★金や接待もなく原子力規制庁を手玉、原発ムラの傲岸不遜はやまず | ジャーナリスト 石川秀樹

ジャーナリスト 石川秀樹

ちょっと辛口、時どきホロリ……。理性と感情満載、世の常識をうのみにせず、これはと思えばズバッと持論で直球勝負。
3本のブログとFacebook、ツイッターを駆使して情報発信するジャーナリスト。
相続に強い行政書士、「ミーツ出版」社長としても活動中。


なんとも回りくどい書き方だが、どうやらこういうことらしい。
原子力規制庁の職員が、敦賀原発の断層調査の重要文書を、業者に手渡していた。規制対象との癒着はいまだに断ち切れていない。なお、金銭授受と接待はなかったという。


1面トップで報じられた新聞記事の要約である。
中身は毎度おなじみ、耳にタコができるくらいの原子力ムラの不祥事で、つい「またか」で終わりがちだが、ここはきちんと問題の意味を押さえておいたほうがいいと思うのだ。


「問題の意味」とはこうだ。
こと「原発の問題」においては、規制当局と業者(電力側、今回は日本原電)がいまもって「なあなあ」「ずぶずぶ」の関係であり、あれほど福島原発事故で叩かれたにもかかわらず“カエルのツラに……”で、全く懲りていない、ということである。

hidekidos かく語り記


なぜそんなことがわかるのか。
わかりにくい新聞の文面を読み解くと、そうなる。


今回の文書は、敦賀原発(福井県)2号機の真下に走る断層が「活断層だ」と明言する報告書の原案だ。原電側は当然のように、それを否定している。だから報告書に何を書いてあるのかを事前に知り、各方面に工作を行いたい。


今までは、原子力安全・保安院といい原子力安全委といい原発ムラの一員で、業者側とお手盛りだった。
「規制」の用をなしていなかった。
だから保安院、安全委を解体して「原子力規制委」をつくり、その事務局として「原子力規制庁」を置いたわけだ。
規制すること、業者は必ず不正や怠慢を起こすからきちんとチェックしますよ、というのが規制庁の役割だ。
しかしやはり(事故で国民的非難を受け慌てふためいた政治側が)官僚に急ごしらえでつくらせた組織だ、癒着根性は少しも治っちゃあいない。


原子力規制庁の内規:
「規制対象の電力事業者と職員は1人で面談しない」「面談した際には、何を話したか内容を公開する」


今回は原子力規制庁の名雪哲夫審議官(54)が1人で原電常務らと計5回面会。最終的に報告書原案を手渡した。
原電側はこういっている。
「規制庁の内規は知っている。しかし、非があるとは思っていない」
これが原電最高幹部の1人、常務取締役の言い草である。規則など屁とも思っていない、というのがよくわかる。


もう1つの事実(新聞発表による):
名雪審議官は報告書原案を手渡した翌日、自ら申し出て実務から外された。金品の授受はなかったという。


新聞は、規制委の報道発表資料に基づいて書いている。
「金品の授受はなかったという」と伝聞調で書いているのは、規制庁自身も「伝聞」であるからだろう。
厳密に法に基づいて調べたのではなく、「金などもらってないだろうね」「それはありません」程度のやりとりであって、それ以上の根拠はなさそうだ。
原電常務は新聞取材に答えてこういっている。
「審議官と庁舎外で面会したことも、接待や金銭の供与も一切ない」


まったく、語るに落ちるとはこのことだ。
常務は内規違反を百も承知で「規制庁の庁舎内で」堂々と審議官に面談している。
しかも、金も贈らず接待もなく、これほどの重要文書を苦もなく手にしている。
“日常活動”のたまものとしか思えない。


原電常務の顔は、規制庁の職員なら多くの者が見知っていたろう。
5回も庁舎に現れ1職員と面談しているのに、誰も奇異なことと思わない。
上司に報告もしない。
考えられるのは、誰も奇異に思わないほどこの常務と規制庁の間に「関係ができていた」ということである。
こういう関係を、あなたならどうつくるだろうか。
特に金銭を費やさなくても喜んで、いや、後ろめたい気持ちはあったに違いない(さすがに)、でもそれを踏み越えて重要資料を流させるような関係を、どんなことをすればつくれるのだろうか。


この問題の本質は、そこにある。




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【筆者から】
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ミーツ出版(株)という小さな出版社の社長をしています。61歳で行政書士の資格を取り開業しました。さらにこの数年は「ソーシャルメディアを愛する者」としてFacebookで熱く語り続けています。ブログは私の発言のごく一部です。ぜひFacebookページもご覧ください。コメントをいただたら、こんなにうれしいことはありません。


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