した桃色スケルトンを奪い、


何やらデカいウォーターサーバーに取り付けるような青色スケルトンのボトルを持ち上げ、


『これ、水素水。』


果たしてカップラーメンにも水素水が必須なのかどうかは解りませんが、せいいっぱいの好意なのだと思い、『ありがとうございます。』と言っておきます。


満タンに満たされたポットと台座を持って3階まで階段を昇ります。


なぜならエレベーターが4階で停まっていて、呼んでから一階に到着するまで、結構な時間を要することが経験上予測できたからです。



カップ麺の前に風呂に行ってみよう。



ルームキーを渡そうと番台に行くと、つい今しがた桃色スケルトンに青色スケルトンの水素水を注いでくれた筈のパパが寝ています。


『あの〜』


…完全に寝ています。



こうなったら秘密兵器、肩トントンです。


パパ『あぁ、いや眠くて眠くて…』



ルームキーを渡して脱衣場に行くと、ビックリした老人が釘付けになって固まっています。


しかし私が浴衣を脱ぐと安心したように笑って


『お兄さん、お姉さんみたいな身体つきだな。』


さっきもどこかで聞いたし、北見の仕事場でも小学生くらいの女の子に『おばさん声が低いですね。』と言われたよ。


私『いやいや、よく言われるんですよね。』


老『いやぁキレイだ。脚もな、綺麗な脚しとるしな、綺麗なケツしとる。』


私『いやいや、ありがとうございます。』


老『今日はいい風呂だわ、ゆっくりしてきな。』


私『はい、ありがとうございます。』


ともかく、お風呂です。


洗い場で身体を洗っている昔やくざ風のお爺さんが固まって何か言いたげですが、何が言いたいのか解るので構わずやくざ風とは逆方向の洗い場へ向かいます。


おっ!


あやうくコケそうになりましたが、まだ見ているヤクザ風に悟られない程度の軽いスウィングで済んでよかったです。


濃厚な硫黄の香りのする源泉掛け流しのモール泉が、浴槽からしきりに床へと溢れ出ており、床がツルンツルンで油断大敵です。


頭と身体を軽く洗い


髪の毛が湯に着かないように束ねて浴槽に浸かります。


うわぁ、熱っ。


44〜45℃か、それ以上はありそうです。


先にリサーチしたところ、この温泉は加水も加温もしていない天然温泉で、ボイラーもないのだそうです。


ヌルっとした肌触りですぐに肌がスベスベになります。


5分ほど浸かってそろそろ出ようか迷っていると、ヤクザ風も少し離れたところから浴槽に入ろうとして脚を着水したと同時に『おわっ!』と言って驚き、十秒ほど中腰で浸かり、負傷兵のように浴室から出て行きました。


結局はそれから更に5分浸かり、ヤクザ風が着替えて脱衣場からいなくなった頃に脱衣場に行きました。


身体を乾かして頭の水気をよく拭き、浴衣を着て番台へ行くと、パパは寝ておらず、満面の笑みでルームキーを渡してくれます。



『いいお湯でした、ありがとうございます。』



一旦、エレベーターに向かって歩き出しましたが、どうしても気になることがあったので番台に戻り訊いてみました。


私『ここのホテルって、なんでボストンっていう名前なんですか?』


パ『以前はね、ヒルトンだったの、でも有名ホテルとおんなじだとお客さん間違ってきちゃったらマズいから、似たような別の名前にしたんだよ。』


私『良くわかりました。この名前だと、こんな素晴らしい温泉があるホテルだなんて思う人少ないと思うので…知る人ぞ知る秘湯ですね。』


パ『あぁ、自然とね、なっちゃってるかもわかんないね。』


私『今日は色々とありがとうございました。楽しかったです。おやすみなさい。』


パ『あ〜どうもね、ゆっくり休んでいってね。』



気がつくと私は部屋で伸び過ぎた焼きそばUFOをビールで流し込みながら、心から感謝していました。


この世界はこんなに温かくて、こんなに素敵で、こんな世界に生まれてきて本当に良かったなぁ〜



お父さん、お母さん、妻さん、息子さん、弟さん、その他の全てのみなさん、本当に本当にありがとう!


ではでは、おやすみなさい。