★実家のことで相続がもめるくらいなら「売ってしまう」という決断、正解だ! | ジャーナリスト 石川秀樹

ジャーナリスト 石川秀樹

ちょっと辛口、時どきホロリ……。理性と感情満載、世の常識をうのみにせず、これはと思えばズバッと持論で直球勝負。
3本のブログとFacebook、ツイッターを駆使して情報発信するジャーナリスト。
相続に強い行政書士、「ミーツ出版」社長としても活動中。

★「実家」を自ら売って”争族”回避!「断捨離」貫徹の母の決断をほめたい らくらく文例5> 
http://yuigonsouzoku.net/decision-of-mom/




相続人にとっての「実家」。
これが一番の”争族”の火種になる。
確かに。土地は割れても家は2つに割れませんからね。



家を相続する者にとって、敷地の半分は弟のもの、
あるいは持ち分の2分の1が弟にある、なんて気持ちが落ち着かない。弟にしても、半分「所有」したところで使い道、処分の道が閉ざされていれば、不満は募りそうだ(固定資産税は半分支払わなければならないしね)。



そこで「代償分割に」と要求すれば、お兄さんは目をむくだろう。住みたくもない”豪邸”のために「2000万も出すバカがどこにいるッ⁈」と言いたくなるだろう。



相続でやっかいなのは、相続人たちは「法定相続分」は自分の権利だと思っていることだ。でもこれは正しくない。
裁判が起こされたときに一応の基準にしよう、という目安にすぎない。






誰が考えても、遺産をいつもいつも正しく2分の1、3分の1に分けようなんて、不可能でしょう?
民法だって、そんなことは百も承知。
法が想定しているのは「あとは相続人たちが知恵を働かせてうまく分け合ってくださいよ」ということ。
だから遺産分割協議は「全員一致でなければならない」とされている。



この辺、陪審員制度とやや似ている。
評決は全員一致。
全員一致でなければならないからよく考えるし、「間違っていた」と思えば意見を変えることができる。
意地を張っていたら、永久に評決は定まらない。



しかし遺産分割協議は、この意地と欲との張り合いで、まとめることができず家庭裁判所に駆け込んでしまう例が引きも切らない。

こういう姿、相続させる側のお母さんは「見たくもない!」ですよ。元々が夫や私が粒粒辛苦してつくってきた財産じゃあないか、あんたたちが人の財産の分捕り合いで、なぜ醜い争いをする!
とまあ、本心では言いたいんじゃあないでしょうか。



そこでお母さんは決心したんですよ。
もめごとの種になる家なら売ってしまおう、と。
売ったお金でさっさと介護付き老人ホームに入ってしまった。
マンションではなく、なぜホームなのか?



1つは自分の身の安全のためですよ。
マンションで一人暮らしでは、もしものときに誰も異変に気付いてくれないかもしれない、と考えた。



もう1つ大きな理由があります。
財産なんて持ちたくないんですよ!
マンションだと、また資産になってしまう。
『バカ息子たちがまたもめる』と考えると、財産なんか遺すものか、とあらためて思ったのです。



このご婦人の決断に、私は拍手を送りたい。
そして「今の相続制度、なんだかなぁ」と思っていたもやもやが、すっきり晴れたような気がしたものです。