AKB48G☆マジすか学園☆乃木坂46☆欅坂46☆櫻坂46☆日向坂46☆好きな 「かつブログ☆」 -108ページ目

マジすか学園F☆#3ー3☆


【エリアK】


ディーヴァの隊員およそ800人が集まった
港で、
甲高いクラクションが鳴り渡った。

その音のする方向では、
大勢のディーヴァの隊員たちが、何かに追われるように、右往左往し始めている。

見ると、
巨大な4トントラックが、滅茶苦茶に蛇行しながら、前田が拘束されている場所へと近づいてきていた。どうにかこうにか、轢かれないよう、ディーヴァの隊員たちは、精一杯、逃げまどうなか─

そのトラックは、みるみるうちに、前田の目前にまで迫り、直前で、大きくハンドルを切ったかとおもうと、急ブレーキの音とともに、ようやく急停車をした。

4トントラックの
助手席からは、慌てふためいた声が飛んだ。

「ちょっ!おばちゃん!あぶねーじゃねーか!運転は任せろって言ってただろ!」

助手席で、ちょっとしたジェットコースター気分を味わった
緑色のお馴染みのジャージの少女。チームホルモンのリーダーであるヲタが、激しく非難しているのは、『おばちゃん』と呼ばれ、運転席で、大きなハンドルを握りしめている、ヒョウ柄の特攻服を身にまとった美形の少女だった。


「誰がオバチャンやねん!あんたら迷子の五人、拾ってやったっちゅうのに、その恩も忘れて、そんなん言うんやったら、あんただけ、海ん中、つき落としたろか?」


禁句(タブー)を口にしたヲタに、キレそうになっている関西弁の少女は、
“なにわ”のトラブルメーカー、大阪NMB-S(ナンバーズ)の山田ナナだった。
“新宿戦争”では、山本サヤカと共に、前田を救うため、百人近くのアンダーガールズとわたりあった盟友のひとりである。



「だあああっ!うっせー!わかったよ!感謝してるよ!それより、後ろの『荷物』は大丈夫なのか?」


「“なにわ”のヤンキー、ナメてもろたら、困るわ」



車中の二人が、言い合いをしている間に、
態勢を整えたディーヴァの隊員たちは、トラックの周囲をぐるりと取り囲む。そして、鉄パイプや木刀で、運転席側と助手席側両方のドアを叩きつけ始めた。

「おらぁ!そこから、出てこいや!」「何モンや!?お前ら」

ディーヴァが業を煮やした
そのとき、トラックの後部コンテナが、内側から、激しく、蹴り開けられた。

と同時に、色とりどりの特攻服を身につけたたくさんの少女たちが、続々と、飛び降り始める。取り囲むディーヴァの隊員たちへ向かって─。

騒然。

一斉に、乱闘が始まる。

トラックの周りは、一気に、ヒートアップした。

見れば、
大阪NMB-S(ナンバーズ)の
ヒョウ柄の特攻服だけではなく、関西でも、名の知れたチームの特攻服やヤンキー高校の制服を身に付けた少女たちが、ディーヴァに闘いを挑んでいる。
これまでに、
チームを潰された者、仲間や友人が傷つけられた者、
皆、なんらかの恨みをディーヴァに抱く者たちだった。

そのなかには、チームホルモンの面々もしっかりと、いた。

ほぼ同じタイミングで、

助手席にいたヲタは、ドアにしがみつくディーヴァもろとも扉を蹴り開けた。吹き飛ぶディーヴァを尻目に、そのまま、トラックのコンテナの上に、のぼっていく。
ヲタが、高い場所から、ディーヴァたちを、見下ろすと。


「てめーら、よく聞け!わたしが、マジ女の最強チーム、チームホルモン、リーダーのヲタだ!マジ女の“てっぺん”取る前に、てめーら、ぶっ潰して、大阪の“てっぺん”とったんでんがなまんがなやで!」

