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「お前には1円もやりたくない」
遺言では、法定相続人に財産をあげる場合、「相続させる」と書くのが定番です。
その逆が「相続させない」。
冒頭に書いたような気分であるとき、「相続させない」と書きたくなるかもしれませんね。
この遺言は有効でしょうか。
このように書いたからと言って、直ちに無効になるわけではないようです。しかし、実質的には意味がない。
遺言者に、法定相続人の「もらう」権利を完全はく奪する権利はありません。
第2順位までの法定相続人には「遺留分」が保障されていますから。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20160619/18/hide7mail/1a/45/j/o0660035013676802276.jpg?caw=800)
どんなにコブシを振り上げて「お前にはやらないぞ」と息巻いてみても、遺留分減殺請求されれば、遺言書によって遺産を得た相続人は対応しなければなりません。
ただ、こんな風に解説を書いているとむなしくなりますね。
《人間てバカだなぁ》と思います。
確かに遺産は、わずかな金、ささいな価値ではありません。
それをやるかやらないか、もらいたいかもらいたくないか、大きな問題で双方ともが熱くなるのは分かります。
しかし日本の相続でこういうやりとりが生じるのは、主に親子の間でです。親なのに、特定の子にはやりたくない。それほど怒りに凝り固まってしまっている。
子なのに親への尊敬や愛情がない。ないのに欲だけはある。だから「権利だ」と強弁する。
その結果、時にはこういう遺言書も日の目を見てしまう。
「遺言」がかわいそうです。
民法はさまざまな権利と義務を法定化してますが、根本にあるのは人間のバランス感覚への期待です。
数え切れないほどのバリエーションがある中で、すべてに正邪をつけることなんてできっこない。だから当事者双方の知恵、交渉、妥協や譲歩、折り合いに期待しているんです。
それを一刀両断、感情もあらわに「相続させない」と書くなんて。怒りをあの世にまで引きずっていく気なんですか⁉
遺言を書くときは落ち着いてください。
よーく考えたうえで、自分の感情のみを満足させるのではなく、遺る人が前を向いて歩けるように細心の心配りで、最良の判断をしてください。
せっかくの遺言なんですから。