グランバットマンは何の為にやる?


 “グランバットマン”を練習すると殆どのダンサーが脚を高く上げる事にしか興味が無く、腰を落としたり、軸脚が緩んだり、身体を縮めてまで脚を上げようとしています。 『脚が上がれば上がる程凄い!』って思っているみたいで私からしたら少し精神年齢が幼いと感じます。

 これはSNSに“グランバットマン”の動画を上げている外国人ダンサーでも同様です。




 ではここで考えてみましょうか、“グランバットマン”って何の為に練習しているのでしょうか?



 ヴァリアシオン等の振付の中には“グランバットマン”がそのまま単体で入っている事って殆ど無いんですよね。 でもバーレッスンでは何故か必ず練習しますよね。



 では振付の中で“グランバットマン”をいつやっているのかと言うと、例えば“グランジェッテ”や“ジェッテアントゥールラッセ”等をやる時の振り上げ脚の動きがそうなんです。

 他にも色々とありますが、その全てで脚を振り上げる時には身体も引き上げているのです。

 身体を落としながら“グランバットマン”と云う振り付けをクラシックヴァリアシオンの中では見る事は皆無です。



 つまり“グランバットマン”をする時は脚と同時に身体を上に引き上げるのです。



 多くのダンサーが脚を上げる為に身体の引き上げを犠牲にしていますが、これを“ジェッテアントゥールラッセ”の時に思い切り行ってしまうと跳び上がるどころか転んで尻もちをつく事は確実です。


 脚が上がる瞬間に腰が落ちるのですから考えれば当たり前ですよね。


 でもその当たり前に気付かずに“グランバットマン”を練習しているダンサーがとても多く、そんな“グランバットマン”を練習しても意味が無い事を知って欲しいのです。





出来ないのは頭を使わないから!


 “グランバットマン”の様に脚を素早く大きく動かす時は、反動が大きく軸がズレ易くなります。

 特に身体の柔らかいダンサー等は、軽々と頭より高く脚を上げますが、軸脚を見ると反動に負けて骨盤ごと軸脚を動かしていたりします。
 こうなれば連鎖的に体幹も崩れますがバランスは崩さない為に体幹の崩れ等には気付かないのです。 しかし、この様なやり方だと力の使い方や動けるテンポが限定されて、強い力を必要とするテクニックやアレグロ等は不得意となってしまいます。

 『身体の柔らかいダンサーはテクニックが弱い!』と言われてしまうのも、こう云う事に起因しているのです。 実際には身体が柔らかいからテクニックが弱い訳ではなく、体幹を引き伸ばしながら脚を動かす全身の筋力が訓練不足の為に弱いのでテクニックが弱くなってしまうだけなのです。

 つまり身体が柔らかいダンサーでも、もっと頭を使って訓練すればテクニック的に弱くなる事等有り得ないのです。 逆に言えばテクニックの弱いダンサーは頭が悪いと言っても良いでしょう。





脚の高さは体幹の強さで決まる!


 基礎訓練にしろテクニック練習にしろ全身の筋肉が緩まずに手足を自由に動かす事が肝要で、筋肉を縮めて固めると体の動きの反動が他の部分にも波及するので、身体の引き伸ばし方と云うのが体幹を強く保持する為のキーポイントとなります。


 そして脚を上げる高さというのは体幹の引き上げの強さとのバランスの上で決まります。

 脚の高さに応じて体幹を引き上げる力を強くして行き、これ以上脚を上げると体幹が崩れるギリギリの所が脚を上げられる限界の高さになります。

 バーレッスンで練習するパはそれぞれ何らかのテクニックの基本動作と繋がっています。 ですからよく考えて動かなければ、動きに変な癖が付いて、それがテクニックにも影響しますので気を付けて練習しましょう。