◆◆ミーツ出版は「人の思い」を届ける出版社です | ジャーナリスト 石川秀樹

ジャーナリスト 石川秀樹

ちょっと辛口、時どきホロリ……。理性と感情満載、世の常識をうのみにせず、これはと思えばズバッと持論で直球勝負。
3本のブログとFacebook、ツイッターを駆使して情報発信するジャーナリスト。
相続に強い行政書士、「ミーツ出版」社長としても活動中。


出版社を創業したい。
出版不況と言われる今、東京でなく地方都市の静岡で。
「無茶だな」と、あきれる人もいる。
「老後の趣味、楽しみですね」と言う人もいる。
とんでもない、伊達や酔狂でこんなめんどくさい仕事を始めるものか。


■□■リスクをおかしてなぜ出版社か

元々、出版業は労多くしてもうけは少ない業態だ。
ごくたまに10万部、100万部のベストセラーが話題になるが、
極小出版社がそんなヤマを当てる確率は宝くじより低いだろう。
むしろリスクの方が高い。
当たるはずが外れ、返品の山。
自費出版の本を引き受け「安全」かと思えば、経費を払ってもらえない…。
心配はキリもなくあるが、リスクをおかしても出版社をやりたいのは、
本は「人の思いがこもった商品であるから」だ。


その「商品」を扱うということは、小なりといえども1個のメディアになることである。
メディア産業の一角となると、ハードルは高そうだ。


新聞社にいたから、新聞は巨大な装置産業であり、
宅配網という緻密な組織を擁してはじめて成り立つ産業であることを知っている。
テレビもまたしかり。
高価で繊細で緻密な機械と組織力、1人でできる仕事ではない。


対して「出版」は──
書きたい人がいて、それを本にしたい人がいれば、とりあえず契約は成立する。
印刷・製本会社、取次、書店…と考えれば、これはこれで多くの人手を要するが、
「1対1」が生きていること、
装置を自社で持つ必要がないことを考えれば、不可能ではない。


■□■個メディアの時代が到来

この2年半あまり、ツィッター、facebookで毎日思いを発信してきた。
はじめは何の手ごたえもないが、そのうちに1人、2人と反響が得られてくる。
続けていれば、正直であり続ければ、いつか自分の周りに人の輪ができてくる。
マスメディアでは感じられなかった、臨場感のある対話である。


自分がソーシャルメディアの世界に漬かってみて、
初めて「人には思いがある」ことに気がついた。
僕はいつでも巨大組織の中で発信者側にいた。
読者、視聴者はお客様だが「情報の受け手」だと思っていた。


とんでもない、読者、視聴者は人間であり、心をもった発信者だった。
個人として発信する者、つまり「個メディア」となって僕はその醍醐味を知った。
多くの人が、同じ思いを持っているのではないだろうか。


出版社を」という思いは、このころから膨らみ始めた。
みんな「本を書くことなんか不可能」だと思っている。
書いておきたい、のこしておきたい気持ち、メッセージ、研究したことども…。
そういう形にならない自分の思いはその人の生きていることの証し。
しかし多くの人は「無理だ」と思って、夢見ることさえしない


違うよ」と言ってあげたい。
自分の思いや成果を本にすることは、別に難しいことではない
メディアにいながら、人の思いに気づきもしなかった。
でも、まだ間に合う、『思い伝え人』になろうと決心した。



■□■新刊ラッシュにあえぐ出版業界

『自費出版のお手伝いをしよう』と心に決め、出版社のことを考えているうち、
今度は、自分自身が書きたくなった
facebookを毎日やっている中で、”本当に役に立つ本”を書きたくなった。
ネットのプロが書く本は、使い方は書いてあっても人の心理にはうとい。
意図したウソでなくても、的外れ。
掛け値なし、今のfacebookの状況について(利点も弱点も)伝えたくなった。


この辺から、全国を視野に入れた出版社にしたいと思うようになった。
難しいことは分かっている。
ただでさえ日本の出版界は出版点数が多いと言われている。
年間9万冊、1日に300冊弱の本が市場に投入される。
狭いフロアに類書が続々、書店が悲鳴を上げる理由はよくわかる。


なぜ出版点数が多いかと言えば、本が再販商品であること、
独特の委託販売制度などを説明しなければならないが、ここでは省く。
ともかく、雨後のタケノコのように出版物が刊行される中で、
地方のできたての出版社が本を出したところで、流通の流れに乗せることさえ難しい。
それでもなお、なぜ「全国」にこだわりをもつのか──


■□地方新聞社の本が幻冬舎の文庫本

静岡新聞の出版担当局長だった時、本は静岡県内に流通させるものと思っていた。
だから本のテーマも、「静岡県」という地域を意識したものに限られていた。
ところが、自費出版本の中に、時に良書が見つかる。
地域限定にするには惜しい、多くの人に読んでもらいたい本があった。


『四十九日』という本を手掛けた。
高校教師が、ハンググライターの事故で息子さんを失うという、事実に基づいた小説だ。
一読して、涙をこらえることができなかった。
子を亡くすことの悲しみ、立ち直る気さえおこらない、
救いのない状況からそれでも一条の光を見い出していく人間というもの…。
ペンの力、言葉の力を感じた作品だった。


自費出版の本だったが、藤枝の書店主さんが思いを受け止め、
店内で自分の言葉をポップにし、『四十九日』をキャンペーンしてくれた。
その本を、幻冬舎の営業担当の女性が目に止めた。
そして企画会議にかけ、「文庫本に」という話がまとまった。


静岡新聞社の発行物である。
藤枝の書店主さんを通じて、営業担当者さんがあいさつに来られた。
「ご無理なことは重々承知していますが……」
僕は一も二もなく快諾した


良書が全国に再デビューする、これは出版人冥利に尽きる。
同時に、忸怩(じくじ)たる思いもあった。
当初から静岡新聞の企画本とし、全国に販売すると言えば不可能ではなかったはず。
しかし前例もなく、編集人としての眼力も、勇気もなく、ただ
『質の高い自費出版本』と思っていただけだった。


■□『これは』という本を全国の読者に

振り返ってみれば、僕が手掛けた他の本でも、全国に通用する本があった。
富士宮焼きそば、B級グルメブームの仕掛け人、富士宮市の渡邉英彦さんの本もその一つ。
『ヤ・キ・ソ・バ・イ・ブ・ル』として静新新書の一角に加えた。
2007年、最初の僕の企画本だ。
当時、渡邉さんの名は全国区ではあったが、
「B-1グランプリ」の知名度はそれほどでもなかった。


そんな状況下でも、単行本にし全国配本できるのがプロの編集人と言うべきだ。
「静岡新聞社」ゆえに地域限定、自らもそう思い込んでいたのだった。


そういう思いがあるので、
「ミーツ出版」は全国で通用する出版社に、との思いがひときわ強い。
出版ラッシュは続く。
自転車操業して当座のコスト回収をしなければ、出版社自身が倒れてしまうからだ。
そういう業界は悲しい。


きれいごとでなく言えば、出版ラッシュのお陰で取次会社と口座も開けず、
新規参入が極めて難しくなっている出版業界は、ゆがんできている。
全部が全部、全国に流通させたいわけではない。
地域限定でよい本もあれば、手元においてこそ価値のある本もある。


きちんと目利きした上で、流通に乗せたいと思う。
人の思いを本という形にして届けること、
この大切な仕事を書店、取次、出版社の3者で共有することを願っている。



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