
「かりんとう侍」 中島要 双葉社
一昨年だったかな?図書館から借りたのだけど予約した新刊が次から次へと順番が来てしまって
面白かったのにちょっとだけ読んで返却した本
ちょっと余裕が出来たので借り直しました
私の好きな作家、中島要の10年くらい前の作品です
主人公の日下雄征(たけゆき)は旗本(賄頭)の次男
家は年の離れた長兄が継いでおり、母が末っ子の雄征の事を甘やかして育てたのもあり、少々のんびりした性格
母は、死の間際でも長兄の嫁にくれぐれも雄征をよろしく、と頼んだほど(笑)
その後は義姉の志津が母代わりの様に世話を焼いてくれている気ままな部屋住み生活
似たような境遇の友人は、「剣の腕も大してなく、頭脳明晰でもないが人に好かれる容姿の良さだけが取り柄で柳町の人気芸者「鶴次」に惚れられてるとは、どういうことだ!」とやっかまれている
そう、人気芸者の鶴次は雄征にぞっこんなのだ
酒は飲まず「かりんとう」が大好物の雄征
いつもの居酒屋で友人と過ごしていた時に悪酔いした戯作者の鈍亭魯文に絡まれ、そこから付き合いが始まる
戯作者と名乗っているものの、今の生業は瓦版を書いている魯文
魯文と付き合ううちに、武士とは、町人とは、と改めて考えるようになる雄征
黒船来航により大きく世の中が変わろうとしている
この先、武士はどうなって行くのか不安を抱く雄征
そんな中、大地震が江戸の町を襲う
雄征の真っ直ぐでありながら、ちょっと抜けてる可愛げがいい
大地震が起き、金にものを言わせて鶴次を妾にしようとする大店の主がどうなったのか?と地震がおさまって直ぐに店を見に行く雄征
途中で「どうか、死んでいてくれ」と思わず願ってみたり、それを後悔したり、とこんなところが憎めない
武家の家は長兄が継ぎその他の男兄弟達は自身で身を立てる何かを見つけねば暮らしていけないというのも理不尽なこと
少し世間を知った雄征が最後に自身のこれからを決める事が出来てなにより良かった
文庫にもなっています