私はバレエ団や海外から来るプロダンサーへの指導、指導者への指導、大人バレエの初心者やベテラン、プロを目指したいジュニアや小さい子供バレエ等、全てのレベルのダンサーを偏りなく指導して来ましたが、全てのクラスで基礎を重視したレッスンを行っています。
「基礎クラス」と聞くと殆どの人が「初心者向けのクラス」だと思うかも知れませんが「基礎クラス」にもレベルがあるのです。
始めてバレエを習う人向けの基礎クラスとバレエ団で指導している基礎クラスでは中身が全然違います。 勿論、プロを目指すジュニア向けの基礎クラスと趣味で習う大人バレエの基礎クラスも難易度が全く変わります。
バレエ団で指導している基礎クラスは言うなれば完璧を目指す上級者向けの激ムズの基礎クラスなので、その内容は滅茶苦茶ハードです。 バレエの理論を理解して居なければ、完璧に踊りこなす事は不可能な位に難しいのです。 「単純で簡単な動きを最低限のプレパラシオンでやる!」たったこれだけの事なのですが、単純なだけに誤魔化しが効かずに正確な動きが要求されていて明晰な頭脳と高い集中力を必要とするのでダンサーを鍛える為に私は敢えてやらせています。 これにより優れたダンサーや指導者が育つ事を知っているから。
でも、その反面レベルの低いダンサーや考え方の浅いダンサー、指導者の場合は心が折れてドロップアウトしてしまう人も少なからずいます。 その位に基礎に厳密に従って動くとは難しいのです。
でも何故、同じ基礎クラスなのにプロと初心者では内容を変える必要があるのでしょうか?
それは基礎レッスンとはバレエのメソードに沿って踊る為の全身コントロールの方法を教えるレッスンの事を言うので、最初から完璧に基礎通りのレッスンさせるのは物凄く難しく、その為に初心者には厳密な基礎など初めから教えず、身体の一部だけに限定して教えるからです。
それにバレエ初心者に正しい基礎の話をしても全てを正確に理解出来る人は殆ど居ませんが、プロダンサーたる者であれば全てを理解していなければなりません。
初心者等は、つま先や膝などの局部的な動きに集中すると、その他の部分への意識を持てないので、あまり沢山の事をやらせずに集中すべき点を限定して上げる必要がありますが、プロでは身体の隅々まで確りとコントロール出来なければなりません。
この様にダンサーのレベルの違いから出来る量が異なるので、基礎クラスと言っても、生徒に与えられる課題の量の多寡により千差万別の物になってしまうのです。 そして、これは指導する側の基礎への理解度によっても指導内容が大きく変わる事は言うまでもありません。
基礎とは一生掛けて習得する物だと私は考えています。 こうしてブログを書く事も私にとっては学びですし、指導したい内容を文章に書き起こして知識の整理を行っています。 文章化の途中での気付きも沢山あります。 他の指導者の方々も生徒に伝えたい事が的確に文字化されていて教えの助けになると仰って下さる方が多いので励みにもなっています。
ですから海外の有名バレエ学校を卒業したとか、有名バレエ団に入団した位ではまだまだ基礎が出来ているとは言い難いのです。
バレエ団で優れた指導者の下で毎日真摯に基礎レッスンを積み上げてようやく基礎の一端が理解出来て来る物なのです。 「バレエ団のレッスンは只のウォームアップ!」と思っていては理解できる様にはならないので、本当に誇りを持って踊るなら真摯な姿勢での学びを忘れてはいけません。
そして趣味のバレエも、プロの様に基礎が身に付かないならと最初から諦めるのではなく、少しでも多くの事を意識して踊れる様に日々努力する姿勢があれば、基礎と云う物がどう云う物なのかが見えて来るでしょう。 その時に今まで見えていなかった新しい世界が見えて来る様になる事でしょう。
基礎レッスンとは超上級レベルなので踊りの上手いダンサーにこそ必要で一生研鑽し続けなければならないのです。