ここまでが今年6月のエントリーです。改めて読んでみると、大人って無責任ですね。
【2013年6月10日の投稿】
一連の長期金利の上昇に端を発したエントリーもこれが最後。最後に具体例を見てみます。3,500万円・35年返済として、1年前に変動金利0.875%で借入して2年目の今に1.6%の固定金利に変更する場合(ケース①)と、今から2年後、返済4年目から0.2%、その1年後にさらに0.2%金利が上がる場合(ケース②)とで比較してみます。以下の通りです。
変動金利で緩やかに金利した場合と固定金利に変更し急激に金利を上昇させた場合では、たった5年の返済で返済額は約56万円違います。なにより、5年間で56万円多く返済しているケース①の残高は約20万円も多く残っています。ケース②では返済額が少ないのはもちろん「元金充当額が多く、残高が早く減ります。金利は残高にかかるのですから、残高が減れば金利上昇の影響は小さくなります。変動金利で借りるとは「残高を減らして金利上昇対策をする」ということです。
特に気にしていただきたいのは、1.6%に変更した直後、2年目(13回目)の返済における元金と利息です。以下の通りとなります。
固定金利に変更すると返済額が11,774円上昇しますが、利息の上昇額はそれをはるかに超える20,627円です。一方、なにより大切な元金返済が8,852円減ります。たくさん返済するのに借入返済が進まない状態です。固定に変更するのは自由ですが、この確認を怠った金利変更は残念ながら精度が高いとはいえないでしょう。
私が愛用しているカシオのローン電卓(BF-750)の「年賦償還」機能を使えば瞬時にこの数字が出てくるので、これらを提示せずに固定金利に誘導するファイナンシャルプランナーがいたとすれば(現実はそういう人ばかり...)今一度自分の仕事の仕方を考え直してはいかがでしょうか?あくまで私の仕事観ですが、最低限の仕事の質としてこの数字を提示した上でお客様に判断していただくべきだと思っています。
変動金利は金利上昇に対して無防備なのではなく、「月々の返済で元金をより多く返済している」「返済額が少ないから繰上返済の原資が多く作れる」など、金利上昇に対して前向きな金利タイプといえます。一方、長期固定は利息を払って金利上昇対策をしています。ケース②と1年前に全期間固定2.3%で借りた場合(ケース③)とで比較をすれば、それは明らかです。
147.7万円多く返している方が残高が72.8万円も多く残り、返済額の差と残高の差の合計がたった5年で220万円にもなります。5年後にこれを覆す短期金利の上昇があるかどうかは各個人で判断してください。とはいえ、客観的には超急上昇といえる水準でしょう。「急激な変化=ハイリスク」なのですから、それを前提に住宅ローンを考えることこそリスクの高い選択といえます。リスクの高い選択をしようが、しまいがそれは借主の自由です。
この表を見れば、変動金利で借りた人は右往左往することなく今は昼寝でもしていればよく、「将来金利上昇が怖いから固定金利にします」というのは、「自分が恐れている将来の金利上昇を今すぐ自ら現実化する」という、「リスクを考えてリスクの高い選択をする」という明らかに矛盾した、大変ギャンブル性の高い行動といえます。
なにより、変動金利で借入している方が金利を変更するというよりも、以前全期間固定で借りた人がどうにかするべきといえるのではないでしょうか?3年前、5年前に全期間固定で借り入れた人達は、3年後、5年後の2013年には金利が上がっていると予測していたからこそ全期間固定を選択したはずです。
現実はそうではありませんでしたが、別に予測が外れたからといって変化に柔軟に対応すればいいだけです。まだまだ先は長いのでいくらでも挽回できますから、借り換えていただければ済む話です。なぜメディアもファイナンシャルプランナーもこういった情報提供は一切しないのでしょうか?やっていることが明らかに逆ですが、なにを画策しているのでしょうか。
「変動金利は金利が上がる」と金利にだけ過剰反応して、長期金利と短期金利の区別もしなければ、「利息」「元金」「残高」も欠落した論調は、考えることを放棄=思考停止しています。残高や元金は消費者からは見えにくいものです。ですから、それを確認してもらうためにファイナンシャルプランナーなどの専門家がいて、それを知ってもらうためにメディアが存在しているはずですが、このことをキチンと理解しようとも、理解してもらおうともしないならば黙っている方が賢明です。
今回3つに分けて取り上げた記事は、今までもこのブログで問題視していたことです。他の記事も併せてお読みいただければ住宅ローン金利について理解が深まり、メディアとそこに登場するファイナンシャルプランナーの意見を鵜呑みにしてはいけないことがおわかりいただけるのではないでしょうか。特に2013年5月の長期金利上昇については正しい情報を目にすることがなかったので、かえって住宅ローンの正しい情報を考えるいい機会になったと思います。
なお、世間のファイナンシャルプランナーの皆さん、このブログには私が作った図や表がたくさん出てきますが、正しい情報を伝えるためならば、最低限のマナーを守った上でぜひご参考にしてください。