グレース・オブ・モナコ 公妃の切り札 (Grace of Monaco)
監督:オリヴィエ・ダアン
出演:ニコール・キッドマン、ティム・ロス、フランク・ランジェラ、パーカー・ポージー、マイロ・ヴィンティミリア
デレク・ジャコビ、パス・ベガ、ジェラルディン・ソマーヴィル、 ロバート・リンゼイ、 ニコラス・ファレル
ロジャー・アシュトン=グリフィス、ジャンヌ・バリバール、イヴ・ジャック、オリヴィエ・ラブルダン
アンドレ・ペンヴルン、フィリップ・ダレンシー
<あらすじ>
”世紀の結婚式”から6年経った1962年。
グレース・ケリー(ニコール・キッドマン)は、いまだにモナコ宮殿のしきたりに馴染めずにいた。
社交の場で女性が政治に意見するのは「アメリカ流」だと皮肉られ、夫のレーニエ(ティム・ロス)からも公の場では美しいだけの人形でいることを望まれる。
失意の
グレースが
ヒッチコック(ロジャー・アシュトン=グリフィス)からのハリウッド復帰の誘い
に心を動かされたとき、
レーニエは過去最大の危機に直面する。フランスの
シャルル・ド・ゴール大統領(アンドレ・ペンヴルン)が
過酷な課税をモナコに強要、承諾しなければ
「モナコ
をフランス領にする」という声明を出したのだ。窮地の中
グレースは、自分にしかできない秘策を考え出す。外交儀礼の特訓を受けて、完璧な公妃の“役作り”
に励み、
ド・ゴールを含む各国の指導者を招いたパーティという“舞台”を用意。果たして
グレースが自ら書いた“脚本”のクライマックスとなる、運命を握る
スピーチとは・・・?
<キャッチコピー>
世界を動かした、一世一代の<大芝居>。
<マメ知識>
○
ニコール・キッドマンは
グレースを演じる上で、撮影5か月前から
グレースについての大量の映像や資料を読み込み、独特の振る舞いやなまり、話し方を習得すべく、リサーチを重ねて役づくりを行った様です。
○今作で使用された衣装に関しては、
クリスチャン・ディオールや、
グレースが愛したデザイナー、
マルク・ボアンなど名だたるデザイナーたちの協力が実現。
カルティエもモナコ公国の同意のもとに制作した、
レーニエ公が
グレースに贈った婚約指輪や3連ネックレス、ティアラなどの精巧なレプリカを提供しています。
<最後に>
グレース・ケリーと
レーニエ3世の実子である
アルベール2世、
カロリーヌ公女、
ステファニー公女の3人は、
「必要以上に美化され、史実に対して不正確」と言い、更に、
数多くの変更を要求したにもかかわらず無視されており、本作は伝記映画ではなく、完全なフィクションであるとして批判しているそうです。
アルベール2世は、特に父親である
レーニエ3世が
「指導者として一方的で、妻を束縛する男」として描写されている点に不満を感じ、
第67回カンヌ国際映画祭のオープニング上映への出席を拒否しました。
モナコ公室の反応について、主演の
ニコール・キッドマンは
「本作にファミリーを批判する意図はなく、完全な伝記映画とも違う」とコメントしています。
<感想など>
グレースは
凛とした美しさの中にも優しさと品格を感じさせるものがありますが、
ニコールが演じてそれを表現出来るのか?
そんな不安もありながらの試写会参加となりました。
結果としては ―
グレースでは無い、ニコールの為の作品となっている感じでした。
グレースの持っている雰囲気とは程遠い、
現在のアメリカ的なデキル女性的な雰囲気全開!!!美しさの質も、
グレースの其れとは異質な感じがします
(ニコールも十分過ぎる位に美しいですけどね)。
それを踏まえて、以下にツラツラと述べてみたいと思います。
◎ハリウッドから、モナコに嫁いだグレース。
○”世紀の結婚”として世界中から注目を浴び ―
ハリウッドのトップ女優から、公妃への華麗なる転身は、
20世紀のお伽話の様だと形容された訳ですが・・・。
その実は ―
王室故の不自由さ、よそ者扱いされる事や、夫、レーニエとのすれ違いによる孤独感を感じ、自分らしく生きる事を求め焦燥感に苛まれる日々。
政治的な場所では、発言を控える様に言われ、慈善活動にも様々な制約があり、
やりたい事も言いたい事も封じられている様な生活は辛過ぎる!
病んでしまわなかったのが不思議な位な悲惨さ?でも、そうならなかったのは、
グレースが確固たる自分を持っていたからに他ならないでしょう。
無理解な夫と、無神経な取り巻き。当初の
グレースの周囲は、意地悪ばかりな感じの描かれ方。でもね、チョット待てよ。
結婚から6年間も経っているのに ― 公用語のフランス語が満足に話せない
(憶える気がない?)。フランス流のマナーや王室の「しきたり」を憶えようとしないで、
アメリカ流を貫こうとするのは如何な物なのかなぁ~と思ってしまいます。
「郷にいては郷に従え」でしょう!!!
