開脚が分かった気になってはダメ!


 “ストレッチ”と云うと殆どの人が開脚をイメージすると思いますが、私の言う“ストレッチ”はその様な限定された物ではありません。

 その為に“ストレッチ”の話に関して他の指導者の方々とは違う言語を話しているのかと思う程に話が噛み合わないんです。


 バレエの世界で『身体が柔らかい』と多くの人達が考えているのは180度開脚が出来る事なのでしょうが、実は180度開脚が出来てもそれ以外の部分が非常に固いダンサーはとても多いですし、逆に180度までの開脚は出来なくても総体的には身体が柔らかいと云うダンサーも居ます。


 それに180度開脚と一言で言っても、その中身は千差万別です。 横開脚に前後開脚、脚をパラレル、内外旋と色々な状態を組み合わせて行います。 しかしこれらの区別が付いていないと曖昧なポジションとなってしまい良くありません。

 特に前後開脚は前後ではなく斜め方向への開脚に成り勝ちで有名なプロダンサーでさえ正しく理解して前後開脚をしている人は少数です。


 しかも開脚はストレッチの極一部に過ぎません。

 ですから開脚が出来るだけでストレッチを分かった気にならずに自分の身体を隅々まで研究する気持ちを持ち続けてストレッチをしなければなりません。





上半身もストレッチする必要がある!


 大人バレエは言わずもがなプロダンサーでさえも上半身の柔軟性が著しく低い人が多くて、その影響が下半身にも及んでいる為に余計な力を使ってしまう事がよくあります。


 よく『つま先を伸ばすには全身を引き伸ばさなければならない!』と言われますが下半身のストレッチしかしないで全身を十分に引き伸ばす事が果たして可能なのでしょうか?

 下半身の筋肉の柔軟性が高くても、それに続く上半身の筋肉の柔軟性が低くては上半身が力んでしまうので脚にも力みが伝播してしまいます。 これでは脚が縮み、その結果つま先も伸ばせません。

 それに全身を一体的に引き伸ばして使えないのであれば総合的には『身体が固い』と言って良いでしょう。

 ですから身体を総合的に柔らかくしたかったら、上半身のストレッチも万遍なく行わなければなりません。
 特に広背筋、前鋸筋と云った普段あまりストレッチする事を意識した事の無い部分は念入りにストレッチを試みる事でそれらの筋肉を感じて使う為の訓練の入口ともなります。
 また下半身との一体的なストレッチはそのままレッスンの延長になり得る物なので上半身のストレッチは下半身のストレッチに先んじて行うのがより良いでしょう。

 広背筋周りのストレッチは“アラベスク・アティテュード”や後ろ“カンブレ”に関係していて、前鋸筋周りのストレッチは横の“カンブレ”や“デブロッペ・グランバットマン”等の動きに関係しています。
 勿論、上半身の筋肉は腕の動き、身体の引き上げにも関わる大切な部分なのに殆どの指導者が、その重要性に気付いて居ない事は非常に憂慮すべき事ですね。



 身体を左右上下均等に引き伸ばして使える様になる為に上半身、下半身ともに万遍なくストレッチする様にしましょうね。
 そして例えバレエ指導者であってもストレッチの指導が出来るレベルまで到達していない人は、これから学び始めて下さい。
 ストレッチ指導とは自己流を教える事では無く、素人が無理なく行える様に誘導して上げられる事を言うので気を付けましょうね。
 





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