★なかった昔には戻らない!「原発県民投票」に思う  | ジャーナリスト 石川秀樹

ジャーナリスト 石川秀樹

ちょっと辛口、時どきホロリ……。理性と感情満載、世の常識をうのみにせず、これはと思えばズバッと持論で直球勝負。
3本のブログとFacebook、ツイッターを駆使して情報発信するジャーナリスト。
相続に強い行政書士、「ミーツ出版」社長としても活動中。

下の写真を観ていただきたい。
6月8日に孫正義さんがfacebookで「クエスチョン」した数字である。
「再稼働すべきでない」1.8万票、正確には18,734票
Facebook世論では、9割強が「全面再稼働」に「ノー」と答えている!


hidekidos かく語り記


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リアル社会ではどうなのだろう。
きのう静岡市の繁華街「青葉通り」に自転車で出掛けた。
浜岡原発の再稼働を県民投票で決めようと言う署名活動が行われていたからだ。

『みんなで決めよう「原発」県民投票しずおか』
懸命な呼び掛けにもかかわらず、立ち止まる人はごくわずかだった。
パーセンテージで言えば「1%」に到底届かない関心度に見えた……。

住民投票条例を制定するには、有権者の50分の1の署名を必要とする。
静岡県だと6万2000人
脱原発の浸透度からいけば、「わけない数字」に思えるが、さに非ず。
けっこう高い壁だ。

僕は署名簿を持つ女性に近づき署名をし、母音を押した。
「届いていますか?」 「集計していない分があるので。それを数えれば……」
つまり、署名活動最終日の7月11日を4日後に控えたこの時点で、
「とっくに6万人は超えています」にはなっていない。

それでガッカリしたとか、肩透かしだった、と言いたいわけではない。
ほぼ予想通りで、『反応はこんなものだろう』と思っていた。

さらに、もっと難儀なことがある。
一定数をクリアしても、県議会の壁がある。
過半数の議員が賛成しなければ条例制定案は否決される。
静岡県民の再稼働に対する意思表示は、未来永劫することができない。

Facebook世論は、特殊な世界の話なのだろうか。
「SNSをやる高齢者は少ない」などと、サンプルの偏りを指摘するのは可能だ。
屁理屈はいくらでもつけられるが、民意とそれほど離れているとは思えない。

ネットとリアルの違いは何かと言えば「心理な抵抗感の差」であろう。
クエスチョンは記名投票ではあるが、1票を投じるのは気楽だ。
街頭署名は、促す方も大変だが、署名する側も負担感ゼロではない。

■   ■
僕は安易に「民意」と言う言葉を使ったが、
民意………、民意ってなんだろう???

原発って、嫌だよね、放射能出るし……
ない方がいいよね、危険だし……
何が危険?って、日本は地震が多いし、活断層だってあるし……
原発、津波でイチコロだったじゃん……
津波来なくても、震度5か6程度の地震で壊れちゃった……
「安全な原発」が、何度も何度も危機一髪だったし……
福島の事故だってなにが「想定外」だか……
お前らの無責任の方がよっぽども想定外だったんだよ!……
国会事故調が言ってたじゃん、「福島の事故は人災だった」って……
東電、ウソばっかだし、政府もウソ言い続けたし、ほんと、バカだし……
野田なんて、(大飯原発を再稼働させて)事故起きたらどう責任取れるわけ?……
取れっこないじゃん、そんなの! アホなんじゃあないの?……
東電、電気料値上げって、ふざけてるよね……
ボーナス出してるんでしょ、社員に……
(事故起こした当時の)幹部たち、クビになってネェーし……
辞めりゃあ辞めたで退職金5億って! ふざけてんじゃネェ!!……
総括原価方式だ!?政治家や学者にバラまくカネまで何で俺たちが払うんだ!!……

これが日本の民意なのだと思う。
すごい、まことに鋭い感知力だ!
学者や知識人や、エリートと言われる人ではなく、多くの人がこう感じている
「安全神話」に洗脳されたなどと言われてきたが、
今、そんなことを信じる人はただの1人もいない!

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原発が安全でなかったこと、
事故を起こした時、東電に当事者能力などなく
政府もあわてふためくだけ、
東電のウソを垂れ流し、住民に大量被ばくさせ、
その途中では情報を隠し、事故の規模をあえて過少に評価し、自己保身を図った、
挙句に、今日まで誰も責任を取らず
せめても良識ある国民の願い「福島を検証せよ」を怠り、
国民の節電意思を信じず、
何の根拠もない「私が責任を持つ」の首相の虚言で再稼働に突き進み、
産業界と官僚たちの思惑にのみ添い、
「決める政治」の体裁だけを整えようとしている首相。
こうしたご都合主義を、皮膚感覚で国民は嫌悪している。

理屈ではなく、感じちゃってるんだから、本物だ。
当初は一部の人たちだけだったかもしれない。
東電や政府のウソを指摘し続けた。
それがみんなに刷り込まれ、感じられるようになった。
だから「再稼働ノー」が9割。
政府のやり方に「違うだろう!」と言っているのだ。

国民のほぼ全員が、原発に絡むウソの数々を知っている。
それでも今のところ、99.999%の人は行動を起こさない。
原発県民投票に動く人、
毎週金曜日、首相官邸を囲む人、
そんな人たちは、ごくごく少ない。 「署名を」と言われれば「ちょっとねぇー」と困り顔をする人たち、
これが大半だ。
しかし、この人たちを見くびってもらっては困る。

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普通の国民は、署名もしない、官邸にも行かない。
休日ともなれば繁華街に出向き、笑いさんざめく。
原発事故の悲惨さを100日もすれば忘れ
何の罪もないのに放射能汚染のために住家を追われた人々の苦痛を思い出すこともない

しかし、それでも「民意」は確実に、以前とは違う
僕らは、あの日、見たのだ。
事故の悲惨さ、そして事故自体より、事故直後の対処がいかに無責任で幼稚であったかを。
(現場作業のことではない。指揮命令系統のトップたちの右往左往を言っている)
そしてあの日以降今日までの、
東電や政府・政治家たち、学者、メディア、官僚たちが何をし、何をやらなかったのかを。

国民はぜーんぶ知っている
知っているが、何もしない。
しないのは政府を信用しているからでも、臆病だからでもない。
人々の怒りには閾値(しきいち)がある。
一定の高さを越えなければなにも起きない、起こさない。
静かな時間だが、不気味さを宿した休止の刻(とき)だ。

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あの事故を、なかったことにはできない。
国民の誰一人、事故後の対応が十分であったとは信じていない。
国民のそういう深層底流に乗っている政府が、
なぜ不用意に原発を再稼働させたい衝動にかられたのか理解できない。
「決断する」自分の姿に酔っていたのか、哀れな道化師首相よ!!

県民投票条例への署名数が少なくても、
議会で県民投票条例案が否決されても、
「それ見たことか、静岡県民は無関心じゃないか」
「住民投票など、だれも望んでない」とは言わせない

魔法が解けた国民がどれほどのパワーを持っているか、誰もわからない。
しかし、これだけは言える。
国民の怒りを「沸点」まで高めてはいけない
国民をなめてはいけない。
好き勝手な火遊びはここまでだ。

なかった昔には戻らない、ゼ・ッ・タ・イに!!



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