と、郷に入っては郷に従え、関西弁っぽいが、訳のわからない方言を飛ばすヲタ。

「あいつ、絶対、関西人バカにしとんな」「そうやな…シバくか」「あの鼻の頭にバンソーコくっつけたジャージのやつからぶっ飛ばすで!」

ヲタに対し、
激しい怒りがこみ上げてくるディーヴァの隊員たち。

「アンタ!何、火に油注いでんねん!」

運転席を離れた
山田ナナが、見上げるかたちで、呆れていた。


「みんなー!大暴れすんぞー!シェキナベイベー!」

ヲタが、気楽に、叫んでいる。


「ほんなら!ウチも行くで!」

山田ナナも、覚悟を決める。

「おりゃああああああああ!」



「うおおおおおおおおおおああああ!」


ディーヴァvs反ディーヴァ。
大乱闘の始まりだった。

いままで、前田の周りにいたディーヴァたちも、ほとんど、争いの中心に加わっていた。残りは、不意をつき、前田が拳で打ち倒した。かろうじて、窮地は免れた。

「ヲタ…、みんな…」

そして、一息つく
前田の傍に、白いセーラー服を着た少女がいるのに、気づく。


「アヤメ?」


「お礼なら、あとで、関西のひとたちに言うんだニャ」


前田敦子が、あの恐怖に支配された【エリア】に侵入し、ディーヴァに闘いを挑んでいるという“まさか”の噂が、瞬く間に、大阪中に拡がり、それを耳にした、関西における反ディーヴァと目されるヤンキーたちが、この機に乗じて、ディーヴァに反旗を翻すため、NMB-S(ナンバーズ)の山田ナナを中心に、声を掛け合い、集合を果たし、前田救出にやってきたということだった。


「学ランたち(あの四人)は、無事、確保できたよ」


「アヤメ…、大丈夫なのか?ディーヴァにやられた傷は…」


「何言ってるんだか…、いつまでも、前田ウサギ、ひとりで突っ走らせるわけにいかないニャ」

ふらつく前田に、
手を貸すアヤメ。


「アヤメ…、わたしは、ひとつ、わかったことがあるんだ…」


「ん?」


「わたしは、この戦争を終わらせるために、ここに、来た…、でも、たぶん、この戦争を終わらせるのは、“わたし”なんかじゃ、無理なのかもしれないって…」


「何言ってるニャ?」


だけど、

と、前田は、一区切りし、戸惑うアヤメに、言った。

「──“わたしたち”なら、やれる!」

わたしたち、皆で。

前田は、晴々とした表情で、

「たとえ、“わたし”ひとりじゃ無理だったとしても─」


「前田…」

「わたしは“ひとり”じゃない─、そう、気づかせてくれたのは、仲間たち(あいつら)だった。ずっと、ふさぎこんでたわたしに、勇気をくれた。そして、また、昔のように、笑えるようになった…、だから─、わたしは、闘うよ。みんなと一緒に、最期まで」


「そうか…
(お前がいなきゃ、絶対に、ここまで来れなかっただろう…、関西のみんなが団結することもなかったはず…、お前はやっぱり、ジャンヌダルクだ…、わたしたちを、仲間たちを、勝利へと導く…、
立ち止まってしまったこともあっただろう…、あの日から、ずっと、悩み、迷い、苦しみ、傷つきながら、それでも、けっして逃げずに、前へと進み…、そうやって、ようやく、『あの事件』─みなみのことを、乗り越えることが出来たんだな…)」

涙を堪えるアヤメ。

前田が、騒動の中心、コンテナの上にいる
ヲタのほうを見やる。

「(頼んだぞ…)」

ヲタも、乱闘の最中、前田のその視線に気づいた。気持ちが伝わる。コンテナの上で、ヲタは、次から次とのぼってくるディーヴァの隊員を、殴り、蹴り飛ばし、つき落としていく。

「よっしゃ!これで、おれたち、大阪まで、来た甲斐があったってもんだぜ!こっちは全部まかせとけ!だから、お前は、とっとと、敵の親玉ぶっ飛ばしてきやがれ!」
(無事に東京、帰ったら…、今度は、ジャンケンじゃなく…、本気で、喧嘩─タイマン─だからな…)

チームホルモンの他のメンバーも、必死で、闘っていた。

そんな
仲間たちの気持ちをしっかりと受け止め、前田は、ディーヴァ総帥のいる船に、向かおうとする。本当の決着をつけるために。

アヤメは、
そんな前田に、『目を閉じろ』と囁くと、


「戦場での教訓。その8、無用な争いは避けるべし」

という言葉とともに、何かを地面に投げつけた。
白煙が、辺りをもくもくと、満たしていく。


数秒後。

前田とアヤメふたりの姿は、その場から、忽然と消えてしまっていた。





マジすか学園F☆#3ー2☆

カツ…コツ…と、地下への階段を下りていく足音。
鉄製の階段、そして、コンクリートの壁に、
一定のリズムを刻み、歩を進めるフード付パーカーを纏った少女の表情は、影になって、よくわからない。唯一、視認できる小さな口元がわずかに開く。

