原発世論調査に見る国民の「冷静」と「迷い」 | ジャーナリスト 石川秀樹

ジャーナリスト 石川秀樹

ちょっと辛口、時どきホロリ……。理性と感情満載、世の常識をうのみにせず、これはと思えばズバッと持論で直球勝負。
3本のブログとFacebook、ツイッターを駆使して情報発信するジャーナリスト。
相続に強い行政書士、「ミーツ出版」社長としても活動中。


「脱原発」支持8割 がれき78%「受け入れ
全国の地方紙と共同通信社が東日本大震災1年で行った全国世論調査結果だ。
国民は至極冷静に「原発ノー」を選択している。


最近は世論調査と言うと電話調査が一般的だが、この調査は「面接方式」を採用した。
大金をかけてもこの方式で調査した理由は、
国民の現時点での意識を正確に探りたい-に尽きる。


そこで先の記述をもう少し詳しく分析してみる。

hidekidos かく語り記-世論調査


「脱原発」という考え方に「賛成」44%、「どちらかと言えば賛成」36%
住んでいる自治体が放射性物質が基準値以下の震災がれきを受け入れるかについては
「受け入れられる」「どちらかといえば受け入れられる」が計78%に上った。
僕の周辺で聞いても「きずなをうたいながら、受け入れノーはないよね」と言う声が多い。
まずは冷静な対応と言えるだろう。
一方、現在の福島第1原発に対しては、
「不安」70%、「ある程度不安」23%で、
昨年末の政府の事故収束宣言にもかかわらず、
なお9割強の人が「安心できる状態になった」とは信じていないことが明確になった。


□■「原発再稼働」に国民の迷い

調査全体を見て、国民の順応力はきわめて高いと思った。
ただ、臨機応変で理性的な対応をする国民が多いということは
国民資質の水準の高さを示すものだが、
僕はそれゆえに少なからぬ危惧を抱いている。


『物分かりがよすぎると乗じられて、元の木阿弥になりゃせんか』
と思うのだ。


全体としては明確に「脱原発」に意識が向きながら、
「原発再稼働」については、「再稼働を認めない」は28%でしかない。
「再稼働を認める」は17%でさすがに低いが、
「電力受給に応じ必要な分だけ再稼働を認める」に54%が集中している!


これは、調査者の”意図せざる誘導尋問”とも言える選択肢だ。
再稼働を認める・認めないの選択肢は、
ふつうの人(信念を持った脱原発論者、あるいはその逆、以外の人)
にとっては二者択一となり回答しにくい。
そこで選択しやすい第3の肢をつくってしまう。
この肢は合理的に見えるため、たいがいそこに回答が集中する。


ただ、この手法が全面的にダメかと言うと、今回に限っては、
かえって「国民の迷い」が浮き彫りになってよかったとも言える。


「国民の迷い」とは、根強い「電力不安」だ。
この調査では「電力不足に対する不安」まで聞いている。
回答は「不安がある」40%、「ある程度不安がある」39%。


この点、震災直後に行った東電の「計画停電」の策略、
国民への脅しは見事なまでに利いている。
原発がなければ日本の電力需給は大変なことになる、
というキャンペーンが国民の心にしっかり根付かされてしまった。
こういう心情があることを前提に先の質問を読めば、
多くの人が『第3の選択肢』を選んだ事情がよく分かる。


□■「電力不足」というプロパガンダ

僕が『物分かりがよすぎると乗ぜられるぜ』
と意地の悪いことを書くのはそういうことだ。


今さら原発の安全性を説くバカはもはやいない。
「絶対安全」→「神話」などと言えば、さすがにアホと言われる昨今だ。
そこまでは国民のコンセンサスができた。


それに対する「抵抗勢力」(原発利権グループ)の最後の切り札は、
「電力不足になる」というもっともらしいプロパガンダだ。


プロパガンダだから、事実かどうかは分からない。
事実と言えば、原発54機中52機までも止まっている今も、
電力不足による停電は起きていない、ということ。
まれにみる寒い冬だった今年も、原発抜きで日本の電力は回った。
冬が終われば、早くも政府などは、お先棒を担ぐように
「この夏が、酷暑の夏であれば-」などと言い始めている。


こういう姑息なカラクリに誰もが気付くようになるまで、
つまり「電力需給の必要のためなら原発再稼働も仕方ないよね」
と言う人が極少になるまで、
原発廃絶のための声を上げ続けていかなければならない。



貴重な「全国世論調査」を読んで、僕はそんなことを思った。




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