「商い同心千客万来事件帖」
(商い同心お調べ帖 宝の山)
「商い同心人情そろばん御用帖」
梶よう子
商い同心シリーズ
1巻2巻とはなっていないのですが(1巻は「宝の山お調べ帖」から「千客万来事件帖」に名称が変更されています)巻数の表示はありません
「千客万来事件帖」が1巻になるので登場人物の生い立ちや紹介、人間関係などの説明がありつつ事件が起こります
主人公澤本神人は、定町廻り同心の父の後を継いだ後に隠密同心を拝命したが、新しい北町奉行の「顔が濃い、隠密には向かない」の一言で、諸色調掛方同心へお役替えに
定町廻り同心とは違い小者は持たず、代わりに懇意にしている町名主からの寄越された(お手当ては町名主が支払う)で食いしん坊の庄太を連れている
この庄太のキャラクターが良く、算術に秀でていたり、薬草に詳しかったり(亡くした妹が病気になった時に懸命に学んだ)なかなかの知恵者
神人は妹の忘れ形見である多代を男手一つで育てており、未だ未婚のまま
よくある定町廻り同心が活躍する事件帖とは異なり諸色調掛方同心という役目は江戸市中の諸々の値段を見張り、高値をつけていたり阿漕な商売をしている店に指導をする役割のため取り扱う事件も変わっていて読んでいて楽しい
1巻での大きな話の一つは亡き父が追っていた贋金について神人が引き継ぐ形になる「幾世餅」ともう一つは多代が自身の出生について知ることとなる話
【目次】
■「雪花菜(きらず)」――鼈甲の櫛を高く買わされた旦那の思いとは?
■「犬走り」贈答の壺には何が隠されている?
■「宝の山」浅草の紙漉き屋はなぜ儲かるのか?
■「鶴と亀」将軍の鶴を食べさせたのは誰だ?
■「富士見酒」店で突然死んだ男の正体とは?
■「幾世餅」父親が解決できなかった贋金騒動の真相は?
■「煙に巻く」人気煙草屋の兄弟の隠しごととは?
2巻目「人情そろばん御用帖」
登場人物はほぼ同じですが、1巻で知り合った「ももんじ屋」の女将だったお勢、お役替えで同役となった厳つい顔と体に似合わず物事に細かい茂田井憲吉、元南町奉行の跡部良弼が加わる
目次
「女易者」
「母子像」
「御種人参」
「口入れ屋」
「落とし穴」
「五方大損」
2巻も各章読み応えのある内容で、浅草で人気の元に花魁の女易者の話から始まり、からくり鏡の話や偽高麗人参を作る話、善人なのか狡猾なのか?口入屋の主の話、聞き慣れない穴蔵職人の話、女は怖いねな話など
次が待ち遠しいシリーズものです