このあたりの描写は、ニコールの気位の高そうな感じが合っているけど、実際のグレースがそうだったのかは疑問が・・・。
◎そんな中、二つの出来事が勃発。
一つは
「グレースの女優復帰騒動(ヒッチコックから「マーニー」への出演を打診される)」。
もう一つは
「宗主国的なフランスが突き付けてきた課税問題(モナコは無税の国)」で、
課税をしなければモナコはフランス領に併合される憂き目に・・・。
○「女優復帰問題」は ―
身近にいるフランスとの内通者によってリークされ、騒動に発展
(グレースはモナコ国民の非難の的に・・・)。計画その物が頓挫してしいます。
自分らしさを表現出来る場所に再び立てるという高揚感と、急転直下の事態で味わう失望、そして絶望にも似た感覚の中で、グレースの拠り所になったのは ― 家族。
○時を同じくして起こった「課税問題」。
国の一大事の為に、何をすべきか?
降りかかる難題に頭を悩ませる国家元首であるレーニエの支えとなり、励ます事。そして、モナコ国民に希望を持たせる事。
親交があり、グレースの良き理解者であり、師でもあった
タッカー神父(フランク・ランジェラ)から
「人生最高の役を演じる為にモナコに来た筈だ、君にはそれが出来る」と言われ、国家存亡の危機に
完璧な公妃演じる一世一代の大芝居を打つ事を決心するのです。
全ては愛する夫、子ども、国、国民の為。
壁のあった(自ら作っていた)、
王室の「しきたり」、フランス語、フランス流のマナー、夫との関係を全て取り払い、腹をくくって公妃を演じる為の準備に取り掛かる様は ― 女優の役作り的な要素満載。
あれよあれよと、
モナコ公妃に相応しい雰囲気を醸し出すのです。
それまで決して相容れる事の無かった公妃としての生活を受け入れる事が出来る懐の深さこそ、グレースが今も尚、多くの人達から愛され続ける大女優である所以なのかも知れません。
女優であると言う武器を最大限に活かし、公妃の役を演じ抜こうとするグレースの姿は、
それまで描かれていた、姿とは全く異なり存在その物が輝いている様な印象を受けました。
そんなグレースに自身が感じている演じ時の自己陶酔感を存分に重ね合わせて演じ切ったニコールの女優魂にも拍手(強烈過ぎるナルシズムっす!!!)。
○各国の首脳を集めた舞踏会でのスピーチが大芝居のフィナーレ。
「モナコは今危機に瀕していますが ~ 侵攻されても抵抗することなくここにいます。
幸福や美を破壊する権利は誰にもありません ~
今夜ここに一堂に集まれたのも愛の力があったから ― 。
今夜は愛を賛美したい・・・。」
大きな全てを包み込む様な「愛」を賛美し、感情に訴えかける事で国の窮地を救うグレースの「愛」は、「母性」その物 (憎しみではなく、「愛」で地球上を包み込めば争い事は無くなるのでしょうね)。
強い意志と、「愛」の力を信じる事で、自分を取り戻困難を打開出来ると言うメッセージがダイレクトに伝わってくる作品です。
また、グレースは、大芝居で国の窮地を救い、家族との愛のある生活を取り戻しましたが、誰しも他人からのイメージによって自分を演じていると言う事実を改めて気づかされますよ。
グレース・ケリーの死の謎や、父との確執等には一切触れられてないので、
彼女を取り巻く事実の解明を期待すると大きな肩すかしを喰らうのでお気を付け下さい。
作品としては、純粋な伝記映画ではなく多くの史実とは異なる内容
(ヒッチコックはモナコに入国した記録は無く、赤十字パーティーにド・ゴールも参加してない等々)盛り込まれた物なので、
グレースの本来の姿が見えてくるかは疑問です。
先にも述べましたが、ニコールがこの台本を読み、グレースに自身を思いっ切り投影させた、「演じる事の素晴らしさ」を賛美した様な作品とも言えるかもしれません。
その結果、
グレース・ケリーを描いたと言うよりは、ニコール・キッドマンが全面に出た様な印象を受けます。それはそれとして、作品としては十分に楽しめます。
ニコールが最も目立っているのは当然ですが、夫の
レーニエを演じた
ティム・ロスは
上に立つ指導者として孤独や苦悩、弱さを繊細に表現して演じていました。でも、
グレースが主人公の為に当初は悪者扱いでその後は、グレースの支えが無ければダメダメ感が漂う弱さ全開・・・。こんな描き方ではクレームが出るのは当然ですね(笑)。
内通者を探すサスペンスタッチの展開等は、
ヒッチコック作品にグレイスが出演している様なイメージを狙った物って事も聞きましたが、
ヒッチコック作品の様な緊張感は当然望めませ~ん ― が、良いアクセントにはなっていると思いました。
ニコール・キッドマンのファンの貴方。
苦難を乗り越え、力強く立ち向かう強い女性に憧れる貴方。
「愛」の力、「母性」を信じる貴方。
自分で自分を演じていると自覚のある貴方。
煌びやかな衣装や装飾品に癒されたい貴方。
お勧めです。
<最後に>
「愛」をテーマにした
グレースのスピーチは ―
盛り上げる為に、友人の
マリア・カラス(パス・ベガ )が歌った
プッチーニの
「私のおとうさん」との相乗効果もあって、感動的でした。
パス・ベガが演じるマリア・カラスもGOOD☆
ちなみに、
「私のおとうさん」の歌詞は以下の通りです。
<訳詞>
私のいとしいお父さま あの方がとても好きなの
これからポルタロッサへ指輪を買いに行くわ
ええ 行きますとも
もしお許しが出ないなら ポンテヴェッキオ橋へ行って
アルノ河へ身を投げます
思い焦がれ苦しんでいるの
ああ 神様 死にたいわ
どうかお願い お父さま
10月18日(土)公開です。