何も難しい話ではない。
なぜかわからないけれど「懐かしい」「好きだな」と感じる土地がある。
そういう地を大事にしたい、そして今より少しは豊かになってもらいたい、
いや、観光振興してお金をどんどん落としてということではない。
単純に「こんなにいい所なんだぜ」と人にいいたくなるような“豊かさ”のこと。
昨日、友達に誘ってもらい静岡市から山越えで川根本町に出かけた。
大井川に沿ってある川根路は好きな地域である。
桜咲く春、紅葉の晩秋が“シーズン”といわれるが、そういう季節に訪れたことがない。
行くのは決まって、何もないふつうの頃だ。
だが、その方がしっくり来る。
昨日は平日だから人も閑散。
SLの終点、千頭駅から山を少し下って道の駅「フォーレなかかわね茶銘館」を訪ねた。
道の下にあるので少しわかりにくい。
川根はしばらく前までは川根・中川根・本川根の3町があった。
いずれも茶の産地、しかも大井川の川霧に育てられた高級茶を産出する。
道の駅「茶銘館」の名物は無論、お茶である。
上がった座敷で、マイスターにお茶の入れ方を教わった。
和紙を貼ったきれいな缶に川根の新茶が5グラム。
一煎目、茶碗に熱い湯を入れ湯冷ましに移して適温まで冷ます。
手で持てるくらいなったら茶葉の入った急須に入れて、40秒待つ。
頃合いをみて茶碗に注ぐ。
ぬるくなったお茶はまろやかで、旨味(うまみ)が出て甘い。
茶葉は深緑だが、茶碗のお茶色は薄い。
薄いが味はしっかりある
二煎目、今度は湯冷まし、急須の過程をササッと済まして茶碗に。
色はほどよく乗り香り高く、味は本来の新茶らしいさわやかさだ。
三煎目、冷まさず直接急須に湯を注ぎ、お好みで時間を計って煮出す。
苦みが出てきて、また別の口当たりを味わえる。
欲深な僕は、四煎目も五煎目もいただいた。
味が落ちず、十分に楽しめる。
写真中央にあるのは「匂い袋」で、茶葉を乾かし地元の人が包んだ。
茶を喫した記念として持ち帰ってもらう趣向(缶は不可)。
ほのかに茶の香りがし、雑物のにおい消しにもなる。
約30分、お茶を堪能し豊かな時間を過ごし、300円であった。
茶銘館のメインの建物では、やはりこの地の名物であるオリジナル紅茶も味わえる。
影絵作家の藤城清治の作品展も催していた。
川根の伝統芸能「鹿ン舞(しかんまい)」をテーマにした絵もある。
幻想的でほのぼのとし、あたたかい。
広い敷地にゆったりとした館。
平日なので訪れる人は少ない。
軽食でも運営すれば人はドッと訪れそうだが、そういうガツガツした気風に染まりそうもない。
茶銘館に限らず、深川根路から感じるものは寡欲(かよく)である。
そのままであって欲しくもあるし、もっとビジネスの視点をとも思う。
ぜいたくな時間を味わったのにこんなことをいうのは、贔屓(ひいき)の引き倒しになるのであろうか。
純朴な町の個性と「活性化」という利を求める掛け声と。
『なるほど、町づくり、地域おこしは難しい』と思いながら、川沿いの道を下った。
………………………………………………………………………………………………
【筆者から】
このブログの元になっているのはFacebookへの書き込みです。
主にFacebookページ「ジャーナリスト 石川秀樹」に投稿しています。
ミーツ出版(株)という小さな出版社の社長をしています。61歳で行政書士の資格を取り開業しました。さらにこの数年は「ソーシャルメディアを愛する者」としてFacebookで熱く語り続けています。ブログは私の発言のごく一部です。ぜひFacebookページもご覧ください。コメントをいただけたら、こんなにうれしいことはありません。