「……すまないな、ジュリナ」


ネズミは、先程までのジュリナとの通話を思い返す。前田がいなくなり、目の前で、仲間たちが次々と傷つき倒れていき、焦るジュリナ。


『矢場久根のアジトはどこだ?市川ミオリは、どこにいる?』


「ジュリナ…、矢場久根には手を出すなと言っただろう。奴等とは表向き、休戦協定が結ばれてる。それに…」


『それに?』


「いまのお前じゃ、市川には勝てない…、いや、『マジ女』の中の誰にもな…」


『あのときは、邪魔が入っただけだ!今度こそは勝つ!』


「眩しいな…」


『えっ?』


「お前は、眩しすぎるんだよ…」

通話が途切れる。

大島優子。前田敦子。
ネズミにとっては、皆─。

輝く(ヒカル)者たち。

自分は、それに対し、ただの影でしかなかった。

(あっしには…、“ここ”がお似合いっス)

慣れた様子で、暗い
地下室へと入っていくネズミ。

ここは、矢場久根の秘密のアジトだった。

「なんだ、お前か…、何しに来やがった?」

矢場久根の生徒が、数人、たむろしている。そのうちの頭に、黄色いターバンを巻いたひとりが、ネズミに声をかけてきたのだった。

「市川は…、いないみたいっスねぇ」


「うちの総長、気安く、呼び捨てにしてんじゃねーぞ!コラ!いくら、裏で繋がってるっつっても、礼儀ってものが…」


「雑魚が!」


ネズミの拳が、ターバンの少女に、次の言葉を言わせなかった。


「てめーッ!裏の協定、破るつもりか?」


その場に、緊張が走る。矢場久根の生徒が、いまにも、襲いかかりそうになっていた。


「前田のいない『マジ女』に、“意味”なんて、ないんスよ」


「はぁ?何言ってんだ!」


容赦なく、殴りかかってくる生徒たちを、ひらりとかわし続けるネズミ。
けっして、頭脳だけではなかった。

(それに、“あいつ”が…
きっと、無茶をする…)


そのとき。


「こうなることは…わかってたよ」


地獄の底から響くような声が、入口の方から聞こえた。


「わかって…いたんだよ、ネズミ」

そこに、現れたのは、
矢場久根商業新総長、市川ミオリ。悪魔のような笑みをたたえ、


「協定を破棄するつもりか…、せっかく、お前には、マジ女の“てっぺん”の座を用意してやったというのに…、残念だ」

情報と引き換えのお膳立てだった。

「物心がついた頃っスかねぇ…」

ネズミが、話を続ける。

「国会議員を父親に持つと…、欲しいものは、何でも簡単に、手に入ったっス…、『欲しい』とひとこと言えば、どんなものでも、すべて、与えられてきた…」

視線は、市川を捉えたまま。

「小遣いだって、使い放題…、だけど…、簡単に手に入った、それらのものに…、それほど、『価値』は無かったんスよね…」


「何が言いたい?」


「そんな、あっしが、初めて、自分のちからを以て、どうしても、欲しいものが、出来たんスよ。“あいつ”と一緒に、どうしても欲しいものが」


「それは?」


「それが、マジ女の“てっぺん”だ!」

噛んでいたガムを、吐き出し、

「“てっぺん”は、与えられて、なるものじゃない…、“てっぺん”を倒し、“てっぺん”に認められてなるものだ…、だから…」


ネズミが、市川に向かって、走る。

「前田のいない『マジ女』は…、あっしが守るっス!」

マジすか学園F☆#3ー1☆

………


『まだまだ、甘口だな』

『どうしたら…、激辛になれる…?』

『おめぇは、“痛み”を感じないんだってな』

『………』

『“痛み”を知らないうちは、強くはなれない…、自分が受ける“痛み”、相手に与える“痛み”、相手が受ける“痛み”、それらを知ったとき、そのとき…、初めて、激辛を超えることが、出来るのかも…な』




