
「ないたカラス」中島要 光文社
昨年知ってからお気に入りになった作家、中島要
好きな作家たちの新刊発売の合間を縫って中島要の昔の作品を少しずつ読んでいます
この本は2014年の発売
主人公は、幼馴染の弥吉と三太
親との関係が上手くいかなくなり家を飛び出した弥吉、28歳になり久しぶりに江戸に舞戻り再会したのは余程の苦労をしていたのか20歳は上に見えるほど老け込み物乞いのようになっていた幼馴染の三太
職も住処も無い2人は、三太を偽坊主にしたて小塚原の荒れた寺に2人で住み込む
目端の利く弥吉は寺男として働いている風を装い色々と小細工をした結果
「築安寺の和尚(三太)は千里眼」という評判が立ち、相談に訪れる者もちらほらと出てきた
相談と言っても、夫が浮気をしているに違いないから和尚さん千里眼で見てくれ、だったり
好きな娘と一緒になりたい男が泣きついてきたりなどだが、寺を中心にそれぞれの人間関係が繋がりドタバタはするが面白い展開
このままこの生活が続くのも楽しそうだが、何せ偽坊主の有り難いお説教は弥吉の小細工の上に成り立っている
そう長くも続けられまい…
2人のラストは、作者らしい終わり方
最後の章、後日噺の章は数年後の話なのだが、これもまた文章が面白い
女性作家とは思えないさばけたユーモア溢れる表現が多くて素直に楽しめる作品だった
寺で雇った飯炊きの婆さんのキャラクターがいい!
心が優しすぎる三太が同情心から「どうか雇ってくれ」と弥吉に頼み込んでまでして飯炊きに雇った婆さんだったが「くえない婆さん」で、煮炊きを面倒くさがり豆腐や漬物しか用意しない
仕事をサボってばかりの厚かましい婆さん
婆さんの手抜き料理を
「騙りの寺にも関わらずどこの寺よりも精進料理だ」と例える作者、私の好みに合う😜