★「相続させない」という遺言書、できれば封印を! | ジャーナリスト 石川秀樹

ジャーナリスト 石川秀樹

ちょっと辛口、時どきホロリ……。理性と感情満載、世の常識をうのみにせず、これはと思えばズバッと持論で直球勝負。
3本のブログとFacebook、ツイッターを駆使して情報発信するジャーナリスト。
相続に強い行政書士、「ミーツ出版」社長としても活動中。

★「相続させない」という遺言書 らくらく文例9 怒りにかられて書かないで!
http://yuigonsouzoku.net/not-inheritance/




「お前には1円もやりたくない」
遺言では、法定相続人に財産をあげる場合、「相続させる」と書くのが定番です。
その逆が「相続させない」。



冒頭に書いたような気分であるとき、「相続させない」と書きたくなるかもしれませんね。
この遺言は有効でしょうか。



このように書いたからと言って、直ちに無効になるわけではないようです。しかし、実質的には意味がない。
遺言者に、法定相続人の「もらう」権利を完全はく奪する権利はありません。
第2順位までの法定相続人には「遺留分」が保障されていますから。





どんなにコブシを振り上げて「お前にはやらないぞ」と息巻いてみても、遺留分減殺請求されれば、遺言書によって遺産を得た相続人は対応しなければなりません。



ただ、こんな風に解説を書いているとむなしくなりますね。
《人間てバカだなぁ》と思います。
確かに遺産は、わずかな金、ささいな価値ではありません。
それをやるかやらないか、もらいたいかもらいたくないか、大きな問題で双方ともが熱くなるのは分かります。



しかし日本の相続でこういうやりとりが生じるのは、主に親子の間でです。親なのに、特定の子にはやりたくない。それほど怒りに凝り固まってしまっている。
子なのに親への尊敬や愛情がない。ないのに欲だけはある。だから「権利だ」と強弁する。



その結果、時にはこういう遺言書も日の目を見てしまう。
「遺言」がかわいそうです。
民法はさまざまな権利と義務を法定化してますが、根本にあるのは人間のバランス感覚への期待です。
数え切れないほどのバリエーションがある中で、すべてに正邪をつけることなんてできっこない。だから当事者双方の知恵、交渉、妥協や譲歩、折り合いに期待しているんです。



それを一刀両断、感情もあらわに「相続させない」と書くなんて。怒りをあの世にまで引きずっていく気なんですか⁉
遺言を書くときは落ち着いてください。
よーく考えたうえで、自分の感情のみを満足させるのではなく、遺る人が前を向いて歩けるように細心の心配りで、最良の判断をしてください。



せっかくの遺言なんですから。