
「にべ屋往来記」村木嵐 文藝春秋
初めての作家です
「まいまいつぶろ」の作者です。まいまいつぶろは図書館での順番が回ってきそうもないので、昨年発売されたこちらを先に読むことに
面白い、そして私の好きな展開の話
東海道から身延山道に入った宿場、万沢宿で小さな旅籠にべ屋を営む母子、お内儀(おかみ)さんと呼ばれる蕗、一人息子の三十四になる智吉
江戸に幕府が置かれ九年が過ぎた
この二人、町人ではない
詳しく書くと面白みが半減どころじゃないくらいに面白みがなくなるので書かない
読んでいく内に徐々にわかってくる母子と鞆之助(今は亡き番頭)との本当の姿
時代は、ちょうど大河ドラマ「どうする家康」で家康が時代の波に揉まれていた頃
七つの話からなるのだが、それぞれの話はにべ屋の母子、番頭や女中の何れかに繋がる客が訪れる事から始まる
にべ屋、うずら隠れ、家出老、女の文、牛太郎の系図、姫虫、十年待つ
どれも、いい話なのだけど
ちょうど病院で待ってる時に読んでいたのが「牛太郎の系図」
北条氏照の小姓をしていた男の話の中の秀吉の小田原攻めの始末として氏政、氏照が切腹をする
この場面の小姓と氏照と検使として遣わされた榊原康政の三人の場面、読み終えた時に両方の目から涙がツーッと流れてしまった
にべ屋の丁稚豆太の健気な気持ちに触れた牛太郎が長く自分が背負い込んでいたものの本当の意味に気付かされる、という話
豆太の健気さもとてもいい
村木嵐は、司馬遼太郎の最後の書生
まいまいつぶろ、阿茶、と江戸時代が得意な作家なのかな