★相続税「高い」の思い込みは危険!大事なのは事実を知って次の行動をすること | ジャーナリスト 石川秀樹

ジャーナリスト 石川秀樹

ちょっと辛口、時どきホロリ……。理性と感情満載、世の常識をうのみにせず、これはと思えばズバッと持論で直球勝負。
3本のブログとFacebook、ツイッターを駆使して情報発信するジャーナリスト。
相続に強い行政書士、「ミーツ出版」社長としても活動中。

★相続税は”酷税”か──「相続税がかかる財産」から読み解く意外な結論⁉
http://yuigonsouzoku.net/three-numbers-and-inheritance-tax/




相続税の最高税率は55%
基礎控除額が今年から4割も削減された
と、大騒ぎになっていますが・・・・。



数字をうのみにして早合点しないでください。



結論を先に言うと、税率の見た目の高さと、実際にかかってくる税額とは差があるんです。
2億円、3億円の資産を持っている方でも、何か特別なことをしなくても、法に則って意識的に行動するだけで「相続税にひどい目に遭わされた」なんてことにはならなくて済むはずです。



理屈より、実際に数字をあてはめて解説しましょう。
「正味の遺産総額」が1億円の標準家庭(夫婦に子2人)で夫が亡くなった場合、相続税はいくらくらいかかると思いますか?



1億円「以下」だと税率は30%(700万円の控除)。
1円でも超えると税率40%(1700万円控除)となります。
ザックリ言って、さあ、いくらだとおもいますか?





答えは「314万円」です。
妻ゼロ円、子はそれぞれ157万円。
税率は30%なのに、実際にはその10分の1!
これはどうしたことでしょう。



それを説明するには「正味の遺産総額1億円」の意味を話さなければなりません。
まず、相続税はマイナスの財産(借金、未払金等)にはかかりません。
葬式費用、祭祀財産も対象外です。
一方、生命保険や死亡退職金は課税対象になります。
また、相続発生前3年間の生前贈与などは「遺産」に持ち戻されて相続税の対象になります。



さらに忘れてならないのは、相続税の特例が加味されるということ。
「小規模宅地の特例」では条件次第で土地が8割引きの計上で済みます。
生命保険や死亡退職金も相続財産にカウントされますが、一方、相続人1人当たり500万円が遺産額から引かれます。



このように考えると「正味の遺産総額1億円」は、実際の資産としては2億円くらいの価値があったとしても不思議ではありません。
で、2億円の相続税の税率は? 
そう、40%ですよね。
でも実際の税額は314万円。
約2億円(かもしれない)相続に対してかかる相続税の実効税率はわずか1.57%にすぎません!



こういう事実を目にしたら、私たちは自分の先入観をあらためなければなりません。
どうも相続税は「酷税」ではないようだ・・・・・、と。
(一度税金を払った財産に、また富の移動にすぎない相続で税金を取るのは「二重課税」だと私は思っていますが、相続税そのものはかなり考えてつくられていると感じます)



相続税に絡んでは3つの数字が出てきます。
「相続税がかかる財産」
「正味の遺産総額」
それに「課税遺産総額」。
この用語の意味を解説するつもりで書いていた記事が、ついつい長くなりました。



この記事を書くためにあらためていろいろ計算してみました。
その結果が、自分でも意外な点を再発見しました。
いま世の中にさまざまな「相続対策」の本が出回り、セミナーも行われています。
私も「対策」を叫ぶひとりなのですが、10億、100億の資産家ならいざ知らず、
3億円程度の財産なら、法に則ったオーソドックスな対策で「相続税」は乗り切れると思います。



ひどい目に遭っている人は、「相続税が高い」と思い込み、必要以上の”対策”をしたために自分の首を絞めているのです。
「相続税対策」より、私たちは想いを理解しあい絆を取り戻す「相続対策」にこそ力を入れるべきではないでしょうか。