園田隆二・女子柔道代表監督(39)が辞めないと聞いて、たいへん驚いた。
全日本柔道連盟の上村春樹会長は会見で「本人もたたいたり、蹴ったりしたことは認め、深く反省している。未熟さゆえのことと」といっている。
反省しているから許してやってほしい、上村さんらしい判断なのだろうが、『やはりこの人も普通の男か。何もわかっていない』と、失望を禁じ得なかった。
本来なら女子選手たちは、全柔連に駆け込むはずだ。
しかし、事態を知っているはずの連盟が少しも動こうとしないから、やむなくJOC(日本オリンピック委員会)に訴えた。
そこまで追い詰められていたのだ。
また死を見なければ分からないのだろうか。
体罰、パワーハラスメントというが、一体、誰に権利があるというのだろう。
暴力を振るい、言葉でもって執拗に追い詰める権利が。
僕は人を殴ったことはない。
だから、どんなに腹を立てても殴る蹴るはしたことがない。
以前は、意気地のないことだと思っていたが、今となっては自分の気弱さがありがたい。
どんな場合でも、人に暴力を振るわないというのは自分の誇りである。
上司だから、先生だから、指導者だから、先輩だから人を殴ってよいという法はない。
日本では「愛情があれば殴ってもよい」「愛のムチ」だというが、錯覚である。
殴ってもよい愛などありはしない。
あるのは「俺のいうことをきけ」という強制である。
無理強いである。
女子選手たちは、オリンピックが終わるまでじっと我慢をしていた。
『オリンピックが終われば、この苦から解放されるだろう』『もう脅されなくて済む』と思っていた。
なのに「監督続投」だった。
代表監督は単に技の指導だけでなく、引退後の選手の身の振り方にまで影響力をもつ。
誰も逆らいたくはないが、もうこれ以上耐えられない、あるいは現役を引退する選手は「後輩たちが同じ責め苦を味わわなくて済むように」と、訴え出た。
しかし、空しかった。
頼みのJOCは全柔連に遠慮して“指導性”を発揮しない。
挙句、全柔連は戒告ひとつで「監督続投」を決めてしまった。
選手たちは①体制刷新と、②問題が解決するまでの合宿凍結、それに③第三者による調査―を強く求めている。
まことにもっともないい分だと思う。
本当にみなさんに訴えたい。
許される暴力などない。殴られれば痛い。
肉体が痛いだけではない。
心が傷つけられるのだ。
それは「奮起」などということではない。
「怒り」だ。理不尽に対する強い反発だ。
まあ僕は、弱虫なくせに気だけは強いのでこんなことをいっているが、気立てのやさしい人、人を善意に受けとめようとする人、素直な人は心まで砕かれる。
あるいは「悪いのは自分」と、受け入れられない事実を自分を責めることで転嫁する。
暴力はそういう二重、三重の罪をもっていて、人を何回でも“殺す”のだ。
先ほど上村氏のことを「普通の男」といったのは、こういう意味だ。
パワハラ、セクハラをする者は、無神経である。
やってる本人は無神経男だと気づかない。
しかし女性は、心の底から嫌う。
それは男の僕たちがとても想像することができない種類の嫌悪感だ。
そんな男をかばう者、かばう組織、最悪は隠ぺいしようとする組織に対しては嫌悪と憎悪と絶望しか感じない。
傷ついた彼女たちになお、そこまでの重荷を背負わせるのだろうか。
上村よ、そこを分かれ、と僕はいいたいのだ。
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