視線に入らない側こそ意識しなければ!


 ダンサーは沢山の事に気を付けて踊っていると思いますが、殆どのダンサーが気を付けていると思っている事は、眼の前の事だけで見えない部分には気を配れていない場合がとても多いのが問題です。


 どう云う事かと言うと、“カンブレ”する等の上半身を動かす時に下半身の意識が薄れてコントロールが正しく出来ていないとか「“バットマンタンデュ”をする!」と考えた時に動脚の方に意識の殆どを持って行かれて軸脚への意識が希薄になり、その結果、軸脚側が緩んでも気が付かない状態になってしまう等です。
 殆ど場所移動の起きないバーレッスンでもそうなのですからセンターで移動を伴う時は尚更です。 例えば右脚から左脚へと重心移動をする時なども移動先の左脚は意識しても元々重心のあった右脚を確りと意識するダンサーは殆ど居ません。 脚を上げる際でも軸脚や体幹を強く意識するダンサーがどれだけ居るのでしょうか?
 他にも貴方は“アラベスク”の横の腕を意識していますか? 眼の前の腕の事以外に意識が向いていないのでは無いですか?

 殆どの人が目に見える前側等の片側だけに意識の殆どを持って行かれて直接目に入らない後ろ側等の反対側の意識が大きく欠落した状態で動いてしまいます。
 しかし片側だけに意識が偏れば身体全体に歪みが出る事は必定となります。




誤解や勘違いを正す!


 『基礎が出来ているとは左右が対称にコントロール出来る事』と以前書きましたが、これには上下や前後の動きが対称になるといった事も全て含まれるのです。

 沢山の思い込みや誤解で正しい事が分からなくなっている場合がとても多いので例え指導者であっても常に学び続ける必要があります。


 例えば“アラベスク”では前の腕も横の腕も基本的に同じ高さで腕を張りますが、多くのダンサーは「前を上げて横は下げる」と思い込んでいます。 確かに前の腕が上がり横の腕が下がって見える事はありますが、それは体幹の傾きによってその様に見えるのを錯覚して居るだけで現実には同じ高さのままなのです。 そこを勘違いしていると横の腕の意識が薄れて“アラベスク”のコントロールも正しく出来なくなってしまいます。

 頭の傾きも身体を傾けた結果として頭が傾いた様に見えているだけで実際に頭を傾ける事など皆無なのですがプロダンサーでさえ「頭を傾けるのは感情表現だと」勘違いしている人が多いのです。

 頭を単体で傾けるのは前後左右の均衡が崩れ、そこから体幹の崩れに繋がるのでNGで、基本的に左右の肩の中間地点に真っ直ぐに引き上がった状態で居なければならないのです。



 生徒が見本となるダンサーや指導者の動きを見た目で真似して学ぶ事が日本では標準的な学び方ですが、その学び方が勘違いを生み、正しい方法論とは再反対の方向に行ってしまう主原因となっています。

 バレエを学ぶ者全てが間違った方向に努力しない様に先ずはプロダンサーと指導者が誤りを正して行く事が必要なのでしょうね。