【エリアB】では、優勢に見えていたゲキカラだったが、
本人も気づかない内に、一瞬、意識を失っていたようだった。

波動をまとった拳の威力は、一発で、脳を激しく揺さぶる一撃を有する。

波動を自由自在に操ることのできる者と、初めて、波動に触れた者。

全身に凶器と防具を装備した者と、何も身に付けていない者との闘いにも似ている。

長期戦となると、自在に波動を操ることの出来ないゲキカラにとって、不利というほかなかった。


「なんのしがらみもなく、お前と、殴り合いしたかったわ」

勝利を確信するディーヴァ将軍─弐将福本アイナ。

上から命令されたり、時間稼ぎをしたりするのではなく。真っ直ぐに。


「しがらみ…?そんなものが…、闘う理由か…」

「なんでもいいんや。お前を、【エリアK】(前田のとこ)に行かせんかったらな」


ふらつくゲキカラに、アイナは、波動を纏った拳を大きくふりかぶり、叩きつけた。


その拳に、無謀にも自らの拳をぶつけていくゲキカラ。

「ぐぁっ!」

ダメージを受けたのは、ゲキカラのほうだけだった。コンクリートの壁をただ殴っているようにゲキカラには感じた。

「やめとけ…、拳、痛めるだけや」


「やめ…ない、」


「そんなら…、拳もろとも、つぶさせてもらうわ」

またしても、アイナは、結果のわかりきった拳を振るう。

ふたつの拳が激突する。

今度は、
骨の砕ける音がした。


「ぐ…、あああああああっ!」


(優子さん…)

両膝をつき、
右手を掴み、
苦痛に歪む表情をみせるゲキカラ。もちろん、右拳の骨が砕けたのはゲキカラのほうだった。


(これが、『痛み』…)


初めての激痛に、意識も遠のいていく。


(『痛いか?痛いだろ?それが、“痛み”ってやつだ。その苦痛を受け止め、乗り越えたとしても、おめぇの過去が、清算されていくわけじゃねぇ。そんなに簡単じゃねぇんだ…、それでも、おめぇは、生きていかなきゃいけねぇ、負けちゃダメなんだ…、それが、贖罪ってやつだ』)


優子の声がする。


(『お前が、お前であるために…、お前であり続けるために…
ゲキカラ…、絶対、負けんじゃねぇぞ!』)


頭の中で、
優子の檄が飛ぶ。


どんなときでも、どんなに苦しくても、優子の声が、自分を奮い立たせてくれた。絶対に負けられない。


遠くで、汽笛が鳴る。

「時間稼ぎは、ここまでやな」


その言葉を聞いて、ゲキカラが笑う。

「フフ…、ハハハハハハ…ハハハハハハハハハハハハハハハハ…」


「何が、おかしいんや?」


「こっちも…、十分、時間稼ぎができた…、将軍のなかでも…、最強と呼ばれるお前を…、ここに、とどめておくことが…できた」


「負け惜しみやろ!それに、いまから、行ったら、まだ間に合う!」


「行かせない…」

眼光鋭く、ゲキカラが、立ち上がる。


「わたしは…、負けられ…ない、負けたら…、怒られる…」


「これで、引導わたしたるわ!」


アイナの波動を纏ったトドメの一撃が、半死半生のゲキカラを襲う。ゲキカラも、左の拳を突き出す。

一瞬の後。

ふたたび、
絶叫が、響き渡った。

「ぐぅああああああああああああっ!」


拳の砕けた音と共に。

しかし、拳が砕けたのは、
今度は、
仕掛けたアイナのほうだった。


「な…、なん…で…?」

同じだった。
先程までと。拳と拳がぶつかり合い、波動をまとった自分の拳が、なぜ、逆に、砕けたのか。


「波動…か…?」

アイナが問う。


「“マジ”…だよ」

涼しげな表情で、ゲキカラが、ぽつりと答えた。

その後、二人は、傷を負ったまま、さらに、殴りあいを続けた。果てしなく─。

果てしなく。

そして─

最後に、その場に立っていたのは、傷だらけの血にまみれた、いまにも倒れそうな、ゲキカラただひとりだけだった。



「優子さん…、終わったよ…、フフ…、また、怒られる…かな?……、でも…、こんな…、わたしでも…、超えること…、出来たかな…?」


ゲキカラが、顔を上げる。


「いままでの…、わたしを─」


見上げる空には、
優子の笑顔のように眩しい太陽があった。