企業ごときが就活学生のfacebookをのぞくな! これ以上若人を委縮させてどうする | ジャーナリスト 石川秀樹

ジャーナリスト 石川秀樹

ちょっと辛口、時どきホロリ……。理性と感情満載、世の常識をうのみにせず、これはと思えばズバッと持論で直球勝負。
3本のブログとFacebook、ツイッターを駆使して情報発信するジャーナリスト。
相続に強い行政書士、「ミーツ出版」社長としても活動中。


けさのNHKテレビで「就活のカギはフェイスブックの素顔」という特集をやっていた。
ちょっと複雑な感想を持った。


企業の採用担当者の間で、就活学生たちのfacebookをチェックしているという話。
「(学生の)素顔を見たい」ということらしい。


聞いてすぐに感じたのは、
『そんな身元調査みたいなことにfacebookを使うなよ』だった。
その後『それならそれで、逆にfacebookを利用するしかないか』とも思った。
つまり、調べられることが分かっているなら、
はじめから「計算」してfacebookを使うということ。


これは誰しも考えることで、NHKはちゃんと見抜いて取材していた。
とある就活セミナーでは
「(企業から)好印象を持たれるためのfacebook活用術」を教えているそうだ。

① プロフィール写真は正面から、笑顔で、
② 友達の数は50人以上は集めよう(行動力・社交性・人脈があると見られる)、
③ 週2回は前向きな投稿をしよう─。

うん、この対抗策は当然だ。
当然だけど、つまらない!
つまらないけど、やらざるを得ないのか……。


聞いていて、若い人がかわいそうになった。
同時に、『facebookも本意じゃなかろうに』とも思う。


私の場合、昭和47年(1972年)のことだけれど、7つ会社を受け全部落ちた。
8社目、静岡新聞に”拾って”もらい救われた。
七転びでそれはもう十分にめげたよ。
なにか侮辱されたようで、怒りのようなものがわいてきた。
一方、採用してくれた会社には当然、感謝の念をいだく。
それが頑張る原動力になった。


10年ほど前、立場変わり入社の面接に立ち会う側になって、
「50社受けて全滅した」などの話を聞き、本当に驚いた。
でも今は80社、100社だそうだ。
若者たちが世に出るために、こんな艱難辛苦を背負わされているとは……。
100社も落とされたら、まっとうな人なら自分を否定したくなるだろう。


だからまじめな学生は、真剣になって就活セミナーを受ける。
そして「対応策」を学ぶ。
すると採用担当者側は「最近はみんな訓練してくるので、見わけがつかない」と、
素顔を見ることができるとされるfacebookまでチェックに行くわけだ。
いかにもありそうなことなので、このこと自体は否定しない。
批判もしない。


でも、次の展開はを考えると「なんかなァー」と思う。
結果は容易に想像できるのだ。
そう、「成功する就活のためのfacebookセミナー」が大はやりになりそうだ。
「学生でfacebookをやっていないなんて論外だ!」
などと言われるようになるかもしれない。
ソーシャルメディアの普及は進む。
でも全然、うれしくない。


日本の会社は勘違いしている。
「facebookで学生の素顔が見られる」と思うのが、そもそも間違いだ。
今は(学生にとって)”不意打ち”だから素のままの個人がそこに出ているかもしれない。
しかし早晩セミナーばやりになって、
つまらない、毒にも薬にもならない投稿のオンパレードになるだろう。
(大人たちと同じように)


「思想傾向が見られてしまう」
「ふだんの行動までがチェックされる」
「交友範囲、人脈度も測られる」
などと言われれば、誰しも奔放ではいられなくなる。


この点、採用担当者は『よいツールを見つけた』くらいに思っているのだろうが、
『余計なことしてくれたぜ!』と私は怒りたくなってくる。
学生時代くらい、自由に泳がせてやればいいじゃあないか。


第一、企業よ、今の学生の対応力をなめちゃあいけない。
こんな時代だ。
(企業が採用活動の参考にfacebookをチェックしている、
なんてことまでがマスメディアで報道される時代だ―ということ)
今後は、よほど不用意でのんきな学生でない限り、
ソーシャルメディアを「素」で使う学生はいなくなる。


