エクスプレッションとは?
顔と腕の動かし方、呼吸、身体の向き等、踊る時に気にしなければならない事は沢山あります。 しかし、やり過ぎてしまうと踊りでは最も大切な「エクスプレッション」が失われる事になります。
身体条件が良く基礎も出来てテクニックにも秀でているダンサーでも「エクスプレッション」に欠けると魅力、存在感共にエクスプレッションのある下手なダンサーに劣る事もあるのです。
エクスプレッションの無い踊りは魅力ゼロ!
何かを踊るのに表現無しの踊りはあり得ません。 もし無表情で踊れと指示されても、そこには振付家の意図があり、無表情で表現したい物があるからなのですから、ダンサーは顔は無表情のままでもその他の部分ではエクスプレッションを出す事が要求されます。
よく「笑顔で踊って!」と注意される事があるかと思いますが、あれもエクスプレッションを見せて欲しいが為の注意なのです。 ただ笑えばエクスプレッションが出るかと云うとそんな事はありませんが、エクスプレッションに欠ける踊り手に少しでも表現させる為の苦肉の策と言えます。
鏡ばかり見て踊っているダンサーは自分がどう見えているかばかりに意識が偏り「自分が表現したい物は何なのか?」と云う事に意識が行かずにエクスプレッションに欠ける踊りをし勝ちになります。 これはダンサーとしては致命的と言うべき欠陥で、舞台上でこれ程つまらない踊りは無いと云う位見る価値の無い物になってしまいます。 ですからスタジオには必ず鏡があるにも関わらず多く指導者が「鏡を見て踊るな!」と注意をするのです。
考え、解釈して、表現する!
踊りの上手下手に関係なくダンサーの踊りに目が釘付けになる事がありませんか?
「基礎的には粗さが目立っても何か惹かれる物を感じて好きになる、理由なんて無い、ただ何となく好き!」
こう云うのはそのダンサーのエクスプレッションが素晴らしくその世界観に引き込まれてしまったからかも知れません。 「情熱的な踊り」と表現しても良いかも知れませんね。 どんなに完璧な踊りでもエクスプレッションに欠けると急に魅力が失せて行きます。
しかし無闇矢鱈に表現をすれば良い訳ではありません。 余りにも自分本位な表現は観客から押し付けがましく感じられて嫌われてしまいます。 そう云うのはエクスプレッションではなくただの目立ちたがりで観客は辟易してしまいます。
エクスプレッションを身に付ける為には的確な指導を受ける事は勿論ですが、結局は自分で何を表現したいのかを考えて、それが観客に伝わる様に練習するしかありません。 でも観客からどう見えるかは自身では分からない為に指導してくれる者が必要です。 だからバレエ団で踊っていると云うだけで「もうプロだから指導の必要はない」と考えては駄目なのです。 ダンサーの事をより良くしたいと思っている指導者程厳しい注意をしますが、それを否定的に捉えて反抗するのでは伸び代が消されてしまいますから。