ゆっくり休みさえすれば、すぐに完治しそうなものですが
先日、父が亡くなり、お陰様で…無事、初七日も終わり、猛暑の中、色々と名義を差し替えたり保険の手続きなどをする為に必要な書類を集めに実家⇔北広島市の病院⇔郵便局⇔区役所⇔自宅などを行ったり来たりで忙しく、骨折した息子の通院や、その他細々とした所要によって、日々、体を酷使していました。
そんな昨日の夜、台所から聴こえる
『うわっ!うゎうゎうゎうゎうわあああ~っ!』
…という妻の奇声に、驚いて駆け寄ると…
ガスコンロの上に載せてあった、空のフライパンの中から
一匹の大きなアリが、物凄くあわてた様子で
(テケテケテケテケテケッ)と、テフロンのクリフを駆け上り、
今まさに、ガスコンロの裏側へと、転落して行くシーンの 真っ最中でした。
恐らく、フライパンの真上にある換気扇から室内に侵入し、
そのまま、フライパンの上に着地したものと 思われます。
私は、冷静に ガスコンロの元栓を締めてゴムホースを抜き
ガスコンロを除けると、咄嗟に用意した小ビンを、アリの 頭の先へ近付け、
実に華麗な手捌きで、スマートに 保護することに 成功したのです。
ビニールラップに爪楊枝で通気孔を開け、ビンに被せます。

調べてみると、クロオオアリと並ぶ 日本最大のアリとして自然界に君臨する『ムネアカオオアリ』という種の、女王アリだということが 解りました。
ムネアカオオアリの女王は、5~6月の夕方に結婚飛行→交尾のあと翅を落とし、巣となる効率のいい場所を探し、小さな穴を掘って産卵するのだ、ということです。
時期や雰囲気から、恐らく結婚飛行→交尾を終えて翅を落とし、巣の場所探しをしていて、我が家の換気扇に迷い込んで来たものと思われます。
住宅街や土の中に巣を作らず、森林の朽木の中などに巣を作り、少しずつ、その規模を拡大して行くのだという事です。
また、一つの巣が出来てから次の新女王が誕生するまでは、7年の歳月を要し、女王の寿命は10年~20年であり、女王の寿命と共に巣は壊滅するのだそうです。
という事は、この女王の体内には、一つの新たなる王国の歴史の幕開けが、収められていると言うことなのですね。

ウィキペディアによると、女王アリの体長は(16~17ミリ)とありますが
測定してみると、実に20ミリもある 大型の固体です。
こんな虫でも、じっと眺めていると、表情や仕草の 一つ一つが可愛くて
自然と心が和みます。

最初は、保護されて慌てている様でしたが、ストレスを与えない様
ビンが揺れたり、敏感に振動を拾わないよう柔らかいじゅうたんの上に横にして
小さな声で話しかけます。
~心配しなくても大丈夫だよ。
体調が良くなったら、山へ連れて行ってあげるから
ゆっくり、安心して休んでいいからね。~

砂糖を水で溶いたものを爪楊枝の先につけ、ビニールラップに開けた通気孔から差し入れると、用心深く口を近付け、やがて楊枝の先に付着した砂糖水を舐め始めます。

糖蜜の雫を通気孔にくっ付けてやると、口をモグモグしながら美味しそうに飲み干します。
明日、どこか朽木の多そうな森へ女王を連れて行ってやろうと思っています。