釣具を眺めていると…
父親が健在だった頃、たまに釣りに連れて行かれたことがあったが、釣りたくないのに何故か釣れてしまう魚を触った際、手に付いた匂いが取れず気分を害した思い出…
釣り針が指を貫通して流血した思い出…
などなど、時間軸を逆回転させると、楽しくなかった思い出ばかりが蘇るのだ。
成人して色々な社会経験を積み重ねるうちに気まぐれで能天気な性格となった僕は…
昨年の6月になって突然何を思ったか、実家の物置にあったものの中から渓流竿と仕掛け一式を積み込んで支笏湖でカヌーツーリングに出かけたのである。
餌も持たずに出かけたのだが、たまたまウグイの産卵期に出くわした為、ウグイの産卵場所に群がる大量の魚影に揉まれて弱って浮いてきた小さな魚を餌にウグイを釣り上げ、釣り上げたウグイを細切れにしたものを餌に大量のアメマスを釣り上げ、そのアメマスを塩焼きにしてみたらなかなか美味かったことを機に、僕はちょっと真面目に釣りをやり始めようと決心した。
父の遺していった釣具は、どれも20年から40年前のものであるため相当古く、川釣り海釣り船釣りと、全てのジャンルに於いて、かなりの品数である。
なので僕は古い釣具しか使ったことがない。
幾ら道具が古いからといって魚が釣れないこともなく、比較対象となる現代の釣具を使用したことがない為、不便を感じることもないままに、現在に至る。
更に古い道具には、現代のものにはないシンプルな機能美、そしてその道具が経てきた年月を感じさせる傷や汚れによる使用感が醸し出す独特のオーラがある。
デカくて重い、オリムピックの『レッツゴー550』

この鉄人28号の如くプレーンでレトロな重厚感のあるシルエットに加え…
一切の工夫や文学的センスを感じさせない、ストレートかつ意味不明なネーミング。
このリールはダイワ製4.5メートルのグラスロッドとの組み合わせで40センチオーバーのカワガレイをはじめ尺物を数枚釣り上げた実績を持つ。
ストレートかつ意味不明なネーミングといえば、『レッツゴー550』に比べると格段とサイズダウンして軽くなってしまうが、ダイワのオールド『パンチ1000』も負けては居ない。

このリールでは石狩湾新港東埠頭で数十匹に及ぶ小型の黒ソイを巻き上げたが、20センチに満たない小魚でも、重くてなかなか回らないシブいリールであり、結構気に入っている。
魚の重みに対して消耗する体力の比率が割に合わないリールといえば、このベイトリール、オールドダイワが誇る世界最小リール『ミリオネアGS-1000』である。

このリールでは昨年晩秋に漁川支流のラルマナイ川上流で第一投目にして20センチのウグイを釣り上げたが、その時の指の疲れは半端なく、2投目でバックラッシュさせてしまい、修復不可能な糸絡みに至らせて半泣きになりながら納竿した思い出がある。
湖沼河川といった淡水域でのベイトロッドとの組み合わせで『ミリオネアGS-1000』より使いやすいのが、このオリムピック製スピンキャストリール『オリムペット1100RLⅡ』である。

このリールではまだ一度も魚をヒットさせては居ないが、気を抜くと直ぐに糸絡みを起こしてしまう『ミリオネアGS-1000』などの両軸リールに比べてトラブルが少なく、フローティングミノーなどの軽量ルアーを長距離飛ばせるので、今後の釣果に期待している。
この様に古い道具と言うのは美しいものである。
本日の極めつけは、富士製のタイコリール。
いつごろのものなのかは解らないが、結構古そうである。
僕は未だ使ったことはないが、ネットで色々と調べてみると様々なカスタムを施された当該品が、ヘチ釣り愛好家の間では現役で使用されているようである。

この飾り気のない野暮なシルエット。
まだ実釣で使用していないが、いつか飄々とちゃんちゃんこを羽織り、このリールに似合う竿に括り付けて下駄を鳴らしながら、防波堤の上を闊歩してみたいリールである。
今日紹介したオールドリールは、僕の手持ちのリールのほんの一部に過ぎず、他にもまだまだ沢山のリアルヴィンテージを所有しているので、今後も小出しに紹介していきたいと思っている。
おわり