「誓いの簪」天羽 恵 読了 | pyonpyon ブログ

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松任谷由実。

 

「誓いの簪」天羽恵 徳間書店
 
9月12日に読了
 
 
佐賀町の長屋に住む、天涯孤独の少女おりん
 
「もう二度と自分のせいで人が死ぬところを見たくない」
心の奥に深い悲しみを秘めながらも明るく生きている
まだ幼さも残る娘といっていい年ごろだが「提げ重箱」を生業にしている
「提げ重」とも呼ばれる仕事は、昼間に限り町人も様々な荷を担ぎ物売りとして出入りができる武家屋敷に重箱に饅頭や煎餅を詰めて売り歩く物売り
しかし、提げ重の女が実際に売っているのは菓子ではない
所謂、商売女なのだ
手に職もない娘が手っ取り早くお金を稼ぐにはこんな仕事しかない
綿摘、提げ重どちらも同じような職種で、昼の商売として長屋の女房たちも子供が寺子屋に行っているちょっとの間にこのしごとをする者も多かった
知っても知らぬふり、が江戸の民の処世術
おりんも長屋の住民から咎められたり白い眼で見られることもなく暮らしていた
 
同じ長屋に住む根っからの世話好きで
女ながら簪職人見習いのお園は、そんなおりんの事を気にかけ
隣に住む浪人の佐伯ともどもお園の家でお園の父と4人で食事を共にしている
まるで疑似家族のようなこの時間がおりんにとって大切な心のよりどころとなっていた
 
そんな日常が何者かがお園に矢を放ったことで一変する
 
中盤から、お園の過去、おりんの生い立ち、佐伯の正体などが分かって来ると
それまでの下町人情話から一気に空気が変わる
 
おりんも佐伯も抗えないものを受け入れれ生きて来た人生だったが、お園の愛情に触れたことで、”何かを見出す”
 
ラスト、史実を上手く入れ込んで決着をつけたのがいい
 
おりんの夢を神様は聞き届けてくれたのだろうか