急な傾向だから今は「セミナー」だが、
しばらくすれば学生同士のネットワークの中で、
「facebookで自分を表現する法」
くらいは編み出され、すぐに広まるだろう。
よって、本来はのびのびとおおらかで可能性に満ち、
野心や、根拠のない自信にあふれている若者の素顔は隠されるばかりとなる。



企業にこれだけは言っておきたい。
facebookはネット上の仮の人格にすぎない。
そんなものをのぞいても人の本質はわからない、と。


「釈迦に説法」だって?
とんでもない!
採用担当者、及び幹部や役員ら採用に関係する者たちは、
決して人間観察、人間評価の達人ではない。
型にはめて、勘違い採用をすることの方がはるかに多い。
結果は「当たる八卦、外れるもなんとか」とあまり変わらない。


だから「クジで決めろ」と私は暴論を吐き続けてきた。
なまじ偏った目で選んで後悔するなら、ランダムに選んで会社で育てろ。
育てられるシステムをもて。
50社、100社落とされた人の中に、会社の宝となる原石は必ずいる。


学生諸君にはこう言いたい。
いくら企業に説いたところで、会社がクジ採用に踏み切ることはない。
人間を「元気の良さ」や「素直さ」「やる気」などで測る
即物的で近視眼な見方を変えたりはしないだろう。
だから、本来自由であるはずのfacebook上でも、
「きな臭い」物言いをしなくなる。
つまらない大人にならうことになる。


一方、これからは採用担当者を出し抜くために、
計算し抜いて「自分」を造る学生が出てくるかもしれない。
実験、ゲーム感覚と自覚しているならいいが、
あまりナメていると大人には見抜かれる。
首尾よく入り口を潜り抜けても、関門はいくつもある。


そんなわけだから、
小細工を弄する能力があるなら“本物”を身につけた方がいい。
就職のためでなく、自分のために。
底の浅い計算では人生という長丁場は戦えない。


そして最後に一言、なかなか内定をもらえない君に。
人にやさしい、は欠点じゃない。
ぐずぐず迷うのも悪くない(慎重だと言うことさ)。
行動力がなくたっていい(君は思慮深いのだろう)。


ただ、そんなに若いのに『俺は俺』『私は私』と言ってはいけない。
変わらないことを「正義」にしてはいけない。
独りよがりはただの幼稚であると自覚してほしい。
足りないところがあれば、やはりそれは直さなければ。


前の段落と矛盾しているって?
それはそうだ。
どんな自分でも、それは受け入れ自分を好きになろう。
しかし「問題あり」と感じているなら変わる努力をしよう。


そんな悪戦苦闘の中で、自分らしさは生まれてくる。
就活のために、無理に「世間」の規準に合わせても付け焼刃。
人と違うなら「芯のある違い」でなければ世の中に通用しない。


「Facebookのぞき見」が教えているのは企業の底の浅さだ。
だから多くの会社に蹴られても
『自分はだめな人間なんだ』と思い込むことはない。
委縮するくらいなら今からでも遅くない、
徹底的に相手(会社)を調べて、“好き力”をアップしよう。
こちらが真剣でなければ相手に通じるわけがないがないんだ。


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こんな視点、はじめてだ!
「なぜ?」を徹底追究
ジャーナリストの視点で電本3部作

※著者ページ
http://denhonkan.jp/meikan/detail.html?ab_id=7



※著書
『秀樹さんが教える まだまだ奥が深い Facebookの教科書』



 Vol1.
 Facebookの基本のキ」。
 「入門書」ですがかなり濃い内容です。
 いいね!の原理、エッジランクやクチコミ発生機能について  核心を伝えます。
 
 









 Vol.2
 Facebookのビジネス活用術。
 個人やお店、小さな会社は大企業や有名人を見習ってはい けません。
 バラマキマーケティングより友達を大切に。
 











 Vol.3
 Facebookのスーパースターたちを紹介しています。
 「誰か」って? 
 まあ、立ち読みでご確認ください。
 インフルエンサーの投稿術を詳しく伝えます。